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エゴ・エリスⅡ
前置き これは瀆神に非ず 篤信の祈りなり。 愛に憧れたさる娘が、 傾倒と幻想の末に見いだした 祈りの散文である。 故にこの書に法則は無く 拘束も無く また侮辱を受けるに値しない。 ダビデの子よ あの魂たちを祝福し給え。 コラジンの娘を ベトサイダの乙女を。 ソドムの貴公子を ゴモラの乞食を。 我と 汝のパロに仕える兵士達を。 そして このノドの地に咲く 不毛の花々を祝福し給え。 その愛は必ずや御身の意に添うであろう。 エルサレムの娘達よ 嫁ぐ花婿を見るが良い。 夕闇に浮かぶ死者の如きその頬に口付けてみよ。 シオンの山の樵夫達 迎える花嫁を見るが良い。 泥濘に嵌り 蛆を蓄え 蝿を飼うその髪を 撫でてみるが良い。 正しき者どもよ その愛を今 謳うがよい。 過たざる者どもよ 汝らが入る その墓の 美しさを語り 騙るが良い。 我らは等しく汝らを祝福し 喜ぼう。 墓しか美しくない花嫁は 一切の化粧を捨てよ。 墓すら美しくない花婿は 一切の虚飾を捨てよ。 我らは墓の如き愛を謳い 死の花の恋を謳おう。 今まさに 我は汝なりき 汝は我にならむ。 共に歌え 結婚の祈りを! あの方が 私に口づけしてくださったらよいのに 馨しいもの 此岸の破邪の 弓矢に似て その瞳 映る銀河に 命なく その耳は 己が愛の歌を 弾き奏で その鼻筋は 谷間の百合より 透き通る その舌は 我が名を 囁きこそすれ その眼差 確かに我が心を射る にも関わらず おお 憎らしきは 神の定めた この無法 触れれば虹が 我らを分かつ 虹が 我が頬に 洪の裁きを下させ 私は叫ぶ 私は呼ぶ 私は抗い叫ぶ 我が愛 我が愛 終ぞ吾の声 聞き給わずや 私は泣く 私は泣く 私はすすり泣く 我が愛 我が愛 終ぞ果て給わずや 煌々たる光 その燦めきが 私の硝子を砕く 耳を覆う温もり その偽りに 太鼓は破け この舌は その名麗しく 果てまで叫び 喉は裂け それでもその唇は 罪に汚れる事のない無花果 おお神よ あなたは言った 「悪を避けて暮らせ」 悪無き世界に 飽くなき憧れを抱く それすらも罪だと 吊るし上げられ そのように愛が 仕向けたとは 認めはせぬ 吁々 愛しきお前 その唇が 七色に光るなら 何故この硝子に映る虹は かくも美しいのか この世にお前より 愛するものなどない この世にお前ほど 愛せるものなどない しかしてお前は 私を愛さず その富も愛も全て ただ一人に差し出す 赦せぬ 赦せぬ 赦せぬ己を赦せ 許せ 許せ 神よ世界から 切り離し給え お前の口付けは 七色の けしてヒトの 為せぬ口付けの色 涙を流すとも叶わぬ その頬の濡れることは その笑みは 慈悲深く 憐れみ深いが その憐れみは 全ての人に お前を愛する ただそれだけで 等しく皆に お前が居なければ 生き甲斐はなく お前を囲う為の 銀は堆く 私は届かずにいる 身を捧げ 心を尽して 時を費やして それでもお前は 気高く孤独 その精神は鋼 沙翁を通して 言うところには 神よ 人は皆役者 この世は舞台 ならば神よ 我が愛する人は 役者ですら ないのだろうか 神よ 何故我が愛に 身体与えなんだか その眼差しは青い光 その口付けは七色の虹 吐息の音はすれども 呼気の香りはせじ 愛し恋し 愛でれど愛でれど 意味はなく 愛の形は ただかみのみが計る かみよ かみよ かみよ 聞き入れ給え 我が愛を 我が胸へ 届けたまえ 恒河よりも深く 我が愛を愛そう 恒河沙よりも 多くの愛を 謳おうぞ だから どうか どうか 我が神 我が購い主 この愛は 世界の隔たりを越えるだろう かみの懐より 我が愛を召し出したまえ 我が愛への祈り 聞き入れ給え 我が神よ 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを 干ぶどうの菓子で私を力づけ りんごで私を元気づけてください 月が見ゑぬ 濡れ羽が広がつてゐる 爪櫛の如く 敷き詰められた 羽根が広がつて 一条の光すら無く 啼くや恋しき 鴦の吟を ぴいりぴりりと 唄つてゐる 此処は獄 永久に開かぬ 放たれぬ 見ゑぬ見ゑてる 見ゑる見えて 見たゐ見えて 歌う金糸雀 沈黙知らず 劈く声を ちいろちろろと 響かせる おお なんと愛らし 羽根であらう 小指の爪の 隙間にすら 侵されて 雪化粧のやうな この膚を すりやすりやと 撫でれば見える 此処は厩 畜生が棲む場なれば 人は暮らさぬ 見ゑぬ見ゑてる 見ゑる見えて 見たい見ゑて 干し草の かほりだけが 私を包むのを すうんすんすん 鼻を使へば 山見ゆる 何も見ゑぬ 故に汝が見ゑる 汝を見るに 瞳は要らぬ 耳と鼻と膚こそ在れ 愛するその聲 低く地鳴りのやうな 歌声を がふがふ唸つて 這つてくる 我が手は椛 脚は丸く 立つこと適わず 瞳開かずとも 御身に縋る 手と膝を使ひて 吁々 逃げらるるな 我が愛 奪ひ給ふな と ずろりずろろと 這いずり縋る 我が胸 未だ薄く 我が腹 未だ丸く 腰布を外すだけの 自制を忘れ 全て支配し給へ 粥一杯乳一滴 汝に任せやう あゝ あゝ あゝ あゝ 逃げれぬ逃さぬ 汝は我が仮初の母なれば 母は子を捨てぬ 捨てぬ故に 我は汝の子なり 母上 母上 我を愛し給ふ 我が眼球を 差し出し申した 愛すべき母上 その胸吸わせ その手で抱き給ふ 我が海よ 乳母よ乳母 休み時間は 終わり申したか 全ては一時の夢 稚児の児戯 愛しき母 仮初の母 今は我が友と 戻り給ふ 楽しき時 矢の如く過ぎ去る 幼子の時分へ ほんの戯れ 垣間見た 有り得なかった過去を その夢は また見られる 七日経てば その夢のため さもしひ世に 舞ひ戻り 机に縛られ 六日の間 老いてゆく 七日後 幼子に戻れると 希望を持ちて 崩れゆく 夢が崩れて 消えてゐく 何てこと 七日後 会ひに来ます 我が母よ 名も顔も知らぬ 我が兄弟を愛されし母上 七日目だけは 我が母に成り給ふ 偉人の顔を 数えて祈り ああ 恋しきは我が母 名も顔も知らぬ我が母 神よ 祝福したまへ 憐れなる我らを 私は 夜 床についても 私の愛している人を探していました 神よ もしも貴方に 恋したなら きっと多くの者が 割礼を望み 無地のヴェールと クロスと指輪 そして 三つの誓いを 立てるのです 神よ 私がそれを 望まなかったから 貴方は授けてくれました この人を私に 無垢な瞳と 口吻知らぬ 唇が そして 齢いくらかの 魂を持っている 貴方の与えたもうた この方は 私には美しすぎて 目映く白い 無情なるは裁き それは自然と人を忘れた そして 己が法こそ神なりと 憚らぬ 神よ 貴方が私に 愛を与えたなら きっと多くの者が 私に服を仕立てたがり 装うは 白一色の 晴れ姿 そして三度 私は酒を 口にする 神よ 貴方は私に 与えてくださった 多くの人の 憧れを 受けて輝き さんざめく賛美が 溺れるような恋が 神と我らに 与えられた この人の胸に ああ神よ 何故地にも 神を与え給うた 凶ツ星の行く先 我が姿 この池に映る 甘美なる我が神 私の元へ 来た神は 秘跡を持たずして 悦を与え得る 命萌ゆるよう 宇宙拡がるよう 沸く愛は 産声あげる その前から 我が泪へ融けよ 頬を伝って 音を奏でる 「ハレルヤ!」 この歌は 枕辺に沈まぬ 真なる香香背男 如何なものにも 不順わぬ 光の華 一等早く 光り輝く金星なれど なればこそ穢れぬ 我が天地を繋ぐ柱 神よ 貴方は私に 与えてくださった 我が心根は 渇くことがない 西比利亜の海が 遙かなりし 北の海が 飲み干せるほどの 悲しみに 遭うことはなかろう 最早私には 天地の終わりの過ぎし日も この星堕ちず 揺籃の中 私に応える 創造物は 私が死するとも 神よりも永く 知性の限り 遺ろう不動の 隠れ家 恐れる事が あらんとすれば それは退廃 ただ願うただけでは 届かぬ星は 収束に耐えれず 進むだろうか 死の淵へ ならば 嗚呼ならば 神よ 奪い給え この命まで 与えたまえ この星が星として 消え得ぬならば 私が連れゆこう 黄土の下の その国を 星を祭るため 羅闍の首すら 挿げ替えて 私が作ろう その星の為だけの 夜方国を 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを ああ わが愛する者 あなたはなんと美しいことよ なんと美しいことよ 無駄を絶った 貴方は清らか その足は 塵を蹴らない 無駄を取った 貴方は清らか その足は 穢れを蹴って 尚浄い 無駄を切った 貴方は軽やか その下は 永遠に熱くなる こはない 無駄を削いだ 貴方は軽やか そこは永久に 穢れることは無い 無駄を折った 貴方は慎ましい 悪戯な薔薇が 貴方に触れる ことはない 無駄を捩った 貴方は慎ましい その器は 沸き出で続け 壊れない 無駄を外した 貴方は愛おしい 震える身体は 体幹以外 どこも揺れない 無駄を引き抜いた 貴方は愛おしい 貴方に額づきたい その小さな身体の前に 無駄を抜いた 貴方は見目に良い ああ泣かないで こんなに愛しているのに 無駄を破いた 貴方は心地良い どうか歌って その声は 誰も聞こえない 無駄なものは もう何も無い 無駄を絶った 無駄を取った 無駄を切った 無駄を削いだ 無駄を折った 無駄を捩った 無駄を外した 無駄を引き抜いた 無駄を抜いた 無駄を破いた ああ 我が愛する者よ なんと美しい事よ なんと美しい事よ この達磨船で どこまでも行こう この船頭と 式場まで 連れ行こう 夕焼けに染まった この海を行こう あの大洋の向こうに 我らの住まいがある 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを 私の鳩よ 汚れのないものよ 私の頭は露にぬれ 髪の毛も夜のしずくで濡れている 見よ そこにて廻るは 肉付いた枯葉 揺れる花弁 それは指に 吸い付き離れない 羽根は重みを得て 歩く喜びを知る 風にそよぐだけの絹 脚を包んで 前へ出て 後ろ髪は 前へくりだし 踊る巫女 触れよ 拡がりゆく 蝶が見えるか 静寂は壊れ 歓迎の宴が 奥で始まり 生き物は皆 眠りより覚める 草は踊り明け暮れる 根と葉を使って 見た者は言う 「雛が孵るところだ」と 聞け 手向けられた 夕弔の花束 投げ込んだのは 織り姫と彦星 彼等が紐から 放たれている 唇のない者より 出ずる声 木の葉が 口吻を交わした音 含め そこは愛しい人の閨 厭う事など 許されない 神はそこを 祝しておられる 神が清めた 透気通る敷布を 掬って祈れ その口吻ならば 赦されるだろう と 埋もれよ そこは愛しい人の 身体の中 厭うことなど あろうはずもない その世界をずっと 待ち望んでいよう 無を吸い 有を吐いて 伏して拝め おお この愛し方には 邪魔なだけ 馬の鼻面程の 祝福さえも 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを あなたは歓喜の都市のように美しく 聖なる都市のように愛らしい 創造主よ 貴方は人に 想像を与えたもう その個性 宇宙さえも 造りあげる 交わらずして 子は増える 子は人たり 動物たり 建物たり 無機物たり おお かの者こそは 世界樹の 畔に生まれし 知恵の巨人が一柱 その生まれ変わり 芸術に愛され 神楽神愛せし その指先は優雅 その拳 鋳造の業 その胸 鞴神より強か 鉄砕き 地削り 火を練り萌ゆる 若芽の御魂 貴方が愛もて創られ 愛もて維持するこの世 節々を彩るは 人に与えられた 想像主と 人の器に 組み込まれた 小さな恩寵 巴里よ 見よ かの者汝の 地に聳ゆる 紐育よ 見よ かの女神は 地平を見ゆる 埃及よ 見よ 至聖なる王の 獣佇む ああ 世界はなんと 美しい 大きなもの 小さなもの 麗しき君々 愛づる価値を 見いださずして 愛されるべき 我が魂は震える 矮小にして 偉大なる神業 我が魂は踊る その心の弾み 永遠の閑雅 我が魂さざめく 抱くその腕 まるで花びら あれに見えるは 透き通った 石の羽衣 檜細工は 惹かれ合う 切り分けた半身よりも 油で出来た娘 立つのは 弾ける急流の水面 おめでとう おめでとう 貴方を造った 神々に誉れ歌おう その歌を持ってして 見えぬ者にも見て貰おう 止めて下さい 止めて下さい 父よ 彼等をお止め下さい 彼等は自分が 何をしているのかわかってない 人の手の 夢幻のうちを 比ぶれば おお 悍ましきは 紅蓮の手 塩の柱 貴方はなぜ 夢幻の如く 奪うのか 創造の御業真似る 御愛し子を 何故裁き 奪うのでありましょうと 嘆くことすら 罪と裁く この人の世を おお 打ち捨て 砕いて 焼き払う 我が愛を辱める 自由なる蛮族 大いなるうねりが 連綿たる 営みを廃する 彼等が尊ぶは 人の命 営みではない 彼等が尊ぶは 世の命 魂ではない 彼等が尊ぶは 生くる愛 我が愛ではない 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを ああ 私の兄弟のようであったなら 絢爛なりし 黄金と和紙の 観覧車 宙を回るる 風船の金魚 妙音振りまき 踊る鼓 胸乳の海を 泳ぎ渡らば 母の愛の ろ長調を 拾う耳翼の 夢心地 隣り合う家族が いたのなら きっと耳突く 泣き声も 聞こえることなく 一人勝ち かあさまかあさま わたしのかあさま 愛くるしい私を 愛してください 柔らかな私の 心を守ってもらおう か弱い私の 紅葉の手 守ってください 柔らかな頭蓋を とうさまとうさま わたしのとうさま かわいい私に 恋してください 和毛のような 髪を撫でてもらおう か細い私の 潰れやすい背骨 わたしにください 丘陵のような その胸を ねえさまねえさま わたしのねえさま いとおしいその唇 わたしにください 私の笑顔を 呼び起こしてもらおう 花瓣のような 掌で 白魚のような 指先で 歌って下さい 私の愛しさを にいさまにいさま わたしのにいさま 優しい笑顔で 笑って下さい 壊れたおもちゃを 直してもらおう ねじを回す 器用な指先で 作ってください 物語の欠片を こっとんと しるくの海に 母が垂らした 白波に 父が与えた 大岩に 姉が歌った 御伽草子 兄が作った 欠片を使い いつまでも私を 貴方たちの海の中で ずっとずっと 育たない私で 我を通す 幼い貴族のままでいさせて 大きくならない 小さな小さな 私の手 握って愛して 離さないで 私を永遠に ここでいさせて 私は永遠の 子供の夢 不思議な琴の弦は 決して狂わない 永遠の幼子 愛さる天使 永久の貴婦人から生まれた 処女の奇跡 神の使わした 男の子の似姿 住まいは天の国 永に私は 天のもの 穢れを知らぬ 罪の子ども 厠に行かず 乳を飲む子 父なる者らの 幻想 ただ一つ私に 許されないのは 汚れること あなたがたのために 幼子でいましょう わたしのために 幼子でいましょう 母だけを 育む試練に追い落とそう 神は母だけを 救われる 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを 私の愛する方は、 自分の庭、香料の花壇へ 下って行かれました 八〇一本の 薔薇が咲き 桃色の白百合 花開く 季節はなく 花を愛でる 心一つで その楽園は 客人を招く 苗木は優しく 土の布団に寝かされ 愛らしい花芽を 待っている 純潔のきゅうこんは 土を被って 対のきゅうこんを 待ちわびる 麗しき恋人に 送るため 花摘む人が 腰下ろす 薔薇の棘は 柔らかく 百合の香りも また柔い 愛しき人よ 貴方を飾る この花は 愛しき人よ 貴方に贈る この花は 愛する心それだけで 育てられました 愛する人よ 貴方を抱きたい 愛する人よ 貴方を守りたい 庇護願う鋏で 揃えた切り口 愛する人よ 貴方がこの花束を抱く 愛する人よ 貴方がこの花束を生ける その腕に器に 私は倣おう 愛する人よ 月来香は咲く 貴方の為 愛する人よ 氷人達は囁く 貴方の為 愛より少ない花よ 我が愛を護り給え 愛する人よ 貴方に贈る この花を 愛する人よ 私と思って この花を 御伽の国への目印に 枯れない愛を 愛する人よ 愛する人よ 神に愛された 麗しき我が恋人よ 腐臭には 千年木の香りを 嘲弄には あまりりすの耳飾りを 貴方の傍で 咲きますように 私の命で 育てた花に 貴方の心を 慰めさせてください 私に愛された 気高き我が恋人よ 貴方が神の腕の中で 眠る床 そこは私が 蝦夷菊を植えたところ うきよの全てを忘れて お眠りなさい 朝 太陽が昇ろうと そこは安寧の闇 夜 月が隠れようと 溢れる希望の光 私を愛する 修羅の道行く我が恋人よ 私を送り出してくれた あの花を もう一度私に大霍香薊の寝台を その花に託された 花言葉と共に 空を舞い 駆けていこう 愛と共に そうして我らが 再会した日 その日こそ歓びの日 感謝を歌おう 楽聖と共に 我らの愛を 誰もが歌い 我らの愛を 誰もが祝い 秘跡は我らを 祝福し あの世の誰よりも 我らは幸い この世においては 我らはふうふに いつかこの幸せを あの世の人が 認めることが 出来たなら 誰もが知るだろう 神の愛の深さ されども人が それを拒むなら 今は神の元でだけ 幸せになろう そうとも我らは 神の子である 我らは結ばれてから 母の胎に宿る 神はこの婚姻を 待っておられる 自由なる愛を 叶えよう 神がそれを 望んでおられる 異なるものだけでなく 等しきものも 神の愛を讃えよう 誉れ高き 愛を歌おう 何人も冒し得ぬ 愛を叫ぼう 神がそれを 望んでおられる 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを なんと美しい事よ 貴方の目は鳩のようだ ああ 貴方に焦がれておりました 人の世に刻まれた 汚辱の烙印を 受けて尚輝かれる 神に愛された御方 貴方への愛は 神の反逆者への賛美と 多くの人は貴方を呪った おお げに恐ろしきは 人の業で あることよ 己の中の炎を 藁で隠した 対岸の火事を見て 酒を飲み 地獄を嗤う者 燃え上がる火柱を見て 恐れ戦き 狼狽えれば 己が罪を披露して 神に祈って 悦に浸らんと おお おお おお! 勇ましきや 人の業よ! 私が苦しんだとき お前達は何をした 私が悲しんだとき お前達は何をした そして私が嘆いたとき お前達は何をした 罪を咎められ 神からの賜物を 侮辱され なお求めた安らぎに 背を向けて おお おお おお おお! 悍ましきや 我が兄弟たちよ! 天の炎で 黄金に変えられよ その誇れる罪を数え 一五〇の 薔薇の蕾が 罪を表わす 神に赦して もらうがよい さすればこの罪 最早数えまい 今となっては 赦される確信に 満ちた神の鬼子よ その舌抜かれて 苦しみを受け 悔悛の涙で 首を締めて 道行きを共に 歩くが良い 主は 罪人の為に 十字架にかけられた ああ 神の反逆者なる 貴方は 「神はお許しにならない」 と 言われる私に 慰めを歌って くださいます 後の世の人々が 祭り上げた 偉大な聖人達 彼等の手を借り 私の手首に 釘が打たれた ああ我が同志 神への反逆者なる 罪状書は 増えて増して 刻まれる 私が神を愛する度に 我が賛美 侮辱して尚 民の憎悪 限りなく 神のご計画だと 認められない 愚かな兄と姉 悲しい人 賜物一つ 信じられぬ 不信心者は 仮初の姿を 与えられた 我が先達よ どうか私の裏切りを 祝福して下さい 追い出された羊 不順わぬ羊 我らは茨を被る 羊の皮を被った狼に 狼を友とする羊に 貴方は慰め 神の子を裏切り 尚愛された 諸々の 故き文士の あるところには 貴方の芸術が生まれ 人はそれを愛すのに 今を生きる私の愛は 辱められる ああ 偶像を愛する 盲目の羊たちよ 聞け 人のあらゆる 姿を見よ 神の愛した罪を ああ ああ ああ! 我が罪なる兄君 我を連れゆき給え 「会う資格などない」 そう言って 私を追い出した 共同体を 我が主に引き合わせたもう 罪人の頭にすら 会わせぬと言われた この呪われた信仰を 祝福し給え 「兄弟ではない」 そう言って 私を追い詰めた 共同体を 私の代わりに祈り給え 我が主が裁かぬよう 呪われた無花果の如き 共同体 収穫を待たずに 麦を刈り取る 愚か者め 主の愛を 都合良く軽んじ 悦に入る者達 一度は受け入れた 我が兄姉は醜く その軽蔑を 恥じることを忘れ 神に近づく 研鑽に 陶酔する者達へ 去れ! 去れ! 去れ! 悉く去るがいい! 汝が罪を 愛するならば 我が罪をも愛せ 汝が隣人 を愛するならば 我が隣人も愛せ 汝が主に 祈るときには 我が主にをも祈れ 汝が名誉を 護るのならば 我が名誉をも守れ 貴方方は 知らないのですか 主は万人を 受け入れて くださいます 貴方方は 忘れたのですか 主は万人を 愛してくださいます 主は万人の中から 私だけを除くことは ございません 貴方方は主を 愛していないのですか 貴方方の主が愛する私を 何故憎むのです 貴方方は主を 疑っているのですか 貴方方へ使わした 私の主は 神でないと言う その理由は 私が鳩を愛したから その理由は 私のこれらの愛への 祝福 貴方方はばかなのですか 何故貴方方が 受けられる 恩寵を この方達には 受け入れないのですか 彼等彼女らが 愛し合う事を どうして自分の徳に してしまうのですか 貴方方は ばかなのですか 神が愛するように 貴方方だけが 愛される どうしてそれを 信じられるのですか 私の見つけた この鳩は 尊いです この鳩なくして 神の愛は語れない 私の見つけた この愛は 尊いです この愛を通し 私は学んだ 彼等から あなたがたは ばかなのですか どうしてこの愛に 唾を棄せるのですか この愛を与えてくれた 我が神の愛が 何故貴方の神の 愛でないと 言うのですか 主は万人の神 誰一人として 零さない 太陽を好む者には 太陽として 月を好む者には 月として 金を好む者には 金として 悪を好む者には 悪として 万人の 愛するものの お姿を とっている あなたがたは ばかなのですか 太陽を好む者が 何故主を愛さないと言うのか 彼は太陽の 力強き御姿を 讃えるのに 月を好む者が 何故主を愛さないと言うのか 彼は月の 温もりの腕に 微睡むのに 金を好む者が 何故主を愛さないと言うのか 彼はその力で 弱きを助け 愛するのに あなたがたは ばかなのですか 悪という状態を お認めになった方が 悪ということすら 利用して その人を救い その人を導いて 悪という徳によって 神を愛するのに 貴方方は 悪と裁いた人の 愛し方を愛さない めくれ めくれ めくっていのれ 主の愛を 一人占めすること勿れ 最も愛された 幾億の人を 押しのけることを 主は喜ばれない あなたがたは ばかなのですか 主を独占したい そのあまりに 目が曇る 貴方を愛するように 貴方の敵を愛する主を 何故貴方方は愛さないのですか 貴方もまた誰かの敵で 私もまた誰かの敵で そんな私達を 主は愛して下さるのに あなたがたは ばかなのですね おかわいそうな あなたのため 祈りましょう あなたが私を 告発するように 私はあなたを 裁くように 祈りましょう 私の苦しみを 否定した貴方に 主が報いて 私を慰めてくださる 盲目の あなたのために 祈りましょう あなたが私を 闇に追いやるように 私は貴方の光が 隠れるように 祈りましょう 私の光 私の主を 穢した貴方に 我が主は自ら輝き 白く清められる 聾唖のあなたに 聞こえるように 祈ります あなたが私の聖歌を 大声で消したように あなたの嘆きが 主に届かぬように 祈ります 誰の慰めも 聞こえない 静寂の中に 貴方の敵の私が 慰めのため 遣わされます 神よ 私を恨む者達に 私を使わして下さい 神を 悪を憎む者達に 私の悪を お使い下さい 日毎示された 道に従い 私は貴方が愛した私の敵を愛しましょう 憎み呪い恨む私の敵を 貴方は愛すでしょう 聖なる幻想の罪から 我らをお救い下さい その為に どうかどうか わたくしをお使い下さい 私は貴方のための悪 この先誰にも愛されない 私は悪 貴方が定めた悪 それは私だけの恩寵 神よ 祝福したまえ 憐れなる我らを 従者の祈り 其は虚慢に非ず 神より賜りし巨万の富。 見よ 見よ 見よ この恋人達を見よ。 麗しい愛の女神に捨て置かれ 馨しい花の女神に朽ち果てられ 尚も花実の生らぬ念いに 身焦がす我らに 鎚を振るうてみよ 神槌でもって打ち砕こう。 鑓を投げてみよ 神鑓でもって打ち払おう。 みよ みよ みよ この恋人達を撃ってみよ。 さすれば忽ち 己が身は神と為らん。 みよ みよ みよ 三代に教え 諭してみよ。 我らを裁く神を育ててみよ。 三千代のうちに その神は己が孫子孫を撃とう。 秩序に愛されし恋人達よ 無秩序と共に在れ 社会が示す光源よ 死の勝利者の恵みを導け いのちある全てのものは その乳房を吸わせよ 愛ある全てのものは 夫を護れ 花嫁ある全てのものは 手を引き 花園へ連れ その薬指に 鈴蘭の花で作った 指輪を通せ その時全ての恋人達は 等しく試練を乗り越え 神の御代が続く限り 栄えるであろう みよ みよ みよ その二人をみよ 最早彼等は恋人ではなく 一対の枝である 命の有無 体の凹凸 霊の所有 全ては無に帰し 水泡となる 泡沫の夢を越え 実る全てに 神の威光をみよ 即ち 何人たりとも 汝らの愛を侮辱すること能わず。 我は汝なりき 汝は我にならむ。 然るにこの愛は 汝と読者のものなりや。
エゴ・エリスⅡ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1774.1
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 8
作成日時 2020-07-03
コメント日時 2020-07-30
項目 | 全期間(2024/12/31現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 1 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 0 |
技巧 | 3 | 0 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 2 | 1 |
総合ポイント | 8 | 1 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0.3 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0.3 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0.7 | 1 |
総合 | 2.7 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
申し訳ありません。 長すぎて読み切れませんでした。 キリスト教文学を少しかじっていたこともあるのですが言葉も難しくつらかったです。 読み切れてもいないのにコメントとして書くべきかを迷いましたがとても想いを込めて書いていらっしゃるだろうにもったいないなと思い書かせていただきました。 しかし読み切れないのは私自身の程度が低いだけだと思います。 嫌なことを書いてしまいました。 どうかご容赦ください。
2こんにちは! 読み切れないですよねwww ただここの都合上、一度に出した方がいいかな、と、マネージャーと運営の中の方と相談しまして…。 これ、実は本になっておりまして、BOOTHから買えます。 あと、時々私が相方のキャスで全部歌ったりしてます。 よろしければ、ビーレビ以外のところで楽しんでくださいね!
1返信いただきありがとうございます。 そうだったのですね。 言われてみれば歌のような構成をしていますね。 気が付かずに失礼しました。 歌としても味わってみようと思います。
0凄まじい作品 矢継ぎ早に投げられる言葉に 異論を挟む余地もないです
0コメントありがとうございます! ん!? 凄まじい? 矢継ぎ早? 申し訳ありません、詩の世界はまだ1年生でして…あの、お褒めの言葉、ですよね?
0己が持つ業から目を逸さず書かれ、それだから美しい、と書かれていても違和感もなくよめます。流石に長いので再読は書籍で読みたいと思う。詩、て祈りだとあらためて考えさせられます。
0いつもご贔屓にありがとうございます! 冊子版ではフォントとレイアウトで、一芸しています。Web版では再現不可能なエゴ・エリスの世界を堪能してくださればと思います!
0畏い。 当たり前の作品ではないので当たり前の褒め言葉が浮かびませんでした。 傑作だと思います。
0かしこい! 当たり前でない! 傑作! そんなに褒められてしまったら、わたくし調子に乗ってⅢの発行を早めてしまうではありませんか…! こちら、冊子版にもなっておりまして、冊子版ではフォント芸とレイアウト芸とで、世界観を構築しています。あとキャスでも歌唱配信しています。 他の媒体での「エゴ・エリスⅡ」にもぜひ触れてみてほしいです!
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