別枠表示
腐ったこーひー店
机が軋んでキイキイ自傷するので 私は静止して、目線は窓辺へ 白い靄に似た降雨の塵が 「都」たる誰かへ棲む欲望を 垂れ流し 果てて びちゃ 死体は道途に転がる者もあれ 大きく口を開いた排水溝へ行き着くもあれ ここは「腐ったこーひー店」 そろそろと忍び歩む 煙草の煙に抱かれる ティーカップを引き寄せると ティーカップのみが"カチャ"と鳴る 命の様に静寂なコーヒーを 啜る 小綺麗な縦長の小さなカレンダーが 本日を指し示すけれど ここに本日なんてありはしない 来客は全て五感を動員する そして皆ティーカップの存在を確かめる カップが薄く発光するひかり、 そこ一点だけ明らかに灼熱だ、 枯山水のマニュアルなんてない、 来客の誰もが総じて、 飲み干したコーヒーに手を合わせる、 煙草へ点火する 夕闇に溶けた店外から 篝火に照らされる戦艦が見える 一口残ったコーヒー、 を一気に飲み干す 瞳の閉じられた地球の瞼の裏側で 都を望んだ雨が海となったことに その時初めて気が付く 唇がヒリヒリと焼けている 眩いティーカップの光で生じたキズを さする
腐ったこーひー店 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1771.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 35
作成日時 2020-05-15
コメント日時 2020-05-30
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 10 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 0 |
エンタメ | 10 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 0 |
総合ポイント | 35 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 10 | 10 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 10 | 10 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合 | 35 | 35 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この詩の背景には、詩人の日常のひとコマ、具体的にいうと、机でモノを書き、一息入れるため喫茶店に行き、コーヒーを飲み、タバコを吸うという原体験があるはずだ。 そして、その日常はゆったりとじかんがながれ静かなはずだ。それは「静寂」「本日なんてありはしない」「雨が海となった」といった言葉で表されている。 だが、その静けさの背後には不安もある。 「自傷」「死体」「腐った」「傷」といった言葉がそれをあらわしている。 この詩に共感する読者は、この詩人と同様に、静かな日常に潜む不安を感じたことのある人だろう。そして、その共感を呼び込むこの詩人の繊細さが、この詩を成立させているのだろう。 ただ、詩人がまだ上手くこの不安を対象化し把握しきれていないため、この不安をあらわすメタファーが曖昧で、それが詩の強度を弱め、きのぬけた炭酸に似た、ぼんやりとした雰囲気を出してしまっている。 この不安をつかんだとき、この詩人が表現したい詩的世界は、読者により鮮明になると思われる。 今後に期待したい。
0ありがとうございます。 仰る通りです。特段変わらない日常の中に、グツグツと不安があり、一定数が感じるのかもしれない不安を描写したく、書きました。 しかしながら、その不安が何なのか、そもそもなにゆえ不安になるのか、その様な疑問を疑問とも思わずに書いてしまった節があり、このような中途半端な感じになってしまったように思います。 ご期待を頂きありがたく存じます。まずは疑問に思うところから、ゆっくり初めていきたいと思います。
0珈琲が平仮名になって居たり、腐ったと言う形容からかなり虚構性の高い珈琲店だと思うのですが、「都」とカギカッコに入って居たり、篝火に照らされる戦艦が見えたり、読んで居て愉快な感じのする詩だと思いました。そして興味深いのは4連目のカレンダーのエピソードで、ティーカップの存在を確かめる行為が、言語のリハビリの様にも思えました。
0ありがとうございます。 明らかに流れに似つかわしくない言葉を差し込んだりして、如何に興味を持たせるかといったことを意識しておりまして、好意的に受け止めて頂きありがたく存じます。コーヒー自体も概念として、仰る通り虚構性を意識して書きましたが、それを読み取って頂き幸甚です。
0