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針金たちの小さな物語、彼らは生きている
羽田恭氏によるフィラデルフィアの夜シリーズ。ローマ数字が付いているのでもしやシリーズモノでは?と思ったらB-reviewだけではなく、小説家になろうでもまた別に小説として書かれている筆者にとっての代表作シリーズでした。 このフィラデルフィアシリーズ(勝手に私が命名)はモデルを知らないと理解が難しいかもしれません。 1982年、フィラデルフィアにて針金(ワイヤー)で作られた芸術作品、人形のようなものを1000個以上路上に棄てた人物がいるらしく。 結局、彼らを創った人物の正体はわからなかったそうな。そしてその人形を創った人物をワイヤーマンと呼ぶようになりました。 筆者によると(小説家になろうの方の説明文参照)このワイヤーマンの作品をベースにこれらのフィラデルフィアシリーズは創られているそうです。 さて、説明が長くなりました。 ここから本題。 どのフィラデルフィアシリーズの批評を書くか本当に迷いました。 基本的には針金で造られた人形とその周りで起きるちゃっとした物語が語られます。いわゆるショートショートです。 この作品では下水道の描写から始まります。 びしゃり、びしゃり、 ただでさえ針金で成立した男は下水道を走ります。必死に。一歩間違えれば錆びて動かなくなりそうなのに。 そして、男はたどり着きます。 背中に下水の粘液を添えて。 教会では結婚式が行われていました。 彼らは男を見て悲鳴をあげます。 新郎は男を殴ろうとしました そのとき、 お父さん。 新婦は呟きます。 おめでとう、ありがとう、さようなら この言葉を残し、男は一輪の花と十字架を置いて消えていきます。 話の内容としては非常にシンプルなものではあると思います。無機物が人間の幸せを願って、死んでいく。いや、無機物はそもそも生きているのか?死んでいるのか?それは良いとして、今回は不思議であり、心に染みて響く物語でした。そもそも、何故針金男が父親なのか?そして、最後に消えゆく父親。娘は何を思ったか。 私はお父さんという文字を見ただけで右目から何かが溢れましたね。面白かった。 他のフィラデルフィアシリーズも読んでみようと思います。 ありがとうございました。
針金たちの小さな物語、彼らは生きている ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1176.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2020-08-23
コメント日時 2020-08-24
海花さん、おひさしぶりです。 以前より注目を集める書き手であったと記憶しておりますが、本推薦文を見るに、やはり文章力のある方と思います。背景が分かって面白くなる作品、そうでなくとも面白い作品、様々ありますが、作品の完成度が高ければ読者が背景を分かっているかそうでないかは微細な問題であり、むしろ背景を調べたくなるほど作品として優れているものを書くことが、書き手としての理想のような感じもします。 海花さんにとって、本作はまさしく、背景を調べるに至るほど優れた作品と感受されたと思料しますし、推薦文として、そういった視点で批評を記述することもまた、書き手として優れていることの証左であると考えたりします。 また、暇でどうしようもないとき、忙しくて全てを忘れたいとき、釣りに出かけたのにさっぱり釣れないとき、諸々のタイミングでなんとなくB-REVIEWに参加されたくなった場合に、ちらっとお顔を拝見できれば幸甚であります。
0まさか、批評を書いて下さるとは! 気が付いたら原点と言える、まだ拙い0話を入れたら(0話を元に18話を書いてます)40話も書いている、シリーズです。 自分でもフィラデルフィアシリーズと呼んでいるので、そう呼んでくれたら幸いです。 (もっとも、段々元ネタのワイヤーマンと関係がなくなっている感がありますが) 37話目にあたる、ビーレビュー投稿通算14作品目ですが。 フィラデルフィアシリーズに特有の悪夢的な雰囲気で謎は謎のまま、情感を残した作品となっております。 (基本バッドエンドはなかったはずですが) 手を変え品を変えつつ、書いてきました。 喜んでくれましたら、幸いです。 よろしければ、どうぞ。 https://ncode.syosetu.com/n5588fv/
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