蝉が死んでいる
夏が始まって間もないというのに
鳴き疲れたのでもなく
役目を終えたのでもなく
何かを理由にして蝉が死んでいる
昨日君は妙なLINEを送ってきて
僕を困らせたけれど
それはきっと夜空が地上の写し鏡だったからだ
キメラのような心の異端児
二つに別れた色で
昨日の空は僕らに覆いかぶさっていた
答えのないアルイハ答えたら
すべてがthe endになるような質問が
世の中には多くて
君も僕も男女になるのを半ば諦めかけたけれど
君は女性で僕は男性 変わらないのは身体機能だけ
何か見知らぬ巨大な脳の
ワンオブパーツでもある僕らは
戸惑い振り回され途方に暮れながらも
役目を果たす
蝉が死んでいる
夏が始まって間もないというのに
僕はそっとティッシュで彼を包み込むと
公園の土の中へと埋めてやった
二度とこんな複雑がまかり通る場所に落ちてこないようにと
静かに埋葬してやった
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1582.7
お気に入り数: 0
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ポイント数 : 2
作成日時 2020-07-28
コメント日時 2020-07-31
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1582.7
2024/12/22 02時25分40秒現在
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複雑な様に見える人間、あるいは人と人とのつながりとしての「まち」と言い換えてもいいかも知れないそれにわずらう自分と迷い込んできた蝉の亡骸。蝉も一見単純に見えるかもしれないが複雑で、人間も複雑な様に見えて実は単純なのではないかと読みながら考えさせられました。私もそうですが恋愛対象に執着するあまり単純なことを複雑にして何とか自分に都合よく考えようとすることがあります。そんなことを思いました。
0私は夏というものにどこかしら切なさを感じております。蝉、男女というもので若い人たちの青春という物をおもいだしました。私の感覚はまだ子供心を行ったりきたりしているのか、はたまた中学生や高校生のままなのかもしれません。そんなことを感じました。
0かずやさん、コメントありがとうございます!この詩はLGBT問題にも微かですが触れていますね。男性でありながら女性の心を持って生まれた人たち、またはその逆も然り。この詩の話者は恋人と思しき人物と、つがいになることに一応の帰着点を見つけたようですが、世の中一般ではそう単純にことは収まらない。本当に単純なようで複雑なんです。僕の好きな歌で「LOVE IS GOD'S MISTAKE」と歌っているものがあるのですが、この詩はそういう男女間の複雑な機微、ちょっとした悲観も扱っていると思います。本当にもっと物事が単純だったらどれほど生きるのが楽だろうと思います。
0舟虫さん、コメントありがとうございます!夏は切ない。一点では僕も同意するところです。ですが僕は基本夏男で夏が大好きなんですよ。あの照りつける陽射しとセミの鳴き声、風鈴、素麺と言ったものが。この詩では蝉の死骸から、無常を描き出していますが僕は夏が好きだからこそその寿命を全う出来なかった蝉に切なさを感じとることが出来たのかもしれません。蝉も人も不意に死はやってくる。死が救いであったとならないほど完全燃焼したいものです。
0返信ありがとうございます。書いてらっしゃるのはTears For FearsさんのGod's Mistakeという曲でしょうか。聞いてみます。恋愛といいましょうかパートナーとの関係について、最近の私は「ベターハーフ」ではなくどちらも主体としてありその上でどちらがどちらか分からなくなるような関係が好ましいのではないかなと思ったりしています。とりとめのない内容、失礼いたしました。
0かずやさん、再度のコメントありがとうございます。そうです。tears for fears の「God's mistake」という曲です。この曲はvoのローランド・オーザバルが若い頃に結婚した奥さんと2人共々純粋さがなくなり、結婚や男女間の愛に悲観的になっていた頃の作品です。ぜひお聞きになってみてください。ちなみにこの時期の彼は「Mr.pessimist」という曲も作っております。こちらもご参考までに。「ベターハーフ」の関係ですか。それも良いですね。性的役割、ジェンダーその他あらゆる要素が激変期に今はあるのでしょう。有意義なお話ありがとうございました。
1人間、誰しも単純なあり方のようでいて生きていると段々と複雑にならざるを得ないものですね。人間関係や社会との関係から逃れられない。さらに自分の在りようと社会の常識?と言われるような既成概念や先入観が合致しないとき(LGBT問題は詳しくないので語りませんが)こころはより複雑にねじれるのかもしれません。比較的平易な言葉で書かれている良い意味での軽い文体が前作ほどではないですが引き続き語りになじんでいると思いました。ちょっとキメラのような心の異端児(硬いというか普段使いしない、ワンオブパーツもそうですが)が浮いてしまっているようにも思えます。使うなら徹底的にキメラを使い倒しても良かったのかも。書いているうちに返詩?みたいなもんが浮かんだので、ちょっと失礼して珍しく貼ってみよう。 ◇◆◇◆ きみは僕をキメラみたいに複雑で 鵺みたいに奇怪なやつだっていう けれど、鏡にうつる僕はひとできみも ひとだ、僕がキメラで鵺ならきみも キメラで鵺なんだよ、と囁いたらまだ夏が 始まったばかりなのに蝉が死んでいたんだ 蝉が死んでいたんだ、蝉が死んでいたんだ ベランダには植木鉢ときみが置いていった 蝉が死んでいたんだ、蝉が死んでいたんだ きみの質問にいつも 僕が困ってたのは当たり前過ぎる 答えがきみを殺すかもしれなかったから 春のようなひと、太陽よりも月が似合って なびかないベリィショートのカミはピンク ムーン、霜を降らす四月の満月、冷たい瞳で偽典 きみは僕をキメラみたいに複雑で 鵺みたいに奇怪なやつだっていう けれど、鏡にうつる僕はひとできみも ひとだ、僕がキメラで鵺ならきみも キメラで鵺なんだよ、と囁いたらまだ夏が 始まったばかりなのに蝉が死んでいたんだ 蝉が死んでいたんだ、蝉が死んでいたんだ ベランダには植木鉢ときみが置いていった 蝉が死んでいたんだ、蝉が死んでいたんだ 春のようなひと、太陽よりも月が似合って なびかないベリィショートのカミはピンク ムーン、霜を降らす四月の満月、冷たい瞳で だから夏が来たらハルの蝉が死んでいたんだ きみはキメラみたいに複雑で鵺みたいに 奇怪で、春を繰り返すひとだから、夏の 僕にはみえなくなってしまった、死んだ 蝉は、ハルゼミで春爛漫と死んだんだ 複雑な僕らと安易に過ぎる社会という名のパズル に僕は自ら嵌ったんだ、ハルは自分を保ったまま キメラみたいに鵺みたいに捉えようもなく それはうつくしいワンオフパーツであり続けて 夜風を切りどこまでも飛翔する、カーテンが翻り ハルゼミを蟻が解体していく、LINEは未読のまま ◇◆◇◆◇ 長文失礼いたしました。僕の感想のような戯言の詩ですが。
1帆場さん、コメントありがとうございます!人間ほとんどが子供の頃はシンプルです。少なくとも個人的にはそう思っている。しかし社会の定義した「普通」とすり合わせるよう求められる年代になればなるほど複雑化してくる。というより自身の複雑さに気付く。それは構造的なものかもしれませんが否応なく襲ってくるものです。この詩はそういった複雑さを生む社会と語り手の関係を男女の機微に照らして書いたものです。蝉の死に無常を感じながらの展開は我ながら上手く行ったのではないかと思っています。心の異端児とワンオブパーツ、実は気に入ってる箇所なんですよ。僕は本来こういう飛躍した表現が好きなのかもしれません。また返詩の方ですがキメラと蝉が死んでいたんだの連呼がとても効果的ですね。しかもしっかり僕の詩とリンクしている。LINEが未読のままというのが、なんとも言えない喪失感、茫漠たる孤立感を描いていて良いじゃないですか。僕が描きたかったのは蝉の死骸を見つけた時、不意に襲ってくる孤独感だったのかもしれません。それは社会と断ち切れた。何れにせよ返詩の方もありがとうございました。
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