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* ひと粒だけ*の星
* ひと粒だけの*星になりたかった 誰にも邪魔されず 誰にもさえぎられない 光をずっと遠くにまで届けて ゴミをあつめる車や デイトレーダーのパソコンや コカ・コーラの積み荷や 学者が栞をはさんで閉じてしまった本や 空き缶をたくさん積んだ自転車や それにセールスマンの嘘かホントか分からないお喋りまでを照らし出す 忘れられがちな一場面を切り取る 僕はそんなものになりたかった でも 部屋を片づけて風が吹き込んでくると 星の光さえ一瞬にして立ち消えるのを 僕は*知ったんだ そのせいか ミライハマダワカリマセン ソレニミライニツイテ考えルノヲヤメマシタ 言葉一つ選ぶにしても 一つ何か喋るにしても 頭のどこかでふるい落とされる想いがある 閉じ込めた言葉 落としてしまった言葉は 僕が今どこにいて何を感じているかを 知らせてくれる郵便物だ 届いたものは僕に青いため息をこぼさせもするし 口に幸せを放り込みもする そしてそれは多分いいことなんだろう 昨日見たニュースは みんなが横並びになってるなんて幻想だって教えてくれた 足元が揺れてガラガラと崩れていく音 お陰で地べたでさえもうなくなってしまったのに それなのに 僕は目には見えない 手でもさわれない 調和があると 信じて疑わない キノウノコトは忘レマシタ カコノコトはモウミズニナガシマショウ もし僕らが 名前も番号もない場所にいたら どれだけ気楽で 自分たちの肩の荷をおろせただろうか もし仮に 数字とデータで個人を特定しない場所があるとしたら 目の見えない詩人には きっと天国と呼ばれることだろう *一粒だけの*星になりたかった 白も黒もないキャンバスの上で 蝋燭の火なんて 紅茶の湯気なんて もちろん星の光だって 瞬く間もなく消えるのを知りながら 僕はそうなりたかった だから今日になって僕は ずっといた 長い間ずっといた 部屋をトランク片手にあとにしていく
* ひと粒だけ*の星 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1727.2
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 80
作成日時 2020-11-30
コメント日時 2020-12-06
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 20 | 20 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 15 | 15 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 30 | 30 |
総合ポイント | 80 | 80 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 20 | 20 |
前衛性 | 10 | 10 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 15 | 15 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 30 | 30 |
総合 | 80 | 80 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
号泣しました。とても素敵な詩だと思いました。 朗読する声が温かい。そして音楽と画像がこの詩の雰囲気にとても合っています。 *ひと粒だけの*星のアスタリスクが煌めいていて輝く星が目に浮かびました。全体的に漢字、平仮名、カタカナのバランスが絶妙でどれひとつとっても意味があるものに思えました。 >光をずっと遠くにまで届けて >ゴミを集める車や >デイトレーダーのパソコンや >コカ・コーラの積み荷や >学者が栞をはさんで閉じてしまった本や >空き缶をたくさん積んだ自転車や >それにセールスマンの嘘かホントか分からない >お喋りまでを照らし出す 光をずっと遠くに届けた先の風景、リアルな日常が描かれておりとても面白いです。セールスマンのくだりが特に好きです >ミライハマダワカリマセン >ソレニミライニツイテ考えルノヲヤメマシタ >キノウノコトハ忘レマシタ >カコノコトはモウミズニナガシマショウ ここのカタカナと漢字と平仮名のバランスとてもいいと思います。「考えル」「忘レマシタ」深い意味を感じます >言葉一つ選ぶにしても >ひとつ何か喋るにしても >頭のどこかでふるい落とされる想いがある 大切な人に何かを伝えたくても伝えられないでいる主人公の切ない気持ちが伝わってきます >閉じ込めた言葉~ >そしてそれは多分いいことなんだろう この部分が私の涙腺を崩壊させました。 >僕は目には見えない >手でもさわれない >調和があると 信じて疑わない この部分がこの詩の核となるところなのかなと感じます。弱いようで儚いようで強い想いを秘めた星の光 >もちろん星の光だって >瞬く間もなく消えるのを知りながら >僕はそうなりたかった ここでさらに号泣。主人公の強い想いが伝わります >だから今日になって僕は >ずっといた 長い間ずっといた >部屋をトランク片手に あとにしていく 主人公の新たなスタートを感じさせる最終連 「今日になって」という表現がさらにリアルさを増して 強く伝わります。 とても素敵な詩、朗読動画をありがとうございました。
閉じ込めた言葉 落としてしまった言葉は 僕が今どこにいて何を感じているかを 知らせてくれる郵便物だ ここがコンセプトになっているのでしょうか?
0つつみさん、コメントありがとうございます!そこまで、号泣するまで感動していただけたなんて面映いです。この詩は、そうですね。やはり自分の立ち位置をあらためて確認したのち再スタートを切る詩となります。最近僕は近辺整理、特に記憶と情報の整理が著しいのです。やはり何かが起こりつつある予兆だと期待しております。とにかくもつぶさな感想、分析、ありがとうございました。大感謝です。
0田中宏輔さん、こちらもコメントありがとうございます。実はですね。この詩の核はご指摘いただいた箇所ではなく、調和があると信じて疑わないの段なのです。この目まぐるしく変わる世の中、それこそ唾棄されたり、疎まれたりあるいは逆に喜ばれたりする事象がある世界で、根底の調和というものを話者は信じ、この詩の核として持ってきてるわけです。根底の調和。右の人や左の人がいたり、信じる者や信じない者がいたり、あるいはまた別の次元でまことを追い求める人々がいる世界で、僕はわりかし根底の調和というものを好む傾向があります。考え方としてはひょっとして未成熟かもしれませんが、中々いいと思いませんか?根底の調和。
0うーん。勝手に要約しちゃうと、一粒くらいの大きさしかなくても見過ごされていたり、零れ落ちてしまうような小さなものに光をあてられるようなそういうものにずっとなりなかった、でやっとそのために今いる場所から外へ出る、という感じなのかな。そういう熱というか意思の働きみたいなものは感じます。 が、それと余白(スペース)や行換えがいまいち一致していなくて身体的に気持ち悪さを覚えました。仮に語り手の表立った語りと内心の揺れの不一致とかぎこちなさをこのスペースや行換えが示しているのならわからなくはないけど、どうなんだろう。 あとはやっぱり「一粒だけの星」にしては照らすものが多くて、バランスが悪く違和感があるように感じた。 ただ、バランスが悪かろうと「一粒だけ」という小ささに賭けようとする語り手はロマンチックだし、この詩のなかにポエジーを見出せるとしたら、この一粒だけというところだなと思います。
0ロマンティックでしょう。藤さんの「気持ち悪い」という生理的感覚にまで僕は対処するものではありませんが、熱や意思の働きを感じていただけたのなら良かったです。ひと粒だけでも照らすものは多いかもしれませんよ。太陽はすべてを照らし出しますし。恒星の一つに過ぎませんが。
0この世界の中で、何か確かなものを掴みたい、でも思うようにいかない、そのもどかしさを、詩の言葉に託しているように感じました。
0tasakiさん、コメントありがとうございます。確かなものとはこの詩の話者にとっては「根底の調和」が存在すると確信することなのですが、もどかしさはあると思います。今僕はとてもいい交流をさせてもらっている方がいるのですが、その人との間には障害あり、山あり谷ありでまさにもどかしくもあります。その光景が少し投影されているのかもしれません。ありがとうございました。
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