何をしてきたかを問われると
手のひらを見つめ心苦しくなる
したくても出来なかったことは多い
田園がひろがり
稲の葉が茂る
緑ゆたかな農村に生まれた
まだ若かった父も母も
優しい祖母も慎み深い人であったが
なぜ慎み深く生きるべきかは
教えてくれなかった
生きていくうえで
節約は当たり前のことだった
祝日のデパートで売る玩具のような
欲しい物は容易に我慢できたが
街の子どもらからの
貧しい者への目が我慢できなかった
人にやさしいことは
お互いに幸せになるために重要なことだが
だれにでもやさしい人は
たいてい不幸と共にいる
半世紀以上も生きた今
追憶のなかに生きるようになり
信じていた行為の意味も疑った
なしたことは恥ばかりで
意欲を失うのは重ねた事の多さから
小雨の降る庭には
白いヤマボウシが咲いている
巡る季節のように輪廻があるとしても
また記憶が無くなるのは好ましいと知る
思い起こすのは若い純粋な友
幼かった弟
美しい夜の街角
新緑の茂る森林での日々
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1042.6
お気に入り数: 2
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作成日時 2021-07-09
コメント日時 2021-07-11
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 19時44分37秒現在
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なんと綺麗で素直な言葉で書かれた言葉なのだろうと感じ入りました。 ”だれにでもやさしい人は たいてい不幸と共にいる" 素晴らしい字列だと思います。 「思い起こすのは」以降に描写されている事物、情景も実感の無くしては語りえない美しい有り様だと感じます。
0すごい的外れかもしれないんですが、たとえば大好きなものが生活の中で当たり前になって、いつのまにかそれをものすごくぞんざいに扱うようになってしまったのを自覚したような時って、すごく疲れるし、外界のどんなものとももう関わりたくないと思ってしまう、人間ってそういう思い出が増えていくと、唯一眠っている時だけ心が安らぐんですよね。大げさに言うと、人ってこうして静かになって死んでいくのだと思うような。そういう人間は実際に儚く消えるかもしれませんが、おおざっぱに言って、そうやってどこかへ去ることだけを名前に持つ実体のない生き物がいて、ある特定のタイプの人間になにかを伝えようとしている、と思う時があるんです。
0なんだか悲しいと思いました。読んでいてチクチクしました。
0かずやさん、いすきさん、トラ丸さん、cold fishさん、 コメントありがとうございます。
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