おれが見たのは風に舞いあげられた帽子のような
昨日の景色が線としてほどかれた形だった
だがそれは思い違いで
薄翅で飛びたった透明音楽を聴いていたのかもしれない
それは五月の晴れた日に
青い皮膜を透かして見える遠い海の
微細な結晶をまぶしたような波間の光が
振りまく笑いにそっくりだった
わけてもそのシナモンパウダーの
嘘っぽさや眩しさが
けれどもそれも悪戯な誰かのしかけた罠か
あるいは錯覚で
無数の靴や車の音のなかで おれは
虚ろな木のように立ったまま
空に吊された古めかしい壺よ
いまにも落ちてしまえ
と毒づいてやった
ところがやつときたら知らんぷり
黙々暢気に細い雲を吐いていやがった
吐いていやがった いやがったんだ
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 1944.4
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2020-05-08
コメント日時 2020-06-01
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1944.4
2024/11/22 00時48分23秒現在
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はーなんかこれもクラシックやな。なんか60年くらい前の文学青年の詩ってかんじ。こういうシンプルで素敵なやつってなに言っていいかわかんないな。題名も素敵。もし「詩」を書こうと悩んでるひとがいたらみんなこれをパクったらいいかも。
1読んでくださってありがとうございます。また好意的な評までいただき励みになります。今から60年前というとちょうど1960年ですね。その時代の詩作品は好きなので、その一端がでているとしたら、そこは過去の素晴らしい作品の影が、拙作を通路にして響いたということでもあり(影ー響、ですね)、非常に嬉しく思います。今後とも精進します。
0苦しい気持ちになりました。描かれている風景、重ねられる光景がきらきらしているだけに読み終わって題名に戻ると、余計辛さを感じました。でもやっぱりきれいだなあという気持ちと半分半分で。自分もクラシック好きなのだろうと思います。
1読んでくださってありがとうございます。返信ずいぶん遅くなってしまいました。 そうですね。目に映ったものがきらきらして見えた時ほど、ふと気づいた暗さに足をとめるということはあるように思います。コメント、ありがとうございます。
0前半から終盤に向けて、「~のようだった」「かもしれない」「そっくり」等、断定の形をとっておらず、うやむやな描写で、それが最終行の「吐いていやがった」「吐いていやがった いやがったんだ」を強烈な印象で残るのが鮮やかでした。 緩急の差を計算されて書かれたのかな?
0読んでくださってありがとうございます。そうですね。「いやがった」を繰り返すことで感情を前面に押し出すこと、それと同時にそれまでの語りは後ろに押しやることは、当初からの計算ではないけれど、意図したように記憶しています。コメント、ありがとうございます。
1冒頭がとても印象的で引き込まれました。イメージを広げては騙された気分になり、毒づきたくなるような感覚は、共感(と言うとおこがましいかも知れませんが)できるような気がしました。 この詩全体に漂うそのような空気感が、末尾に集約されていると思いました。
2追加失礼します。他の方のコメントを読んだので付け加えたくなりまして。 私もやはり自分にとってのクラシカルな戦後詩(荒地等)に似た雰囲気、そういうものが好きなのかなあと強く感じました。 詩の投稿掲示板という存在を昨日知ったのですが、今のところ、そういうクラシカルな詩のイメージとは違う匂いのする場なのかなと思っていたので、この詩にここで出会えて良かったと感じました。
0こんばんは。読んでくださって、ありがとうございます。印象的でしたか。なんでこうなったのか、うまく言えないのだけど、自分の思いつきで書いたことを次々に裏切りたかったのが一番だったように記憶します。そうだなあ、クラシカルといっても、私はおっさんなので、若い頃に読んだものがクラシカルなので、なかなかそこから抜け出れていないだけなのです。それでも、『出会えて良かった』は非常に嬉しく、また有り難く思います。こちらのサイトではいろんな作品が投稿され、コメント欄でも刺激や学ぶところも多くあります。是非、楽しんでくださいね。 コメント、ありがとうございます。
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