朝の跡 飲み干していく 死ぬ人
最期の食べ物 食べぬよう
生きる人 泣いて 生きる人 きりもみで
落っこちていくと 静物的で巨大でスロウリー
まるで港のような時間感覚で
船の見送りみたく
朝にテープを投げ ひっぱって
いつまでも切れなくて 手に残る傷
ぎざぎざした 手の傷は 癒えない
恥さらしは得意だから
得意は恥さらしだから
だから船は 朝という船は
いつまでも出航できないのかもしれない
テープが切れないし
見送りの客足も途切れない
朝へ手を振るだけでなく
無賃乗車する者も
波もない あるのは朝という船だけ
でもじきに 朝は消え舞う
朝はまぶたに濾過されて
(涙と吸われ)
そして舞い消える
春の嵐の音 飲み干していく 死ぬ人
犬の一大事 飲み干していく 死ぬ人
最期の食べ物 食べぬよう
生きる人 慌て 生きる人 苦手な人と
手を繋いだ夏
汗がいつまでも引かなくて
偽者だと ばれる夢(「嘘なんだよね?」)
手には犬のリードの跡
あなたと手を繋いだ夢をみた
君の言ってたこと ほんとのほんとだったね
(「これはジュラ紀の化石です」)
その手 強く 握ってて 滑るから
滑って滑って夏の昨日へ置いていかれるから
夏の昨日はすべての前日
戻れそうで
今はまだ戻れないから
すべてが今はほんとのほんとに
嘘だから
夏はこうじゃなかったと
苦手な人は言い続けるから
だから苦手なんだ
すべてはさらにほんとのほんとのことで
あれはただの石ころで
あるいは彫刻科の生徒の課題作品
つまり偽物だ!(「嘘なんだよね?」)
夏の一大事 飲み干していく 死ぬ人
全員が燐寸で燃やし 飲み干していく 死ぬ人
最期の食べ物 食べぬよう
生きる人 早く 生きる人 時間のかかる
夢をみた秋
陸橋から見た月 肌寒さ
昔にやめたたばこを吸うよ 結局 この夜が
最期だと思いこんでいたから
眼球 黄色い砂 月 しゅわしゅわ 星越し
遠くまで いったら いい
お前なんて知らない
泣かないで 僕が泣く
点々 ぱっ 点々点々 ぱっ
灯の蝋を首筋につけて ちゅっ
食べるもの 食べる人 秋の貨物列車の風
暗闇とぶ風の鳥の目
ずっ 鼻水吸う
忘れさせてくれ
枯葉を集めて
全員で燐寸で燃やし 飲み干していく 死ぬ人
灯油の花火 飲み干していく 死ぬ人
最期の食べ物 食べぬよう
生きる人 うまく 生きる人 夜が深い
長靴の底で
雪がいつまでも溶けなくて
さらさらする 靴下は 濡れない
雪が融けないから
融けない雪だから
だから長靴の中が湿って感じるのは
君の僕らの汗かもしれないし
おしっこかもしれない
降り積もり続ける雪
溶けることはない
だが 春はやってきます
深い夜のうちに
あるいは深い朝の木立の翳に
冬の花火 飲み干していく 死ぬ人
ああ もう食べるのも あきるなあ
作品データ
コメント数 : 19
P V 数 : 4763.3
お気に入り数: 4
投票数 : 0
ポイント数 : 53
作成日時 2020-05-09
コメント日時 2020-05-25
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 13 | 13 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 7 | 7 |
音韻 | 7 | 7 |
構成 | 11 | 11 |
総合ポイント | 53 | 53 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2.2 | 1.5 |
前衛性 | 0.8 | 0.5 |
可読性 | 0.8 | 0.5 |
エンタメ | 0.8 | 0.5 |
技巧 | 1.2 | 0.5 |
音韻 | 1.2 | 0.5 |
構成 | 1.8 | 1 |
総合 | 8.8 | 4.5 |
閲覧指数:4763.3
2024/11/21 21時05分20秒現在
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これは、大変な傑作であります。もっとしっかり読み、本当に意味のある言葉が十分に練られない限りは何も言うべきではないと思いますので、今はそれだけを記しておきたく思います。
4照れます。ありがとうございます。
0お礼を言うのはこちらのほうですよ。批評、ありがとうございます。
0何度も多宇さんの詩を音にだして読んでみたけど、不思議さは抜けません。 詩の構成に法則がありそうそうでいて、ない。(見つけられない) 言葉たちが重力から解放されて、なんて自由なんだろ。 「灯油の花火」なんて誰が思いつくでしょうか。 この詩を読んでグッときた方は、多宇さんの小説もぜひ読んで頂きたい。 (ニュー・ハートシェイプトボックスなんか詩の断片がゴロゴロ転がっていて、おすすめなんじゃないでしょうか?笑) > 眼球 黄色い砂 月 しゅわしゅわ 星越し > 遠くまで いったら いい > お前なんて知らない > 泣かないで 僕が泣く > 点々 ぱっ 点々点々 ぱっ > 灯の蝋を首筋につけて ちゅっ この部分、とても音が面白くて別の作品かとも見紛うくらい独立してると感じました。 詩の中に単独のお話が重ねてあるようにも感じます。あなた(君)との会話の部分など。 イメージがイメージを呼んで、無限に広がるようで、ずっと読んでいたくなります。 詩の良さを他者に伝わるように言語化できない自分がもどかしいです。 でも。この詩が好きだ、で充分かもしれませんね。
3感想寄せてくださって嬉しいです。 踏み込んだ解釈や小説『ニュー・ハートシェイプトボックス』の宣伝まで!! 感謝です。 この詩を好きになってくださってありがとうございました。
0「ながれとともに言葉がずれていくことで、妙なる音階を生んでいる」 「換喩的にずれていくことへの詩情の愉悦があり、そこに旋律がきこえて」 嬉しいコメントです。ありがとうございます。
0何度か読み直し、漸く何か言うべきことが頭に浮かんできましたので、本作の感想を述べます。 一読、誰にもわかるのは、この作品がクラシック音楽のソナタ楽曲を思わせるような、堅固かつ緊密な形式で構成されていることです。仮に、以下のようにこの作品の構造をアナリーゼしてみましょう。 ①第一主題「朝の跡 飲み干していく 死ぬ人」 ②第二主題「最期の食べ物 食べぬよう」 ③第三主題「生きる人 泣いて 生きる人 きりもみで」 ④主題と季節をモチーフとする自由な展開部 ⑤第一主題の回帰 上記のパターンが「春」「夏」「秋」「冬」の四季にわたって繰り返され、「ああ もう食べるのも あきるなあ」のコーダ(終結部)で閉じています。その点で見れば、これはソナタ形式の四楽章というより、歌曲や歌謡の1番、2番…というのに該当するでしょう。 また、第一主題と第三主題が2番(夏)3番(秋)4番(冬)で再帰するたびに必ず変化が加えられており、その変化が④の展開部に反映されています。上記⑤で繰り返される第一主題についても同様です。 構成の面のみならず、展開部においてもこうした「繰り返し」が巧みに活用され、読み手を惹き込む力となっているのが印象的です。第三主題そのものが「生きる人」のリフレインによって強い推進力を持っていますし、それぞれの連においても例えば、1番の: >恥さらしは得意だから >得意は恥さらしだから >だから船は 朝という船は では、「恥さらし」と「得意」の入れ替えによるリフレインと行末の韻により、実に強靭で印象的なリズムを生んでいます。同様に、2番でも: >その手 強く 握ってて 滑るから >滑って滑って夏の昨日へ置いていかれるから 「滑る」というモチーフのリフレインと「から」の韻により同様の効果を生み出しているのがわかります。3番、4番にもこのパターンが効果的に織り交ぜられています。 繰り返しとは「予測可能な動き」です。予測可能であるために、受け手はその動きに参加できます。歌や舞踊などに見られる通り、リズムや主題の「パターン」とは、受け手を動きに巻き込むために、この繰り返しの力を活用することです。 また、パフォーマンスの受け手は、繰り返しに身をゆだねる安心感と同時に、それとは相反する「変化」の要素を同時に求めます。これが巧みに行われれば、繰り返しは受け手の参加の度合いを深め、高揚感をもたらします。 筆者は、こうした繰り返しの効用を非常に巧みに駆使して、堅固な形式感を生み出すとともに、絶妙なさじ加減で繰り返しに変化を加え続けることで、パターンの繰り返しが陥る陳腐さ、マンネリズムを回避しています。そうした変化が恣意的で必然性が感じられなければ逆に受け手を白けさせるでしょうが、本作の筆者はむろん、そのようなヘマはしていません。 上記は外形を表面的になぞった分析にすぎませんが、これを踏まえた上で、本作においてまず称賛されるべきなのは、 1.のっけから読み手を惹き込むインパクトがあり、かつ4つのパートでの展開に堪えるだけの可塑性と強靭さを備えたすぐれた主題(上記①~③)を得た筆者の霊感、 2.それらの主題を四季の表題と絡めて柔軟自在に展開し、読み手を牽引していく筆力の確かさ、緩みのなさ、 3.結果として読み手に、芸術作品として「完璧」という印象を抱かせるほどの作品の完結性、完成度の高さ、 であると言えるでしょう。 ひとりの書き手としての視点からは、本作は全く文句の付けどころのない傑作です。まるで、ピアノの名手がショパンの難曲を楽々と弾きこなし、技巧の面でも表現や情緒の面でも非の打ちどころのない演奏をきかされたかのような読後感。 その上で、単なる詩の一読者として、読者には許されるであろう贅沢な注文をひとつだけ付けるとすれば、本作の堅固で緊密な構成には、読み手が己の想像や感慨を自由に遊ばせることのできる空間と時間が見出しにくい。俗な言葉を使えば「余韻」「余情」にひたる余地があまりないように感じられる、ということです。 むろん、各連の展開部で作者は自由自在でめくるめくような想像力を飛翔させており、読み手はそれを存分に味わうことができます。これは、決して本作が堅苦しくて息苦しいという意味で言っているのではありません。むしろ、作者のパフォーマンスの見事さに惚れ惚れしながらも、そこで自分が視るもの感じるものすべてが、名手の手の内でコントロールされているような感覚――とでも言えるでしょうか。これは全く一読者の勝手な感覚にすぎませんし、芸術作品が必ずそのような要求に答えるべきだとも思いません。あくまで、作者にとってひとつの参考となればという思いから、蛇足として付け加えさせていただきます。 以上、一向に要領を得ぬ長文にて失礼致しました。
2抽象的に見ている一連、具体的になる二連、小さな反転の生じる三連、再び抽象視点へと戻る四連という風に読みました。表現の仕方で、似た雰囲気の世界が連続しているように感じられますが、巧みに視点をずらしていっていることが、飽きさせずに読ませるところなのかなと思いました。全体には不思議な世界がまだまだ広がっていて、楽しいです。個人的には、 >夏の昨日はすべての前日 が、すとんと落ちる好きな表現でした。
1「その点で見れば、これはソナタ形式の四楽章というより、歌曲や歌謡の1番、2番…というのに該当するでしょう」そうですね。自分もこれには同感です。深いところまで踏み込んだ解説、誠にありがとうございます。ご意見も参考にさせていただきます。 もっと、このように言うことが許されるとしたら、この詩のリズム・メロディは、現代的なJーpop、あるいはインディーズポップという位置づけとして、作者としては捉えています。そのリズムに喃語を載せた、といいましょうか。 自分の詩は喃語なのです。この詩一つではその理由はつかみ取れないかもしれませんが。 今後も、発表していくつもりですので、よかったらウォッチしていてください。ありがとうございました。
1「全体には不思議な世界がまだまだ広がっていて、楽しいです」嬉しいです。ありがとうございます。 感想お寄せいただいてありがとうございます。
1>自分の詩は喃語なのです。 ああ、なるほど!となぜか腑に落ちました(笑)。御作を読んでいるときに覚える独特の感覚がうまく捕まえられずにいたのですが、お言葉を拝見して、何が本当に分かったわけでもないのに不思議にすっきりしました。ありがとうございます。
1これはなんて贅沢な四季だろう。多くの方が言われているように緻密に作られた音楽のようだ。以前、詩は楽譜なんです、と教えられたことが思い出される。この作品は朗読する快感がある。(もちろん、この作品の意味もいずれは馴染みみえてくるのだろうけども、いまはまだ味わいきれないフルコースに溺れている) 特に初めて読んだ時、 >朝の跡 飲み干していく 死ぬ人 >最期の食べ物 食べぬよう >生きる人 泣いて 生きる人 きりもみで >落っこちていくと 静物的で巨大でスロウリー >まるで港のような時間感覚で のっけから圧巻でした。この詩の流れのなかに自分も取り込まれていく。特に下の抜粋では、パッパパパッ、と本当に目の前で何か音が弾けるようでした。 >眼球 黄色い砂 月 しゅわしゅわ 星越し >遠くまで いったら いい >お前なんて知らない >泣かないで 僕が泣く >点々 ぱっ 点々点々 ぱっ >灯の蝋を首筋につけて ちゅっ 朗読しては録音してそれを聞き返して何か構造や詩の意味なんかを書き上げようとしたのですが、残念ながら言葉がありません。ちゃんと語れるのはどれぐらい先だろう?それが悔しくもありますが、今はとりあえずこの詩の素晴らしさに拍手を送るつもりでこのコメントをさせて頂きます。
2感想よせていただきありがとうございます。 自分の詩は音楽に憧れているのだと思います。あるいは初恋がずっと続いている。 そんな感じが自分ではします。
1申し訳ありません。 誤ってタップしてしまい 低評価(ポイント?)のようなログが残ってしまったのですが、 削除方法が分からないので 是非、時間をかけて読ませて下さい、すみません。
0頭が軽くなって心が愉しくなります
1僕も、詩を書いているときは(軽くなりすぎて)頭のことなどは忘れてしまいます。 たのしく読んでくださって嬉しいです。
0うーん。なんというか、何度読んでもわからない。というか、わからなくてもいいんじゃないかとさえ思えてくる。そうですね、若くて粗さも多分に残してるのに、それが魅力なモデルがその人用に作られたトップデザイナーの服を纏ってショーにでているのを観ているようです。わざとらしさもなく、どんなパフォーマンスにも嫌みがない。のっけから目を奪われる。見とれているうちに終わってしまいます。こういう人気モデルは追随者をつくりそうですが、追いつけない位置に立っていてほしいかな。
1コメント、ありがとうございます。 「こういう人気モデルは追随者をつくりそうですが、追いつけない位置に立っていてほしい」これに関しては、詩人のだけじゃなく、他人のだけじゃなく、自分の言葉というもの自体を大事にする人ばかりの世の中になることを、僕からは願うばかりですとしか言えません。 もちろん、これからも頑張ります。 ありがとうございます。
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