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peace dead land
風の音が死に近づく音のようで優しい、と私は思う、何度も削り取られた、貴方の目が夜、違う、貴方では無く、誰か、誰かの目が、夜、夜に近づく、目、メ、め、誰かの闇がまた落ちてくる消灯された部屋は深海のようだ、テレビをつけたままで、部屋にある少ないものには全て蒼い影が付着している、表面だけがテレビの放つ雷光に薄く発光する、私も影の1つとなり、湖に寝転ぶように布団に沈む、横向きに丸まって、胎児の形で、ぼんやりとテレビの画面を見つめる、残像めいて過ぎっていく人々の残滓、女性アナウンサーはにこにこしてる、人を殺してもあんなテンションで居そうだ、あの本を捲った時の匂いを覚えているけどその続きは溶け落ちて焼け落ちた、洗濯機が疲れたライオンみたいな微かな唸り声をあげる、投げ出されたスマホのライトが何かの通信信号めいて明滅する度に深海の蒼い闇の濃度が僅かに変化を繰り返す、蒼い闇の中に記憶をぼんやりと投影する、貴方の顎のライン、頬から目にかけて、奇妙に白い肌、アラバスター・スキンと言う言葉を思い出す、目?メ、メェ、めぇ、と鳴く羊、を、数える、私の想像の中で、羊は、紫の瞳を持つ、呪いのかかったじゅじゅちゅし達の杖の先でホッケーの玉みたいに運ばれる神話におりものが付いてる、それと、ちょっとした血も、誰かの悲しみも私の痛みも、マック・シェイクのようなもの、だ、ちょっとした、私は明日もスマイルするだろう、明日も、明後日も、永久に、スマイルするだろう、スマイル、すまいる、涙で滲んだ視界に漁り火のような、テレビの画面のような、貴方のような、紫の瞳のような、横顔、エメラルドの牙とあくまでも突き立てる中指、魂が織り成す色相と天候が、私には、貴方には、意味が無くて、私はそれが良い、貴方の声は幽かな雨、幽かな歌、永遠の名に相応しいと私が笑う、風の音に雨音が混じり始めた、テレビのCMが次々に切り替わる、幽かな、歌が、頭の中で鳴り止まない、何処かで、にぁ、と声がする、羊だろうか?いいや、猫だ、その猫は酷く大きくて飢えている、私の眼はテレビ画面を捉えたまま、視界がぼやけて、瞼が落ちそうだ、歌が、鳴り止まない、頭の、中で、雨の音が死そのものの音のようでとても優しい、と私は思う、酷く大きな猫は私に覆い被さって再びにぁ、と鳴く、鋭い爪が私の肩を捉えている、あぁ、飢えて、居たのだね、飢えて居るのだ、猫の尾は私の内蔵に刺さって居る、歌が止まないようにと私は祈り続ける、薄く引き伸ばされた闇の中でカーテンが揺れている、猫の体は重たくて柔らかくて暖かい、私の目を捉える猫の双眸はアメジストのような紫色だ、闇の中でもそれがはっきりと見て取れた、だから、私は、ウタ、と、ワタシ、が形作る1つの島に、ネコ、を招き入れようと思った、招き入れたかった、だから、抱き締めた、猫はまたにぁ、と泣いた、1つの死を抱きとめるように私は眠る、それは生を抱きとめることによく似ていた、平和の島で、優しい死の音に包まれて、私はもう眠っている。
peace dead land ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1331.7
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 2
作成日時 2021-04-08
コメント日時 2021-04-12
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
映像が目まぐるしく点々、転々としていく様に圧倒されました。、は私にとってギアのような役割を持っており読み進める度に加速させてくれました。とても面白い詩でした。
0学生の頃、美術の「デッサン」の授業の時、同じ物を描いているのに、ああそんな描き方をするんだと思わせる友人がいました。とても細やかなタッチで描きます。その友人が描いたような〈深海〉の〈消灯された〉あなたの部屋で、あなたの視たものが描き出される。 読む速度とそれが解像されて、目にそして頭脳に、入って来る速度をコントロールできないままに読んでしまっていました。次は、ゆっくり読んで〈風の音が死に近づく音のようで優しい〉感覚を保ちながら読んでみました。〈雨の音が死そのものの音のようでとても優しい〉経験をしながら、あなたの詩を読んでみました。 そして、〈平和の島で、優しい死の音に包まれ〉ながら、わたしは眠りました。
0んー、これはダメだとおもうようー。確立されてるスタイルだから真似してみたくなるんだけどね、なんか薄くなっちゃったカルピスか気泡がでないビールみたいに味気なさだけが残るんだよね。でも逆にこういう風になるのかあって勉強になりましたー。
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