「弾けて落ちます」
男は言った。そして、悪戯っぽく笑った。
「コンクリートに水が入ったらほら、鉄筋でしょ、この建物。鉄筋が錆びて膨らむから、コンクリート押しのけよるんですわ。おんなじクラックが他にも数箇所ありましたね」とまた悪戯っぽく笑った。築二十年放置してきた我が職場は修繕箇所で溢れていた。私は体液が体を巡るのを想像していた。
「水は下に流れるもんですからね。天井に染み込んでカビになったりするんですよ」男の説明に生返事をしながら私はカビ、サビ、カビ、サビ、カビ、サビと唱える。壊れたレコードみたいに繰り返す。しかし、私は壊れたレコードを知らない。そういえば、老いは酸化からくるんだっけ。酸化するからだ。酸化する体。カビ、サビ。
「水は下に流れるもんですからね」
そうか地球は水で覆われているんだね
水分が体を駆け巡るから
脈々と繰り返すから
カビ、サビ、カビ、サビ
私は壊れたレコードを知らない
下に流れていったから
海を出発した水分が
錆びていく体を動かしている
「屋上の防水がよくないですね。これはもう設計、施行の時点であかんわ」
「はあ、そうですか」
「これ相当かかりますよ」
男は悪戯っぽく笑った
私は空調の結露でカビた天井を見てた
作品データ
コメント数 : 13
P V 数 : 2147.9
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 12
作成日時 2021-05-19
コメント日時 2021-06-13
#現代詩
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 12 | 12 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 3 |
総合 | 12 | 12 |
閲覧指数:2147.9
2024/11/21 21時05分09秒現在
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良いね。カビ、サビ、のざらざらした感じがして好き。
1ざらざら感! ありがとうございます。
0普通の文章で、詩ではないですね
1無念!
0いや、自分の場所から後半の地球への関心と転換する2バース目は詩的であり、詩ではなくはないと俺は思うね。
0恥ずかしながら自詩で恐縮ですが、カビサビカビサビで自分の詩のマッサンオッサンの詩を思い出しました。今でも分岐点は有るような気がします。この詩では何かあくどいリフォーム業者見たいな感じがしましたが、現実はそんなことはめったにないと思いつつ、いい味を出して居ると思いました。
1マッサンオッサンの詩がよみたくなりますね。 いい味ですか。よかったです! ありがとうございます。
0これ、良いですね。好きです。全体的な文章の運びが上手だと思いました。特に第一連から第二連の渡しなど。 ただ、カビ・サビという言葉の繰り返しに関してはあまりしっくりこなかったというか、なんというかタイトルにもなっているし作品の主体であろうはずなのに、作品の流れから外れたところにあるように思えて、せっかくの仕掛けがうまく効いていないような、、そこがひっかかりました。
ありがとうございます。仕掛けに関しては書いた本人が迷いながらだったので、やはりと言ったところ。
0短編の小説のようでした。 これで完結しているのが残念な気がします。 淡々とした物語の中に語り手の感情が何処にあるのかが面白く感じました。 上の空だった語り手は何を思っていたのでしょうか。 過去作の「つまらないと思います」もそうでしたが、入間さんの作品には乾いた他者の目を連想するものがあると私は思うのです。 そこが決して嫌な感じがしないのがいいと思いました。
0読んでくださりありがとうございます! そうですね、これ最初は小説になる予定だったので、しり切れとんぼ感があるんですよね。でも、面白く感じて貰えて嬉しいです。 過去作にも触れていただきありがとうございます。嫌な感じじゃなくてよかったです。 ありがとうございました!
1カビがある建物と業者とのやりとりを淡々と書かれていますが、その中に自分はカビには負けないぞという静かな感情もあるのかなと思いました。 小説を読んでいる感じで読みやすかったです。
1読んでくださりありがとうございます!カビには負けないぞ感ありましたか。それは面白い発見なのでよかったです。ありがとうございました
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