雨が、降っていた。ひとびとは蟻のように地下へと降りてゆく。
駅の構内は肌寒く、列車を待つ人は、まばらです。
列車の蒸気かなにかで、周囲の視界は薄く曇っている。
この地下を通りひとは職場や、
目的の場所に、主に疲れた顔をした中高年の男性が多かったが、
皆しきりに時計を気にしてる。
売店で豆乳を買って飲んでいる者もいる。
新聞で、
各地の情報が(信じられない内容ばかりなのですが、)
伝えられている。
急な轟音と共に、幼い子が、線路の中へ入り込んでしまった。
列車は急停車を。
線路のレールは火花を散らしながら甲高くきしむ音を構内へ響かせる。
あたりがなにやざわめいている、
その線路にはいってしまった子が、
列車と衝突してしまったらしい。
私は読みかけの記事から顔をあげて、その光景を見ていた。
少年は泣いていた、
母親らしき人物が不安そうに事の次第を見守っている。
祈るように。少年の姿は見えなかったが、
なにやら鉄のような、金属質の匂いが辺りに広がっている、
あたかも金縛りにあったかのように、
そこらの空気は冷たく固まっている。
私はその母と、子を助けたいと思った、
新聞を落として、線路のなかに駆け込んだ。
...
数日後、うなされて。
ぼんやりとまぶたをあけたら、
そこは薄暗い白い病室で、
私は呟いた。
こわい夢だった、と。
僕、僕?
目が覚めたのね、
ベッドから見上げた先で
初老の看護師が心配そうに私の事をみている。
なにやらとても悲しそうな眼で、
私をみている。
あ、帰ります。
なにが起きたのですか? といって、身体が全く動かない。
見上げたその隣で、
先の夢のなかの母親が、泣きながら私をみている。
足が痛くて、その事を伝えようとしたが、
声が出ない。医師が駆けつけ
頑張ったね、と言った。
必ず良くなるからね。
そう言って、私の手を握る
作品データ
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作成日時 2020-07-20
コメント日時 2020-07-24
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項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
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2024/12/22 02時10分54秒現在
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夢落ちはあまり好きではないのですが、この感じの夢落ちはとても好みです。絶望的な雰囲気は感じましたが、同時にとても客観的な目線も感じる一節でした。
1最初、地下鉄の路線図、や列車の流れと人間の血管を巡る 血の流れを重ね合わせて、なにか 文章を描いてみたいと思っていたのですが、 イメージをメモして日がたつに連れ、 当初のイメージの印象が薄れていました。 やっぱり詩は難しい、僕にとっては、
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