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擦過傷
方解石が割れて、みなし子が生まれて、それをカーソルじゃ拭いきれない空疎が覆い隠す。 「梅雨が来たな」 君は、食後に薬を流し込むみたいな平坦さで、窓の外に発煙筒を投げる。かつん、と初めて足をつけた命が、逆流を生み出して、透明度を攫っていったのを、薔薇のくすみで理解した。 シルバーグレイが持て余した県営団地が、繭の中、ニヒリズムに狂わされる。蛙でさえも生殖を放棄する始末だったことは、言うまでもない。 鼓膜を這う百足達は進化を遂げて、少女のハイライトさえも、食べ尽してしまった。 恵みよ、恵みよ、此方へおいで。 雨乞い、の隙間から、てるてるぼうず。錯綜と不信とが睨み合い、古戦場にバリトンの合図があるまでは、善人でいるつもり。 何故だか吐き気が込み上げて、君の口を無意識に塞ぎかけてしまう。他人同士の落ち穂拾いでしかない局地的な感情連鎖が、フローリングに弾け飛んで、写真立ての中、酸化する忠誠心。 記憶させないでよ、船酔いなんて。 サッカリンの寓意を仄めかす金盞花に、声を掛けようともしなくなった紅白帽。蠢動する人々に、追い付こうとも思わない不整脈。同罪だった。君が飲み込んだ違和感に、果敢無さが含まれていたら。人間らしい誤答に、頭を悩ませたホスピス。 換気扇だけが循環を支えて、片足立ちの湿気に唆されるあほ毛は、八方美人な不倫常習犯のまま。 憚りは、もはやシンドローム。 痛くも痒くも、無い筈だよ。理論上は。
擦過傷 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1293.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2020-10-19
コメント日時 2020-10-30
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
良いと思います。 正直なところ詩の内容をキッチリ詰めては読んでないんですが、そうしても楽しめました。 あとこういう詩には珍しくというか、読んでいて視線が止まらないというか、頭の中で淀みなく読んでしまえるのもすごい良いです。 >痛くも痒くも、無い筈だよ。理論上は。 の〆もかっこよくて好きでした。
1梅雨のぐずぐずとしたはっきりしない天気と、白黒つけない(つけられない)人物の心象のクロスオーバーといった印象を受けました。モチーフが私のどストライクなので、すべて読み取れないまでも映像を浮かべてはとても楽しく読ませていただきました。 >サッカリンの寓意を仄めかす金盞花に、声を掛けようともしなくなった紅白帽。 この連はなんだか切ないですね。徐々に大人になっていくような、少年・少女期の無邪気さが失われていく、サンタクロースが両親であると気づき始めた子供が、逆に親を気遣って騙されたふりを続けているようなすれ違いと痛々しさを感じました。そういうのが、最終連の >憚りは、もはやシンドローム。 であり、「擦過傷」であるのかなぁと。 鉱物が内包する傷は虹色の輝きを宿すことがありますので、いつかこの擦過傷も虹になるといいなぁというのは実際にそんな年ごろの子を持つ親としての希望的観測であります。
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