すっぽりと落ちていってしまいそうな、穴のように見える空が雲の合間に見えることがあって、それは大抵とても深く、殴りつけるような紺青だ。
そんな時に吹く風は大抵透明で、強さはそこそこ、冷ややかな大理石の香りを乗せて、私の頬を押してくる。山ひとつ潰して作った街にいるというのに。
ほんのりと混じる干し草の香りは、ショウリョウバッタの死骸の欠片。華やかな秋の予感があるならば、それはどこかで遠くで雨垂れに腐れたエビヅルの皮のにおい。
脅すように渦巻く雲は、しかし穴のふちで儚く溶けゆく。明るいのに暗すぎて、雲の層に高度な帯電を疑う。どこからも断絶された己には、断絶された光しか見えず。
光は実体だという確信だけが積み上がる。穴のような空から、際限なく落下してくる不可視のひかり。仲間外れは私だ。だから、誰とも仲間になれない者たちと寄り合っている。
今日は晴れ。孤独を積み上げて、空の穴まで到達せよ。断絶の連鎖を繋げた梯子を、今ここで組み上げている。ひたすらに、ひたすらに組み上げている。
作品データ
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作成日時 2021-08-01
コメント日時 2021-08-02
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 19時28分38秒現在
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断絶された己、断絶された光。光は実態だろうか。その確信は危ういきがする。仲間はずれな私。ひたすらに組み上げている姿勢は何か聖書的、どこかバベルの塔的だと思いました。
0雲や風のしたのある区域のアトモスフィアが感じられました。
0コメントありがとうございます。ひたすら組み上げているだけで、いつまでも登れなさそうな予感はします。いつか「いつまでやってるの?」と言われてしまうか、あるいは自覚しないといけないのだろうと思います。不毛さが少しでも伝わる形になっていたなら、良かったです。
0ありがとうございます。秋口の空の写真から得た着想を詩形にしようと頑張ってみました。まだまだ詩っぽくするのが精一杯ですが、アトモスフィアを出せただけ一歩前進できたような気もしています。
0大変参考になります! ありがとうございます。うっかり1行あたりの文字数を考慮せずに投稿してしまい、思ったより縦長になって連分けが悪目立ちしました。試しに手元で全部繋げてみても全く違和感ないので、改行なしが良かったかもしれませんね…。 行数をコントロールしたいときは、皆さん手打ちで改行されているんでしょうか。次は試してみます。 (誤字を発見してしまいました。 どこかで遠くで→どこか遠くで お読み替えください。)
0「ほんのりと混じる干し草の香りは、ショウリョウバッタの死骸の欠片。華やかな秋の予感があるならば、それはどこかで遠くで雨垂れに腐れたエビヅルの皮のにおい。」 「孤独を積み上げて、空の穴まで到達せよ。断絶の連鎖を繋げた梯子を、今ここで組み上げている。」 この言葉が好きだなと思いました。 具体的な情景が目に浮かぶようで、抽象的(象徴的?)な言葉で包まれているような。 そんな読み心地でした。
0孤独を積み上げて、空の穴まで到達せよ。 うまいなと思いました。
0ありがとうございます。視覚に訴えてくる詩が好きなので、よく具体的なモチーフを入れ込みたくなります。いざ作ってみると、若干周りの文から浮いている気もしますが…。 抽象と具体の合わせ技、これを持ち味とできるのか、それとも単に中途半端なだけなのか。引き続き試行錯誤していきたいです。
0恐縮です。もはやどうやってこの文を捻り出せたのか思い出せません……。最終連に関しては、まぁまぁな形に収められたんじゃないかと感じています。
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