別枠表示
やませ
丘の上から見下ろすと 海の向こうから 濃い海霧が層をなして 次々と町に押し迫ってくる 青年の曇ったメガネに 映し出されるのは 9年前の港町の光景 脳内にぼんやりとした イメージが蘇り 現在と過去が呼応していた 日常に起こりえない 理不尽や不条理を 体験した彼にとって 今を生きる、とは 諦念の静けさ 丘の上に立つ白い電話ボックス 彼は意を決してドアを開け あの日止まった黒電話の 受話器を取り 亡くなった母へ語りかけてみた ぽつ・ぽつ・・と言葉は次第に溢れ 押し殺されていた想いは 風に乗り昇華されていく 受話器を置き、外に出ると 巨大な海霧は晴れ 丘の樹々は濃い緑を取り戻し 陽光に照らされた 樹皮のテクスチャーが くっきりと浮かび上がっていた
やませ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1284.7
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 6
作成日時 2020-11-02
コメント日時 2020-12-01
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 6 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.5 | 1.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.5 | 0.5 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
イメージが立ち上るような。確かな筆力の光る作品ですね。震災の詩でしょうか。樹皮のテクスチャー、の言葉が伝える質感で終わる余韻が一筋縄ではいかない、複雑さを表してるようです。
0コメントありがとうございます。 震災の詩です。実在する風景を観ながら書きました。 樹皮のテクスチャーという言葉、結構悩みながら書いたのでこの言葉の余韻を感じていただき嬉しいです。
0風の電話 でしたでしょうか。ドキュメンタリーとして見ましたが。三連と全体とのつながりが感じられるのが印象に残りました。
0コメントいただきありがとうございます。NHKでやませの特集があったようですね。やませの冷気と濃い霧が津波のように見えた印象があったので、少年の思いと重ねてみました。うまく伝わり嬉しく思います。ありがとうございます。
0コメント頂きありがとうございます。 そうです、風の電話をモチーフに書いてみました。確かに第三連なこの詩の核となっており、全体との繋がりを感じていただけたことに感謝します。ありがとうございます。
1今を生きる、とは 諦念の静けさ まさに、しかりと思いました。
0コメント頂きありがとうございます。 そうですね。彼にとって、様々な弊害を乗り越え、真理や悟りの境地に心が達した状態の静けさがありながらも、どこか儚げで脆さもある様子を表現してみました。
0