記憶の交差点を渡ると
眺めた景色は
あなたの身体の中を巡り
血液に運ばれ 呼吸となり
もしかして
言葉となる。
心に留めておくべきは
言葉は いつか
消えてしまうということ。
それでもあなたが
山を眺める言葉に
触れたいのなら
長い黒髪の少女の伝説を
訊ねる旅をしてもいい。
河を眺める言葉に
触れたいのなら
常夜燈籠の脇の小道を
急ぐ旅をしてもいい。
托鉢僧として
人の前に立つあなたに
雨が降りかかり
雪が降り積もり
父、母との別離を あなたが知った頃
言葉は 静かに姿を現すだろう。
そして 消えるだろう。
記憶の交差点を渡ると
あなたが投げ入れた小石が
水面に波紋を広げ
すれ違う人々はその軌跡を
もしかして
懐かしく振り返る。
心に留めておくべきは
見知らぬ人に渡した過去は いつか
消えてしまうということ。
それでもあなたが
大切な人に手渡した過去に
再び 触れたいのなら
指の間から抜け落ちた時間と
あなたの無言を重ねて
押し寄せてくる波紋を
両手で掬い 飲み干し
日の輝きに向かって祈る人々の朝を
ともに迎えよう。
それでもあなたが
大切な人から受け取った過去に
再び 触れたいのなら
頭上から降りてくる
限りある命の時間を
帆をはらむ風に任せる微笑みがいる。
あなたは 記憶の交差点を降りていく。
あなたは 目を背けていたものの影を知る。
あなたの背後で囁かれていた言葉
まだ経験したことのない場所で語られる言葉
反転する砂時計が綴る
まだタイトルのついていない詩集の中の言葉。
心に留めておくべきは
言葉は いつか
消えてしまうということ。
誕生と喝采
あなたは
限りある命の時間を
帆をはらむ風と一緒に
ゆっくりと歩きだす。
作品データ
コメント数 : 1
P V 数 : 1333.4
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 5
作成日時 2021-03-17
コメント日時 2021-03-18
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.5 | 0.5 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.5 | 2.5 |
閲覧指数:1333.4
2024/11/21 20時58分20秒現在
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「言葉はいつか消えてしまう」昔は言葉を残す媒体が限られてましたが、今はネットもあっていい時代に生まれたと思います。この詩も多くの人達に詠まれることでしょう。
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