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ホログラムではないノラネコ
馬鹿でかい入道雲が控える空の真下 心がむしゃくしゃしたから 駐車場を自転車で爆走してやった 車が歯抜け状態だから ジグザクシャカシャカ 縫うように漕ぎまわるのだ 見えないセミが鳴いていて 汗がアスファルトに点々つけてゆく そしたらば、出会った 唐突に目があった まるでここらの主のよう 耳から尾まで一辺倒に黒い 真っ黒い猫だった 入り口から一番遠い緑フェンスのこちら側 置き物みたいに横たわってた 距離にして10メートルほど離れていた 「暑いから、さっさとお家に帰りな。」 声がしたのでUターンかまして 陽炎たなびく駐車場をあとにした いつからか息は切れていた ー明日ここに来ても、もういないだろうな。 高まる高揚は蒸し暑さをかき消していた 思考は下り坂を下るように加速していた ーあれはホログラムではないぞ。 技術だけが突き抜けてしまった世界 あまりにも閑静な灰色住宅街で 大人たちが気を狂わせないように 彩る自然がホログラムとなっていた 名前の知らないかわいいお花 乱雑模様で隙間に立つ草木 健全な子供たちの笑い声 無論 自由気ままなノラネコも みなホログラム、立体的映像娯楽 人工的触れられない非人工物 しかし ーしかし、あいつ喋りやがった。 きっと、きっと、数百年前に絶滅しちまったホンモノのノラネコに違いない! 二度会えないなら幻と相違ない、が、 そもそもノラネコとは 世界の端っこの小さな小さな奇跡の一つ 虹や流星や稲妻と同じ種族 決まりきった時間や場所や形はないのだ 馬鹿でかい入道雲が控える空の真下 むしゃくしゃした心は もう十二分に潤っていた どこまでもこの街を 自転車で駆けぬけてゆく
ホログラムではないノラネコ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1208.7
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-06-03
コメント日時 2020-06-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
自然が無くなった未来のお話なのかなと思いながら読み進めました。ホログラムの世界の中で突如と現れたホログラムではない真っ黒い猫。 >「暑いから、さっさとお家に帰りな。」 この一言で黒い猫がホログラムではないと察知する辺りが面白いです。 しかし、私はノラネコっていつも同じ縄張りで、じーっとしている印象を持っているので、またすぐに出会えるような気もしました。
0思いのほか、大きな世界観の作品でした。 んー、超未来のお話で、この街には大人しかいないように読めますね。そもそも大人しかいない未来なのか、それとも、瑕疵の無い健康体に育てるために子供達を無菌温室育成しているのか。この先、死ぬことが無い未来になれば、子供を作る理由がなくなる、そんな考え方もあるかも。星が飽和する前に、宇宙船の開発をしなければいけませんね。 事実は小説よりも奇なりとも言いますし、これ以上に奇天烈な世界が作り上げられているのかも。 面白かったんですけど、個人的には、物語として書く小説のような散文作品で読みたくなる内容でした。
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