お弁当箱には貰ったおかずだけが輝いていた - B-REVIEW
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ことば

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お弁当箱には貰ったおかずだけが輝いていた    

 「成功して幸せになろうとするな、幸せなやつが成功するんだ」的な事を昔、哲学者だったかが言っていた。壁を這う蜘蛛はふらふら歩いているように見えても、雑把に見ると壁の端から端に真っ直ぐ歩いていた。こういう生き方が理想だった。そして気に入った場所にとびきりの栖をたてる。そういう生き方を人生と呼ぶのだと、そして私も、当然のようにその"普通"を享受するものだと思っていた。  まだ青いと言われていたあの頃の春には、名ばかりな大志ぐらいは持ち合わせていた。自分もセンス良く生きたくて、誰かが「かっこいい」と言ったものを「かっこいい」と言い、誰かが「かわいい」と言ったものを「かわいい」と呼んだ。そんな、にわかな繋がりが増えるほど、はっきりとした裏切りも増える関係性が、私の交友関係を席巻していた。  思えば少年少女時代に植え付けられる道徳は、反抗も従属も、良し悪しは別にして、選択させることに道徳の意義があったのかもしれない。教科書に出てきた車からゴミを捨てた男のことを今も覚えている。彼はもちろん糾弾された。教科書の男だけが、その教室でマイノリティでいられた。  メランコリーって単語を入れておけばかっこよくみえる些細な詩に、憂鬱な気分になった。気付いたら皆、かっこよさそうな、誰も知らなそうな、綺麗なカタカナを使っている。その、孤独っぽい感じはどうやって手に入れるのだろう。今まで「嫌い」と言われたことはないけれど、「好き」と言われたことも同じぐらい無い私。私は私の主人公ではなかった。かと言ってスピンオフで主役になれる名脇役でもなかった。 ときに時間は巻き戻る 何かを確かめるように ときに血は遡る 何かを見つけるために 精一杯、目一杯、生きた「私ごっこ」 二十歳になった年、馬鹿みたいに寒い時期に大勢の顔見知りと一緒に「これからあなたは大人です」と宣告された。特に悲劇のなかった私の人生において最大の喜劇。顔見知りとの2次会もずっと昔話に終始した。何人かから"思い出"と呼ばれる物語を聞かされるたび「ああ、これが大人か」と思っていた。


お弁当箱には貰ったおかずだけが輝いていた ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 6
P V 数 : 1919.7
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 4

作成日時 2020-05-16
コメント日時 2020-06-05
#現代詩
項目全期間(2025/04/11現在)投稿後10日間
叙情性21
前衛性00
可読性21
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント42
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性00
可読性11
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合22
閲覧指数:1919.7
2025/04/11 13時09分26秒現在
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    作品に書かれた推薦文

お弁当箱には貰ったおかずだけが輝いていた コメントセクション

コメント数(6)
Um Fantasma
作品へ
(2020-05-19)

あっすごい生意気なこと言うんだけど もっとシンプルに書いたほうがいいかも サービス精神がなんとなく裏目に出てる感じがした 前の作品もポップでよかったんだけど というのは戦友さんのVoiceはポップな感じがして ポップさって才能だと思うんだ でもやりすぎると甘くなるから ちょっとお砂糖を減らしたり お塩をいれたりすると ずっとみんなに届きやすくなると思う

1
一足遅れた戦友
一足遅れた戦友
Um Fantasmaさんへ
(2020-05-19)

Um Fantasma様 ご指摘ありがとうございます。 前は思った事をそのまま書いていたりしたのですが、別の方に構成等についてアドバイス頂いた経験もあって 頭使ったつもりだったのですが、さとられましたか。 精進します。 お読みいただきありがとうございました。

0
夜野 群青
作品へ
(2020-05-19)

過去の作品も拝読しています。 (それらのコメントについては未読) 何度も云うか云わざるか、悩んだのですが筆力のある書き手だと思うので云うことにします。 最果タヒに似ているな、が第一印象でした。詩を書く人間でこの作家を知らない人はまずいないだろうと思うのですが、最近色々な場所で、よく似たスタイルの詩を見かける事が多くなりました。 それだけで埋もれてしまうと思うんです。 今すぐにスタイルを変えるなんて出来ないと思います。これから先どんどん書いていくうえで、一足遅れた戦友さんの詩が、必然性をもって進化していくと良いです。 それを読みたいと私は思いました。 何様だ!とご立腹されたら、申し訳ありません。辛辣だと思います。 私も自分にしか書けない詩を模索している道半ばの身です。 一方的に感想を書いているので反論もあると思います。その場合はぜひ聞かせてください。よろしくお願いいたします。

1
一足遅れた戦友
一足遅れた戦友
夜野 群青さんへ
(2020-05-19)

夜野 群青様 過去作ともども お読みいただきありがとうございます 私の現状を説明すると、今まで生きてきて思うところはあったのですが、作品として出力するのはここが初めてで、とりあえずコンスタントに作品を作ることを目標にしています。 最果タヒさんももちろん知っていて好んで読んでます。タイプ分けするとなんとなくその分類になるのはわかるのですが、気持ちとしては ルールがわからない世界だったので(専攻は理系です笑)思ったことを連ねたらこうなりました。 今は思いの外アドバイスを頂けるケースが多く楽しくなってきたところです。 立腹なんてとんでもない。私なんて道半ばどころか、これから道を探すところです。今後ともアドバイス頂けると幸いです。

0
藤 一紀
作品へ
(2020-06-05)

もしかしたら作者としては特に注意を払わずにひょいと置いた語かもしれませんが、 >「これからあなたは大人です」と宣告された。 にある〈宣告された〉は語り手の状況をビシッと言い表していてよいと思いました。

1
一足遅れた戦友
一足遅れた戦友
藤 一紀さんへ
(2020-06-05)

藤一紀様 お読みいただきありがとうございます。 ある程度歳をくって"私"がパッケージ化された時に "私"を構成するものが、誰かがかっこいいって言ったものだったり、誰かの人生における格言だったり。自分で生み出したものが何一つない時それは本当のあなたですかと問いたかったのです。 ただ、パッケージ化、つまり"私"が確立された時にはほんとんど「もう身動きがとれないな」と諦めていて、、、 まだ自分探しをしていた過去に羨望して語っちゃうんですよね武勇伝。

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投稿作品数: 1