夜よ、波よ、きいてくれ（あ……
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道草にバター
道草はバターのようにまとわりつく。日溜りに咲く暖かさに手を差し伸べれば、手の甲を中心に新緑の香りが頬まで伝う。あのお店のコーヒーは美味しいらしい。あそこのクレープも美味しそうだね。 春風はジャムのように甘酸っぱい。一期一会に酷く共感した年の頃は、傷口から流れ出る赤色に興奮してる自分がいた。ただ、リストカットとかする勇気はないので、何もかもを壊さないように最善を慎重に尽くして生きてきた。12択や4択で占える人生なら私でも暗算できる。 潮騒はキャンディのようにカラフルだ。視力も、鼻の穴の大きさも、握力も、夢も、産まれた場所も時間も、肌の色も、感情の分け方も、言葉も、シワの数も、犯した罪も、己が祈る神も仏も、歩幅も、このキャンディの味も、同じように見えてみんな違うなんて臭い台詞は、みんな同じように持っている。 浜辺をブランデーでほろ酔いで、雲間に溺れるようにふわふわと歩く。こんなに楽しい気分なのに足元はキュッキュッと泣いている。今なら水平線まで泳いで行けそうな気がする。あの端っこに立って、やじろべえみたいに両手を伸ばして歩きながら太陽にバイバイしたい。 落葉はスパイシィなアクセントを地面にそっと。カーディガンが好き。セーターは嫌い。特に意味なんてない不確かな"好き嫌い"は、時に意味なんてない事で純粋さを際立たせているけれど。ピーマンは昔嫌いだったしなぁ。プチシューを一つ、一口で頬張った時の、あの丸い形が潰れて口の中に広がるクリームの罪悪感が一番好き。 雨音はチョコラテにとろけてしまう。水も滴るとはよく言ったものだ。私の掌に落ちたその一滴はもう私の一部かもしれない。手首から溢れ出した赤色も、まだ私だろうか。やまない雨はないと言うが、死なない人いない。私達は幾年も前から刹那暮らし 粉雪が、歩くような速さで降り注ぐ。そのひと時に段々と、にわかな愛が棲みついて。寒いからだと誰かを抱きしめるには、私はまだ刺々しい。ただその刺々しさ無くなってしまえば、誰かを引き留めるすべも無くしてしまうくせに。
道草にバター ポイントセクション
作品データ
Ｐ Ｖ 数 ： 1692.8
お気に入り数： 0
投票数 ： 0
ポイント数 ： 0
作成日時 2020-05-02
コメント日時 2020-05-15
| 項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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| 構成 | 0 | 0 |
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| 平均値 | 中央値 | |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
漢字、カタカナ、ひらがなを散りばめた全体からバターという溶解性のなめかな非定形さや生々しさ、道草の持つ茫々とした非目的性などが感じられました。
1バター、ジャム、キャンディなど味覚をメインに五感を刺激していく詩が面白く感じれました。 ＞春風はジャムのように甘酸っぱい。一期一会に酷く共感した年の頃は、傷口から流れ出る赤色に興奮してる自分がいた。ただ、リストカットとかする勇気はないので、何もかもを壊さないように最善を慎重に尽くして生きてきた。12択や4択で占える人生なら私でも暗算できる。 中でもここの部分は好きです。 この詩は七段構成で、最後の段の粉雪が～の所には食べ物が出てこないですね。 多分、食べ物に例えるってポップな感じで気持ちとしては軽く思っている状態だと思うんです。 でも最後の段にはそれがないから真剣にそう思っているのだろうなと感じました。
1湯煙様 お読みいただきありがとうございます。 タイトルにしちゃったので 当たり前ですが 「道草にバター」ってフレーズが気に入ってしまって笑笑 そこから考えました。 「非目的性」とご指摘頂き 意図してはなかったものの確かにその"思考"は頭の中にあったかなぁ と思います。 ありがとうございました。
0カオティクルConverge!!貴音さん様 お読み頂きありがとうございました。 好きなとこ言って頂けると「よしゃ」ってなります。 もともと四季の流れにのせようと考えて、ただ4段はありきたりだなと考えて、思いつくまま7段にまで増えました。 ご指摘の通り 最後の部分は非常に迷いまして。 同じリズムで行くことも考えましたが間延びしてしまってので キュっとしめました。 この詩に限らず、伝えたいことはラフにというねらいがあるので、トータルの締めまで汲み取って頂き嬉しいです。 ありがとうございました。
0「道草にバター」というフレーズが本当に大好き。 だからこそ本文そのものは「ああ、こう来るのかあ…」という残念感が少しありました。 「道端にバター」というフレーズから感じるスウィング感？が「AはBのように」と連なる詩文で消えてしまっていたからですかね。枕草子とかのリズムというか。 でも読むと結構面白くて、表現も「え？そこ？」から雪のようにふんわりと着地していく様が楽しかったです。 どこに向かっていくのかな～と思いながら読んでいて、最後の粉雪部分は脱帽でした。
1楽子様 そうなんですよ！ 道草にバター ってフレーズが気に入ってしまって笑 ご指摘の通り際立たせる使い方の方がミステリアス？さがでたかなぁ 楽しんで頂けて良かったです。 最後までお読みいただきありがとうございました。
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