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デュカットは静かだ
その背中には羽 曇天模様の空の下 ツバメのように飛ぶんだと 低く、ひくく 腰をかがめてそうっと進む ずしりと重いのは 右か左か誰の足 船が着いてかれこれ一時間は経っただろう。 上から下まで探したところで灯台には何も見 つかりゃしない。レイ・ブラッドベリが「音 を作ってやろう」と言った時から空想をやめ られない。何かが詰まったままのおもちゃの ラッパを吹くような、寝返りを打つとたまに 通る鼻炎持ちの鼻の穴のような、 音 教会のピロティはひとたびそれをとらえると わんわんと反響する。腕についていた毛虫を ゴムのパチンコで弾いてくれた男の子にお礼 を言えなかったと悔やむみたいにしつこく、 しつこく。だからここではあらゆるボールを 投げるのを禁じられているのに、 音 肺から出た空気がどのようにして息から声に なるのかは知らない。けれども声帯が弱まる と誤嚥が増えそうな気がしてこわいから目に ついた文字を手当たり次第読み上げていた。 「デュカットは怒りっぽい」とか「マッカー サーはお祈りをしている」とか、 音 彼らは忽然と消えたのではなく毅然として隠 れたのだとしたら。なんのために? ねえ、 後から来た灯台守たちはずっと賑やかにして いられたのかな? 楽器を鳴らしたり手を叩 いたり足踏みをしたりして。三人しかいない のに。三人しかいなかったのに、 音 それは少なくともデュカットじゃないよ。 彼は、ずっと静かだ。
デュカットは静かだ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1396.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-06-30
コメント日時 2020-07-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
2020.5.13 即興ゴルコンダ(仮)投稿 お題「デュカットは静かだ」の出題者はみずけーさんです。 コメント20個で本当に三作目が投稿できるのか確かめたくて投稿しました。
0何か不思議な余韻のある詩。饒舌体とも言えそうですが、イメージの噴出がそのままではなくて、ある種のメタな外枠の内側をなぞって居る様にも感じられました。
1エイクピアさんへ コメントありがとうございます。 こちらは2020.5.12 即興ゴルコンダ(仮)でみずけーさんが出されたお題「デュカットは静かだ」に書いた詩です。みずけーさんはお題を出される際に元ネタとして以下のURLを提示されました。 「アイリーン・モア灯台事件」 http://roanoke.web.fc2.com/foreign/Eileen_mor.htm そちらにある物語をもとに書いたのが本作です。イメージしているのは、アイリーン・モア事件を知って現場に肝試しに行った少年たち、だったりします。そんなことは本文のどこにも書いていないけども。笑。 そういえば朗読をSoundCloudにあげていますので、ご興味があればお聴きくださいな。 朗読「デュカットは静かだ」 https://soundcloud.com/user850776306/0i1eohkbo6tp
0詩を読むときにはあまり文中で使われている言葉を知らべないようにしています。 そうしなければついつい読むことを怠ってしまうような気がするので。 読み終わってからいてもたってもたまらず「デュカット」を調べてしまいました。 知らないことが世の中にはたくさんあります。 調べて変な印象がついてしまい、調べたことを少し後悔しました。 改行がとても印象的ですね。 こんなやり方があるのだなあと感心して読みました。 まとまらない内容で恐縮ですが矢も楯もたまらず書かせていただきました。 お読みいただきありがとうございます。
1こうだたけみさん、こんにちは。 読んでいて気持ちが楽になる文章だなあと思いました。 特にここの一連の流れは何だかおもちゃ箱をひっくり返したようで とても面白かったです。 >レイ・ブラッドベリが「音 >を作ってやろう」と言った時から空想をやめ >られない。何かが詰まったままのおもちゃの >ラッパを吹くような、寝返りを打つとたまに >通る鼻炎持ちの鼻の穴のような、 > 音 ぼくはアレルギー持ちなんですけど、 職場ですごく大切な会議中のときに限って鼻がつまっていて 思わぬ場面でピ!とか鳴ってしまうんですよね。 あれがすごく恥ずかしくて。 そういうことを思い出しました。 この連もとても好きです。 >彼らは忽然と消えたのではなく毅然として隠 >れたのだとしたら。なんのために? ねえ、 >後から来た灯台守たちはずっと賑やかにして >いられたのかな? 楽器を鳴らしたり手を叩 >いたり足踏みをしたりして。三人しかいない >のに。三人しかいなかったのに、 これは僕が詩に対して勉強不足なのかもしれないけど、 よくお見かけする「詩」はたいてい何か消えていくことが多くて。 たぶんそれは、大切にしていた何かを失う情感みたいなものを 文章にする人が多いのかなと思うのだけど、 正直、そういうの飽きたなあと思うこともあって。 この作品は、「いるけど見えない・隠れている」 そういうことを文章にする人って意外と珍しいんじゃないか、 そういうことを感じました。 やたらと切なかったり悲しかったりする文章も良いですが、 なんだかちょっと笑ってしまうような、 この作品が持つ「軽さ」に引きずられて ぼく自身の体も楽になったような気持ちです。
1かずやさんへ コメントありがとうございます。 調べてしまいましたか〜。うひひ。 タイトルの「デュカットは静かだ」は、即興ゴルコンダ(仮)という即興詩のサイトで出たお題です。出題者のみずけーさんが、エイクピアさんへのコメント欄に貼ったURLを提示されていて、私はそれしか読んでいないのだけども「このお題、絶対書きたい!」ってなって書いたのが本作です。 かずやさんがデュカットについてどんな知識を得たのかはわかりませんが、私は「アイリーン・モア灯台事件」をとても魅力的な物語だと思っています。こういうネタをどこから仕入れてくるのかたくさん持っているのがみずけーさんで、みずけーさんの書く作品も私はとても好きです。ビーレビには参加されていないのでゴルくらいでしか読めないけども。 > 詩を読むときにはあまり文中で使われている言葉を知らべないようにしています。 そうしなければついつい読むことを怠ってしまうような気がするので。 私はまったく逆で、これはなんだろうと思うと速攻で調べます。そして、作者が意図していない意味まで盛り込んじゃったりして勝手な読解をしていきます。もちろん時々は作者に怒られますがとてもたのしいです。なぜなら、自分の知識だけで読んだ時とは作品の見え方が違うから。 よく、「他人のことは変えられない」と言ったりしますがその通りで、自分に変えられるのは自分だけです。作品の見え方が変わるのは自分が変化したからですよね。変化するのってたのしいですよ。 そうそう、私は高校で演劇部に所属していて役者も少しばかりやっていたのですが、演劇の稽古場は、人間の変化するその瞬間を目撃できる奇跡みたいな場だと思っています。 稽古をしていて、演出や他の演者、スタッフたちがダメ出しをします。何度もそのシーンを繰り返すけれどもどうもしっくりこない。 「この台詞、こう言ってみたらどう?」 「わかった、やってみる」 「じゃあいきます、はい!」 誰かのたった一言で、ガラッと役者の演技が変わる。ゾクゾクします。この役者が自分だったりしたらもう、その魔力にやられてしまいます。どうやっても変われない人もいるし、しょっちゅう出合える光景ではないのだけれど。 そんなわけで、私はもうずいぶん長いこと演劇には関わっていないのですが、いい芝居を観たりすると発作的に「芝居やりたーい!」ってなります。ああ、芝居やりたい。笑 改行をおもしろいと思われたようですが、そんなにたいした技術ではありません。まあ、私のように簡単に多用する人は少ないけれども。 かずやさん、たくさん読んで、どうぞ変化をたのしんでくださいね。
0横山はもさんへ コメントありがとうございます。 この作品が軽いのは、おそらく私の性格のせいです。そりゃ落ち込むこともあるけれど、ドーンと落ちてめっちゃ泣いたりしてみた後に少し回復してきたなーと思ったら、よく寝て、たくさん笑って、たのしい気持ちでいるほうが生きているのが楽だと思うから。 きっとはもさんは本作だけを読んでたのしんでくださったのですね。 もしご興味があれば、というか、せっかくの好もしい印象が台無しになってもよければ、エイクピアさんのコメント欄に貼った「アイリーン・モア灯台事件」 とSoundCloudの私の朗読を聴くと、全然違う印象になると思います。ある意味でおもしろ体験をされたかったらぜひに。 > ぼくはアレルギー持ちなんですけど、職場ですごく大切な会議中のときに限って鼻がつまっていて思わぬ場面でピ!とか鳴ってしまうんですよね。 私も花粉症がひどいので秋から梅雨の頭くらいまでずっとぐずぐずしています。そうか、私の鼻が通ってるのって夏だけか。どおりでいま楽なわけだ。笑 こういうごく少数の人だけが「わかるー!」ってなることをこっそり混ぜると、それが刺さった、普段は私の書くものを読まないようなめずらしい方などから「いいね」と言っていただけたりして、実はうれしかったりします。
0面白いですね。 私のようなものに沢山コメントを書いていただきありがとうございます。 間違って伝わるような書き方をしてしまったなあと反省をしております。 私が調べないのは「詩を読むとき」と「本を読むとき」まさにその時だけでありまして。 やっぱり読み終われば調べるのです。 そしてその後に変わる自分を楽しむのです。 きっとこうだだけみさんが書かれていることと近しいのではと思います。 それと私は「デュカット」を間違えて調べてしまいました笑。 てっきりスタートレックのキャラクターかと…。 反省して勉強し、精進します。
1かずやさんへ 再度のコメントありがとうございます。逆に長々と書いてしまってもうしわけないです。簡潔に述べるっていうのが苦手なもので。 > 私が調べないのは「詩を読むとき」と「本を読むとき」まさにその時だけでありまして。/やっぱり読み終われば調べるのです。/そしてその後に変わる自分を楽しむのです。 ごめんなさい、てっきり「創作するのに他人の創作物を見ると影響されるから一切見ない」主義の延長線にいる方なのかと思いました。大変失礼いたしました。あ、そもそも私の詩を読んでくれているじゃないですか。あわわ。 デュカット違い。とてもいいですね! 実は私、6月の選考委員をさせていただいていて、たったいま個人賞の選評を書いているのですが、まさに勘違いの話を書いております。もしよかったら公開された際にはご笑覧くださいな。
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