夏
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溺れたいたいいたいいたいってうたうたいはうたう、うたうたいは生きる
永遠に生きてもいいかなって言ったら、「いいよ」って嘘ついてくれない君が好き。ねえ言葉ってレースみたいだね。かさねて、複雑になって、色を変えて、うつくしくて。うれしくなって、かさねて、ひかりが見えなくなって、くらくって、おもくって。もう、やさしさもここには届かない。深海の中にうずくまって、嘘つくって、それでも、うつくしさを忘れられなくてうたう、うたが、浮き上がって、かさなって、かなしくって、帰れなくなった。 ねえ君の、君の冷たさだけが、この海を突き刺す。 乳白色の空ね、なにかが生まれそうな。 メガネを変えてから世界ってちょっとだけつまらなくなった、揺らがなくなった。それはカーテンのゆらぎの裏側が、ひかりではなく空気だと知ったときみたいで。それは妊婦の胎の中にあるのが、あたたかさではなく肉と骨だと知ったときみたいで。度数のあがった視界にうつるのはくもり空、とおくには雨。「世界ばかりみているのはなぜ？」「せんせえ、だって”私”はうつくしくないから。せっかくならうつくしいものをうたいたいでしょ」「世界も美しくなんてないよ。」「世界はうつくしくなくてもうつくしいんだよ、せんせえ」修正テープでわたしの台詞を消した。 ああ、もうじききっと、濁点がふる。 コロナ、ガーゼ、マスク、海、雨、うだるような暑さ、蝉、盆の夜、花火、きみの韻律のふるえ、言葉からしたたる汗。あつい、あつい、なつぅ。ゴキブ…ちがう、ちがう、だめ……。 （現実と真実で韻が踏めるね。という言葉がゴミ箱に貼りついている。ガムのせいだ） 夕暮れがブルーに沈んでいる。真っ赤に火照っていたビルディングも、アスファルトも、放置された自転車も、涼んでいる。 オレオが上手く割れないんだ。クッキーとクリィムは別々にしたい派なんだけど。どうしてもクリィムが割れてしまって、ぐちゃぐちゃになってしまって。胃の中で全部まぜこぜになってしまうってわかってるのにね。キャスターの声が普段よりも少しこわい、ことに、おびえている。Bluetoothイヤホンを受け入れる。耳元でラナデルレイが「死ぬために生まれた」とうたってくれる。そう、死ぬために生まれた。だからずっと混乱している。初めてのクロールみたいにばたついて、息をしようと溺れていく。 物心がつくまで、どうやって生きてきたのかを私は知らない。 わたし、を美しくないもの、と定義した瞬間から、みにくいままで愛されないといけなくなった。 腕をおおきく広げてベッドの中に落ちた。沈んでいけと心から願った。 視界の端にレースが舞った。天井は狭く小さくミルクのように薄汚い。 クーラーの冷たさは少しだけ君に似ている。扇風機のかぜは少しだけ愛に似ている。 それは、設定温度が18度でも強風でも夏を生きている間は私の身体を凍えさせることはないということ。 溺れたい/遺体/痛い/居たい うたうたいに合わせる素敵な言葉を思いつきますように。 さかさまに沈みながらかみさまに祈った。 「永遠に生きてもいいかな」 ファンタジーの中で生きていくことはできないかな。 私は桟橋に立つ君を見ている。 君の答えは知っているけど、私は知らないふりをしている。 それを君も知っている。 （君の瞳が揺れた。けど、それは、波が光のさざめきを反射しただけかもしれないよね）
溺れたいたいいたいいたいってうたうたいはうたう、うたうたいは生きる ポイントセクション
作品データ
Ｐ Ｖ 数 ： 1069.6
お気に入り数： 3
投票数 ： 0
ポイント数 ： 3
作成日時 2020-08-11
コメント日時 2020-08-11
| 項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 1 | 1 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 1 | 1 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 1 | 1 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 3 | 3 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 1 | 1 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 1 | 1 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 1 | 1 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
コメントありがとうございます！ 詩の中では美しい言葉を並べているのに、 現実ではそれらの言葉を使うことはとても少ない。 私は平易な言葉を使う方ではありますが、 それでも、私が「うつくしい」と思う言葉の連なり、響きは現実で「つかえる」言葉ではない。 そんな言葉が現実の誰かの心を動かすことができるんだろうか？ などと最近は思っております。 好感いただくのはとてもうれしいです！ いろいろ未熟な部分があると思いますが、これからも頑張って月にひとつは作品を投稿していきたいです。
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