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カナブンへの視線
人工の光に飛び込み、ごつん、とやっているあの描写だけでこの作品の価値というか、面白さはじゅんぶんに担保されていると感じた。しかもそれを普段私たちは何も感じないか、思っても「バカだな」とかその程度のことを、「徒労」とはっきり言語化してしまうほどの観察眼に、作者さんのカナブンの視線へのこだわりがよく表れている。 >頭で明かりを遮ってみると、僕の耳の両端から溢れる淡さへ なおも断続的に 引き寄せられる、彼の身体 こういった細かな描写は見逃せない。 自律した言語体系に寄りかかっているだけでは描けない、身体感覚の刷り込み。 >昼間は、日照りの下、この小宇宙 住宅地を駆け巡り 夜、回るメリーゴーランドの中で迷い続けても きっと陽がまた昇れば、彼は 身体中に巻かれたひもを解くように 日の出の方角に羽を伸ばすはず 夜だけでなく昼間の彼らの生態にも筆が伸びている。ここは比喩が比較的多く使われているが、それでもカナブンの実態、生々しさは損なわれない。 後半は、語り手がカナブンと同化するような描き方がされるが、私個人としては、少々書きすぎのキライがあると感じ、そこまで乗れなかった。
カナブンへの視線 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1251.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2020-11-23
コメント日時 2020-11-25
※批評文が最後のところまで投稿されていなかったのでその続きです。 それにしても日頃からカナブンをよく目にしているのか(季節的に今ではないでしょうけど)、よほどカナブンに何かを見出しのだろう、それが「徒労」という語り手とカナブンを紐付ける媒体になっているのなら、後半もわかるというか、後半あっての前半だというように、好意的に読むことができる。 御作は創作という過程を、考えさせられたというか、書くことへの動機をこちらに想像させたという意味で拙文の冒頭とあわせておもしろかった。 ※間違えて作品のほうにも追記してしまいました。すみません
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