提灯の灯りが
茫洋とした心持ちを映し出す
手に下げた焼酎は父のためだし
買ってきたサイダーも俺は飲むつもりはない
財布にお金は入っているが
特に使い道はないし使うつもりも/ない
つまらないこと楽しいこと
その両極の価値観が
大して変わらないと知った今となっては
苦みも甘みも大差ない
老婦になった母者を見て
当たり前の日常が
当たり前でなくなったと気付く頃
冥土への一本道が
目の前に開けてくる
石畳みの坂道を歩いて
ビニール袋をぶらぶらとさせながら
見上げた夜空には
月が寂寥と滲んでいる
スマホを開くとYouTubeのコメ欄で
どこぞの誰かが
俺は馬鹿だから何も分からないけれど
なんて悲しいこと言ってやがる
スマホと提灯
そして石畳みの真上にはぽっかりお月様
ミスマッチな情景なのに
何も不自然はない帰り道
あんた余力が残っちゃいないかい
楽しいことの一つや二つも
見つけられやしないかい
ちょっとばかし気になるが
まあいいや 所詮あんたと俺は他人だ
あんたの好きにすればいい
あんたの思う通り
好きに生きればいい
ほうらほうら落とす首はないかと
死神が辺りをうろついて
俺は存分に遊んで興じて
ほどほど冒険もして
サイダーなんて味気なくなるくらい
刺激も存分に味わったから
冥土への一本道が見えても
別に構わない
ほうらほうら死ぬのが待ち遠しい子はいねがと
死神が背後に忍びより
鼻歌まじりで俺は手招きして
わらべ歌のように胸に想うは
どうぞどうぞと
死神通りゃんせ
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 1928.6
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 2
作成日時 2021-04-24
コメント日時 2021-04-30
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1928.6
2024/11/21 20時35分55秒現在
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個人的にステレオさんと知り合いなだけにやっぱ作品に対してはシビアに私なんかはみていて、それは作品を読んでその作中のどこがどうだとかという技巧の部分的なものではなかったりする。今作は今までとは違う飛躍を一読して感じた。それは、ここまで作中話者が持っているであろう他者との距離感を書いていらっしゃるのは今までなかったとおもう。もう少し平たく言う。「こんな風に他人に対してニヒリスティックにみてるの?」と言われそうな語り、悪意として捉えられそうな語りを排していたはずだと思うんです。それが今作では「あんたら好きにすればいいよ」的な他人への見放しが連発されている。(いうまでもなく他人への愛情のメタである)私はこの作品を好ましく思った。 なぜからば、以前にお見受けしたステレオさんが残されたコメント「地獄でのたれ死ねばいい」という覚醒した情緒があるから。それは悪意として受け取られてもいいよという潔さ、ホントのガチな言葉だ。そういう純度100%、社会性とか人間性とかをぶん投げてしまった感情的なところにしか詩などあるわけがないと、バカみたいに私は信じている。 以前から触れていることではあるけれどもステレオさんは作家としてのポテンシャルが並以上に高くあって(なんか評論家みたいで失礼)、それは読む側を相当に意識して書かれていて、それがある意味では客観的に走り過ぎての結果、「過剰なロマンチック」と受け止められる向きがあったように思うんです。(いや、これはみうらの偏見かもしれないけれども) それらの作品にも良さはあるかもしれない。でも私は、こういう作品のが好きですね。読んでよかったっす。
1イッツ クール。これこそ クール。と、思いました。 冥途の一本道が開けてきてかまわないあたり、クール 明度の一筋も見つけられないのかい?と、どこかのだれかに言っているあたりが、クールです。 この詩のクールが寒いっ。……にはならない理由は、たぶん この詩が、秋田の【なまはげ】と、【ハーメルンの笛吹き男】が融合しているかのようだからかもししれません。 「冥土への一本道が見えても 別に構わない」といいつつ ご両親が まずはその道を先に歩いて行くのだろうと思っておられるからかもしれません。伝統的な年功序列という思想に 包まれ守られているから、この詩は 寒くはないのかもしれません。 この詩で「死神にとおりゃんせ」といっておられるけれど、いやいや結構 死神さんとディスタンスを ちゃんと とりつつ、歩いておられる感じがしました。わたしは この詩を読んで微笑ました。
0とても悲しい気持ちになる詩でした。とても心地よい悲しさです。 「死神」という言葉以外「死」という言葉や、直接的なストレートな言葉は少ないのに、歌のような少し楽しそうな言葉の並びが私には切なく映りました。 思わず、「この詩を読んだ人は死にますよ」と噂をたてたくなりました。
1みうらさん、コメントありがとうございます!お久しぶりです!いや、コメントを一読して思ったのはみうらさん、俺のこと分かってんなあという感慨みたいなもので、痒いところに手が届く批評を書いてくれたなあとちょっと照れるくらいの喜びでしたね。こう言うとチープかもしれませんが一ヶ月前くらいまで死の影を強く意識する時期がありまして、それがやがて虚無感に変わりふとしたことがきっかけで形にしておこうとして、この詩は書いたのです。呆けていた時に「死神通りゃんせ」といういいタイトルも思い浮かびましたし。とにかく久しぶりに心の底から嬉しい!と思う褒め言葉を貰いましたね。ありがとうございました。 追記・みうらさんのこのコメントは詩の中身にもしっかり踏み込み、どうゆう詩が自分に刺さるか自分がどういうものを求めているか、も明確に示した名文だと思いますね
1るるさん、コメントありがとうございます!クール、いただきました。そうなんですよ。この詩は自暴自棄になった男の死神通りゃんせではないのです。焼酎を買って行っていることからも分かる通りこの話者は、父を大切にしてるし母に至っては母者とまで形容するくらい大切にしている。それが年功序列的なものかどうかは僕には分かりませんが、この話者、男はどこにでも普通にいる男なんです。ちょっとだけ風変わりな。齢四十を超えたであろう男のちょっと疲れた時の心情を上手く書けたんじゃないかなと思います。 死神とディスタンスを取る。いいですね。出来れば死神がやって来た時も冗談の一つや二つを言いながら、笑いつつ去っていきたいものですね。
0もこさん、コメントありがとうございます!そう。この詩の肝は死という文字をほとんど使わず死の予感を漂わせているところではないでしょうか。もこさんが切なく悲しくなったのはなぜだろう、とす少し興味も湧きましたよ。ただ変な噂立てちゃだめですよ!閲覧が減るし笑 まるで呪いのビデオならぬ呪いの詩じゃないですか。笑えて来ますがそんな気持ちにもなるほっこりしたコメでした。ありがとうございました。
0ABさん、コメントありがとうございます!それでいてかっこいいのはさすがだな。この評は僕の作風がある一定浸透していてある一定の評価を受けているということですのでABさんのお言葉はとても嬉しいです。現実離れ。この詩は現実と地続きの死神さんを描きたかったのでこうなりました。良かったですよね。好みと言ってくださりとても嬉しいです。案外そういうシンプルなコメが刺さる時もあるんですよね。
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