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隅中の実存
無感動に曇った午前には 雀の泣き声も軋みみたいなもので 奴らは散らばったねじだ 通勤時間でもない 小数点以下でのゆらぎ 掃き捨てられるこの時刻には 社用車さえも通り過ぎるだけで 認識されないことでの沈黙 なにもかもが動くことを憚られる それは夜に在るような 死んでいく沈黙とは違う 固化していく重さ 秒針が静止している その刹那に 家主が留守にしている部屋では 扉が閉まりきっておらず カーテンが弱く発光しながら 微生物みたいな埃が膜を張っている その 薄暗さの 中には なにもいない
隅中の実存 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2447.9
お気に入り数: 4
投票数 : 0
ポイント数 : 17
作成日時 2020-07-05
コメント日時 2020-08-08
項目 | 全期間(2024/12/31現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 3 | 0 |
技巧 | 6 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 4 | 1 |
総合ポイント | 17 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.5 | 1.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 8.5 | 8.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
一時期、渡辺君の作品は低調期が明らかにあったはずだが前作、そして今作を観てその低迷期を抜け出した印象。言葉の使い回しや繋げ方は独特なのだが不自然さがなく渡辺スタイルとでも言うべきものを確立している。全体として美しいトーンで描かれているが、渡辺君が時折見せる生命感のなさ、身体性の欠如のようなものを感じまたそれが効果的である。ビーレビは画像投稿、動画投稿で様々な試みがなされているがテキストのみで勝負したこの作品にはかなりの自信があったと思われる。そしてそのことに納得の出来映えでした。
1とても斬新な表現ですね。その中には何かあるような気がしました。
0stereotypeさん いやこれも3年ほど前の作なんですけどね。ただ、テーマやネタに依らず純粋な言語表現へ至れたエポックメイキングな作品ではあります。 >生命感のなさ、身体性の欠如のようなもの これは意識していますね。しかし、こういうのって現代詩壇の流行りじゃあ無いんですよ。今はもっと、詩中主体が確立していて、さらにその者が何かを申す系の詩がもてはやされる。つまりは皆共感したいんだよ。私の詩には共感対象となるようなものが存在しないから不遇。
0戸ヶ崎朝子さん ありがとうございます。
0わぁ。好きです。平日の朝のあわただしい時間が過ぎた後、ふと訪れる静けさかなぁ。そこにポツンと自分がいて、なんだか自分がその時間の「異物」のような、もうひとつの世界からスリップしてきたような違和感みたいのを感じる瞬間がありますね。すべてが不気味に感じられて(或いは想像が飛躍して)、実際はなんということもない風景に意味があるような気がしてしまう。でも、なんにもない。不気味なんだけど、ほっとする感じもあって、この何とも言えない読後感が心地良かったです。
1渡辺くん、えーやないか。全然えーよ。他の投稿者と比べて質が↑。格段に上。おれはあんたのことが嫌いだが、この詩はなかなかどうして。
0あんたのことは嫌いだが、才能あるからやっちまえ!
0「なにもない」ことがなにもないこととしてきちんと在る、というなにもなさの手触りが言葉を通して明確になっていると思います。掌を描くためには掌の周りの空間を描くということを聞いたことがありますが、周囲の具体的に知覚できるものを書くことで捉えにくいものを浮かび上がらせるのに成功している。やるなあ。
0杜 琴乃さん 気に入っていただけたようで何よりです。 隅中はまさに午前10時頃、朝と昼のインターバルです。何物も活動が鈍く、しかし止まっているわけではない。特に平日だと、そんな時間に居る自分への異物感はいっそう強くなるんですよね。
1アリハラさん 絡みらしい絡みもなかったのになぜ嫌われているのかがよくわからないが、まあいいでしょう。
0藤一紀さん >掌を描くためには掌の周りの空間を描くということを聞いたことがあります ウィトゲンシュタインを思い出しました。語りえぬことには沈黙しなくてはならないが、語り得ることを語り尽くせばその余白により語りえぬことの輪郭をつかみ取ることができる。
1https://www.amazon.co.jp/dp/B08DKL1RNB/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_JqviFbSV7G39S 「月刊 ココア共和国」という詩誌の2020年8月号・Kindle版に「隅中の実存」が掲載されているようです。電子版だけなのでそこまで良いわけじゃあないですが。評価なんちゅうのは場に左右されるもんでしてね。いやさ、別に貶めるわけではないけど、「ココア共和国」に「隅中の実存」なんて、まず音からして合わなそうでしょ。だからさ、ビーレビであまりよい反響を得られない人も気を落とさないでね。別の場所なら輝ける可能性はいつだってありますから。
1今日は。渡辺八畳さん。パソコンが苦手でやっとコメントの読み方がわかるようになりました。「心は理屈じゃない」にコメント有り難うございました。 「隅中の実存」、タイトルの斬新さに驚きました。丁寧な表現ですね。御挨拶が遅れて申し訳ありません。これからもよろしくお願いいたします。
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