朝目が覚めたらバカボンのパパになっていたのだ。
鏡を見ようとして愕然としたのだ。
背が低過ぎて洗面所によじ登らなくてはいけなかったのだ。
どこからどう見てもバカボンのパパなのだ。
なんなのだ。
なにをしたというのだなのだ。
一人暮らしなのでバカボンのパパになっても私はひとりなのだ。
仕方がないのでバカボンのパパのまま仕事に行くのだ。
バカボンのパパの私をみんなが指差して笑うのだ。
こっそりスマホで写真を撮る人もいるのだ。
毎回ピースするのだ。
マスク越しに微笑むのだ。
なんだか楽しくなってきたのだ。
上司はギョッとして「誰なのだ」と言ったのだ。
「私なのだ」と答えたのだ。
今日は「誰もいない五階の端っこにあるトイレを使うように」と言われたのだ。
当然のことなのだ。
バカボンのパパは男なのだ。
でも私は女なのだ。
ややこしいのだ。
会社に着いて気づいたことがあるのだ。
声もバカボンのパパになっているのだ。
ニャンちゅうのモノマネができそうなのだ。
うなぎ犬がいらなくなってしまうのだ。
昼休みにたこ焼きを食べるのだ。
美味しいのだ。
同期の小林さんは私に気づかないのだ。
「私なのだ!」挨拶したのだ。
変な顔してパスタを食べに行ってしまったのだ。
たこ焼きの方が美味しいのだ。
仕事中、私をみても笑わないのは変なのだ。
こんなの絶対面白いのだ。
オフィスにバカボンのパパがいるのだ。
でもみんな笑わないのだ。
笑ってはいけない、をやっているのだ。
タイキックを恐れているのだ。
私はそれが面白いのだ。
大きな声で笑っていたら、上司が「今日は早退するか?」と聞いてきたのだ。
私は喜んでサボったのだ。
緊急事態宣言で明日から在宅勤務なのだとメールが来たのだ。
電車に乗らなくていいのだ。
電車は早いけど遅いのだ。
ビールを飲むのだ。
バカボンのパパの私も悪くないのだ。
この頭身でもいいと思うのだ。
Twitterに自撮りをあげたら100万リツイートされたのだ。
テレビ局からDMが来たのだ。
取材をさせよというのだ。
「ギャラは100万円なのだ。」と言ったらブロックされたのだ。
ケチなのだ。
Facebookにあげたら親から電話がかかってきたのだ。
翌日、お母さんが東京に来たのだ。
泣きながら「病院に行く」というのだ。
お母さん、病気になってしまったのだ。
悲しいのだ。
ついていってあげたのだ。
診察されるのは私だったのだ。
聞いてないのだ。
お医者さんは言ったのだ。
「娘さんはバカボンのパパの見た目になったのだが、正常なのだ。」
その通りなのだ。
おかしいのは私じゃないのだ。
全部なのだ。
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 1827.0
お気に入り数: 0
投票数 : 4
ポイント数 : 12
作成日時 2021-07-19
コメント日時 2021-08-08
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 12 | 12 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0.5 | 0.5 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 1.5 | 1.5 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0.5 | 0.5 |
総合 | 6 | 6 |
閲覧指数:1827.0
2024/11/21 19時53分32秒現在
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最近、本を読んだ中で、 人の、正常と異常のあいだにはグレーゾーンがあって、 異常までいけば病気だが、グレーゾーンは本来病気ではない、 しかし現代ではグレーゾーンまでをも病気として 正常と分け隔てようとしている、 しかし、この正常と異常のあいだのグレーゾーンの価値観を表現するのが 詩であり、詩人であり、ひいては芸術である、 というようなことが書いてありました。 本作ではまさにその正常と異常のあいだの グレーゾーンを描写している詩だと思いました。
2冷静と情熱のあいだという映画のタイトルを思い出したのだ。 映画は見てないのだ。 そもそも自分の存在がグレーゾーンなのだ。 自己存在領域におけるノンバイナリーなのだ。 コメントありがとうなのだ。
1サイコーなのだ!
1ありがとうなのだ!
1味わってくれて嬉しいのだ! 「変身」! 言われてみればそんな作品もこの世にあったのだ! この作品は、朝起きて自分が「◯◯なのだ」とツイートしてるときに思いついたのだ! 自分は無意識にバカボンのパパになってることに気づいたのだ。 バカボンのパパはニーチェみたいだと思ったのだ。 この喋り方をすれば、誰もがみんな哲学者になれるのだ。 ぜひABさんも今日はこの喋り方をしてみるのだ。 躊躇うことはないのだ。 それでいいのだなのだ。
1まささん、ABさんのコメントに頷いたりもするのですが、とにかく笑っちゃったので悔しいですがあえてなにも考察は書かず「詩としてすごく面白かったです」とシンプルにコメントさせていただきます。降参という感じです。
2嬉しいのだ! バカボンのパパの大勝利なのだ。 ありがとうなのだ。
0こんばんは。 冒頭で大爆笑して止まらなくて、なかなか読み進められなくて。ひとしきり笑い、読み進めるうちに、ただ笑うだけでは読みが浅いのだ!と気付きました。良い作品をありがとうございます。
1人生は笑いあり、涙あり、なのだ!
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