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トースターの夢、おしまいが来ない朝
画鋲散らばる青空 その痛み その先端で 鳥たちが墜落する報道を 消えたテレビが無言で伝える 真っ暗な40インチ 無音の部屋 足の折れた四つの椅子 黎明の月が太陽を殺す スープの海に浮上する沈没船 スプーンもフォークも無く 箸はテーブルに突き刺さったまま 珈琲は透明に変換され 私はトースターをかじっている 鋼鉄の熱病 崩れゆく歯列 血は鉄の、鉄は血の味がした 三つの空席に塗られたバター 溶けゆく油脂 視えない四肢 室内を蹂躙する上履き 汚れた足跡は私だけのモノ 他人のスニーカーを蹴散らせば 靴ひもの白蛇が呻く 生地に刻まれた流星も爆ぜて 星条旗も燃やせと カーペットの水兵が喚くから 足下のマネキンも煩いから 引き裂いたコートとスカート 羞恥のない動物性 不埒な植物性が露になり 崩壊する偽装建築 皮膚のない猿の群れ 可視化する僕らの臓器 全てが暴かれた世界 裸の闇に乾杯を! パーティーを赦された 「罪」という名のアパート 1階2階3階4階 赤ワインしか出ない淫らな蛇口 305号室のみ白ワインだと 304号室の死者が嘯く 給水塔の中は動脈血 閉じない窓 破れた網戸 行軍する揚羽蝶の群れ 蛾と誤認した少女は 躊躇いもなくカッターナイフを翳す おもちゃの手錠 玩具の拳銃 少年は警官よりも 猟奇殺人鬼を夢見ている 残酷さと純粋さは似ていて 大人はそれを狂気とし 匿名で書きこむ知恵袋は正常だと マーガリンの偽りは正常だと After-hours 汚れた血と夢を落とす時 浴槽に浮かぶ薔薇の死体は綺麗 浴槽に浮かぶ石鹸は死蝋みたいだ 浴槽に投げ込むトースターの冷熱 爆ぜた情熱と這い回る電流 黒焦げの夢 濁音に染まる血 それらがやがて流れても 上履きに仕込まれた画鋲は抜けない
トースターの夢、おしまいが来ない朝 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1164.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-09-29
コメント日時 2017-10-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
意外に思うかもしれないが、私は、毎回、北村灰色さんの作品を楽しみにしている。で、毎回、私は何を待っているのか。それは北村灰色さんの終わりを待っている。いや、語弊がある。少し説明をしたい。北村灰色さんの終わりとは、一言でいうと、北村灰色さんの作品(今までの投稿作に限定する)に通底することとして「終われない世界観」を視るからだ。本作でいえばタイトルにある通り。「おしまいが来ない朝」。私は終われない世界観に北村灰色さんの、なんというか、苛立ちを感じる。投稿作品すべてに。それは北村灰色さんの魅力ではある。が、極私的な読者の欲でしかないのだけれども、終わった後に何があるのかを知りたい。感じたい。不発に終わる毎度の爆弾処理工事がいつの間にやら予定調和され安全に迎える日曜日がある日突然、消失してしまうみたいに、引鉄した後に残るであろう北村灰色さんの作品に魅了されたい気持ちである。
0上履きと画びょう・・・学校、そしてイジメ、そんな辛いシチュエーションを想像してしまいますが、そのシチュエーションそのものを吹き飛ばしていくような、破壊、崩壊・・・の鮮烈なイメージ。墜落、沈没船、と下降のイメージが続くのに、どこか祭りのような、吹き上げて行くエネルギーを感じるのは、文体のゆえでしょうか。〈汚れた足跡は私だけのモノ/他人のスニーカーを蹴散らせば/靴ひもの白蛇が呻く〉毅然として、猛々しく蹴散らしていくイメージ、〈鋼鉄の熱病〉、〈生地に刻まれた流星も爆ぜて〉〈爆ぜた情熱と這い回る電流〉といった、浮かされるような高揚感。内向していく感情を、むしろ外部に噴出させる、そんなエネルギーを感じました。
0三浦果実さま コメントありがとうございます。(終われない世界観)、ご指摘の通り、その感覚が自分の創作、特にネット詩に於いて表出していると思います。 終わった後に何が生まれるか、『あしたのジョー』の如く真っ白に燃え尽きるか、新たな表現が生まれるか、それは自分自身でもわかり得ない所ではあります。
0まりもさま コメントありがとうございます。 画鋲はイジメのモチーフではなく、青空に画鋲が舞い踊っていたら残酷で綺麗だなと想い、アタマに持ってきました。上履きは、上履きを想像すると画鋲を何故か連想したので結に入れるアイテムとして用いました。 確かに下降をイメージさせるフレーズや言葉が多いですが、この作品はシュールレアリスムというか、悪夢の中でもあくまで高揚したままというのが念頭にあったので、そうしたエネルギーを感じて頂けたのではと思います。
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