君の双眸を波立たせる
カイツブリの泣訴には手が負えない
君の手にも潜む虎
にはまだ知らない言語の恐怖
君の心臓で遁走曲を奏でる奴は
案外上手くはないらしい
幻滅というよくわからない二文字
に挟まれるトスカーナの夜明けと
音がない哄笑を持続するおじいさんの
ランプにはリルケを殺した薔薇が咲いていた
僕の瞳には手には爪がない
それらを追い立てる勢子はいない
そして心臓には明日ばかりを
見つめる詩人の後ろ姿が
そもそも「僕」ではなく「おれ」だったのが
君の頷き一つで変更されてしまった夜半
数えきれない水族館が眠らない夜半
彼女を超えて樹々へ海へ向かうときには
僕は全裸になり 世界中の少年少女の鼓膜を劈く
呻きを欲していた あちこちの聖歌隊が
吃驚してもう日曜日が終わってしまう
叫びを求めていた それで双肺に
一秒の風をはちきれんばかりに吸い込む
が それは力みすぎだよと詩人に言われて
また服を着る 砂もいじりまわしてなかったな
彼女の爪は夜明けを盗んできた色をしている
だから繋ぐと朝靄のルパンになれる
彼女の爪は一番下の宇宙を盗んできた色もしていた
だから撫でられると望遠鏡みたいに冷たいのやら
熱いのかわからないから望遠鏡は嫌いだわ
ロマンがカーテンの前にあるもの
とそんな風に吐き出してみせる
そもそも「おれ」から「僕」になったのは
君からの抱擁ただそれだけであった ただそれだけ
ここに眩暈がしてしまう僕は僕が好きだ
そうだ僕は僕が好きなのだ
仮面を二つ被ったみたいだ
花みたいな悪夢から君を守るために
僕は屋根裏から君の哀史を数え上げる
そんな夜半に囁かれる
接吻というよくわからない二文字
に挟まれる僕と彼女の唇
とでもいえばおれはどうなっちまうのだ
恋にも潜む虎
に詩人も呆れてしまう手元を照らすランプには
リルケを殺した薔薇が咲いていた
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 2284.4
お気に入り数: 0
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作成日時 2021-05-02
コメント日時 2021-06-24
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
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2024/11/21 20時31分40秒現在
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ところどころ、はっとする表現が見られました。
0はじめまして。 はっとしましたか。 嬉しい限りです。
0リルケのエピソードが印象的ですね。 >ここに眩暈がしてしまう僕は僕が好きだ >そうだ僕は僕が好きなのだ こんなところも印象的でした。しかしリルケが薔薇で死んだと言うのは白血病だっただけに納得がいくのですが、真の原因は絶対にほかにあったと推測できると思うのです。
0はじめまして。 印象的な箇所を挙げてくださってありがとうございます。 そうですよね。謎ですよね。リルケ の死因については詳しくないので、あんまり扱わない方が良かったかもしれません。
0良いです。
0コメントありがとうございます。 それぐらい短い方が嬉しいです。 皮肉ではなく。
0言葉それ自体から生成される、ディープな世界、堪能しました。
0コメントまたまたありがとうございます。 堪能していただいて幸いです。
0作品を拝見させて頂きました。 そもそも「僕」ではなく「おれ」だったのが 君の頷き一つで変更されてしまった夜半 数えきれない水族館が眠らない夜半 特にこの部分が心に響きました。 おれではなく、彼女によって、僕というようになる。 本当に恋をしている感じが伝わりました。 良い作品をありがとうございました。
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