諍いの止まない日々に辟易した僕は、空へ飛んでみようと思った。みんながツバを散らして揉める姿を太陽を背に眺めてみようと思った。
飛び方は知っている人に教わって、ついでに翼も譲り受け、いよいよ僕は地面から飛び立った。夜鷹の話を思い出した。眩しい太陽に目をすぼめながら僕は上へ上へと昇る。上昇気流をつかみ、螺旋を描きながらあの雲を目指した。
目標の雲を突き抜けたところには、たくさんの人たちがいた。上にも横にも斜めにも、みんな翼を背負い浮遊している。ひらひら滑空して遊んでいる人も。なんだかその光景は、空からの裁定者に見えて少しだけゾッとした。
「また一人昇ってきたね」
「……みんな同じことを考えて来たんですか」
「そうだよ、ご覧」
指さされた方に目を向ければ、下は諍いに満ち溢れていた。罵り合いもあれば、一方的に傷つける人、示し合わせて誰かを仲間はずれにする集団も。眉間に皺を寄せ合い、難しい単語を駆使しての討論も少なくない。嫌なものだなぁと僕は思った。それらを遠目に見て腕を組みニヤニヤしている姿もある。僕もその一人だったんだ。
「此処からずっと見下ろしていて思ったよ」
隣で呟く声がした。
「みんなただ自分の話を聴いてほしいだけなんじゃないかなって。もしそうだとしたら、悲しいことだよ」
嫌なものだなぁと僕は思った。
「此処は大して話したいことのない人間のたまり場さ」
そうして時間は進んでいった。いろんな箇所を眺めていると、諍いに割って入る人たちを見つけた。仲裁するつもりが、逆上してしまって新しい派閥を築く本末転倒な人が多いけど、ちゃんと落とし所をつくっている人もいた。でもすごく少ない。
「あそこで上手く仲裁してるのは前に降りていったヤツだよ。やっぱり見ちゃいられないって」
「……」
そして時間は進んでいく。
遠くの方で、ずっと旋回して遊んでいた人が唐突に弾丸のような速度で降りていった。僕らはチラリと横目で見て、また地面を見下ろす。
二人組が昇ってきた。
「こんなにいっぱいいるんだね」
「意外だね」
なんて話してる。
雲の切れ間から薄っすらと、さっき降りていった人が見えた。ずっと前に降りたのであろう人達と三人で小さな戦争が起きかけた所で頑張っている。じっと目を凝らすと、うちの一人は僕に飛び方と翼を授けてくれた人だ。
楽しそうにみんなで過ごす人もいる。寂しそうに一人で過ごす人もいる。やがて彼らは小さな争い事を仕掛けていく。僕らはそれを見下ろしながら、ただ時間は進んでいく。
高みの見物にも飽きて滑空遊びに興じていた時、
「何してるんだろうあたし」
誰かが呟く声がした。
嫌なものだなぁと僕は思った。
すみません。作品とは関係ないんですが、私の書いた「」という詩をご存知ですか?最近あなたがこの作品にコメントしていたので...。通知には作品にコメントがついたことが知らされるのですが、どうやっても作品を見ることができません。書いたのは大分昔なので内容も忘れてしまい...。よければどんな内容か教えてください。
0こんばんは。 自分のコメント履歴を確認したのですが、その作品への履歴はついていませんでした。ついでに「」という作品もアップロードされていないようです。
0みやびさんへ 返信ありがとうございます。『「」にみやびさんがコメントしました』という通知だけは来たんです、作品自体がアップロードされてないのに...。一体何が起こってるのか訳が分かりません。
0ただ単純に地上と天国の風景だと思いました。ですが、わたしは天国にいたとして仲裁には行けないと思います。怖くて
1いろんなひとがいて、成り立っているのだと思いました。
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