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ずん太とお風呂
どうしてか分からないけれど ずん太はお風呂が大好きなのでした。 ちべたいあったかいと体を流し、 ずん太が湯船にはいって息をはくと、 静かな泡がこたえてくれるのでした。 湯船につかって だらんとなって、 目をそっとつぶって お尻どしいん沈めていると 地球という大きな船に乗っているんだ。 わくわくしてきて 夢中で波を起こすのでした。 ちゃぷちゃぷちゃぷ、ちゃぷんちゃぷん 波がおさまりはじめると 水滴の音、リビングの音、遠くの電車の音が はっきり聞こえてくるのでした。 ずん太はじいっと聴いていました。 シャワーを浴びると、違う時間がやってきます。 皆は知らないけれど、 シャンプーを流すとき 上手に匂いを嗅いでみると いつか母さんに頭を洗ってもらった匂いが するのでした。 ずん太は、足の指と指の間を洗うのが 好きでした。 それだけで、体が綺麗になった気がするのです。 もいちど湯船につかるとき、すっかり頭は ぼうっとしています。 ずん太はふと、 父さんと50を数えてからあがろうと 我慢したことを思い出しました。 でも、今はなぜか、50も数えないうちに 色々なことが思い浮かんでしまうのでした。 ずん太は不思議に思いながら、 どうして不思議に思っているのか ぽけぽけしながら 湯船から上がるのでした。 静かな泡も地球という船も はっきり聞こえた電車の音も 懐かしい匂いや我慢も みんなみんな いまや湯気となって 春の三日月の夜へと 立ち上ってゆくのでした。 どうしてか分からないけれど ずん太はお風呂が大好きなのでした。
ずん太とお風呂 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1206.5
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 7
作成日時 2020-04-30
コメント日時 2020-05-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 7 | 7 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3.5 | 3.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
さらりと素読みすれば ずん太の年齢がカギと察せられますが 十分大人になったずん太の 父母や幼い自分への追慕の情だけではない 何か別の気配が連れだっている気がします。 ずん太(アカ名)32歳、九州出身の女29歳。 女の居室で初めて風呂に入るふたり。 洗い場で化粧を落としている女を見ながら たわむれにちゃぷちゃぷと波を立て 女の肋骨あたりに指を走らせるずん太。 女が洗い流すシャワーの音を聴き 入れ替わり女の細指で洗髪され 指の股まで洗われるのがすこし恥ずかしい。 たがいに洗いあって湯船につかるふたりには 50を数えるあいださえ我慢ができない。 ずん太はあのころから好きだった風呂の時間に 男と女の時間がもてるよろこびがあることと 父と母ふたりの風呂場での時間を ぽけぽけと思いながら 女の乳房に静かに流れた水滴を見ていた。 これは ひとくせ、ふたくせもある良作だと思います。
0客観描写なので、三人称描写なので、ずん太の気持ちが分かり辛いのですが、これはこれで、効果を出して居る様な気がしました。ずん太のお風呂好きはもしかしたら、一度も触れられていませんが、父と母がずん太が幼いころに亡くなって居る事に由来して居る事を示唆して居る様に読めましたし、まだずん太は幼いとまでは言わなくても小学生ぐらいの年齢なのだと言う事が詩の書きぶりから示唆されているような気がしました。
0コメントありがとうございます。 丁寧に読み解いていただいて嬉しいです。 自己陶酔の危険性については、意識せずに詩作していたので、勉強になりました。 ノスタルジックを読み取ってもらえて嬉しい一方で、元々はお風呂場での独特の感覚について書きたいと思っていたため、その点をもっと強調できたら良いなと感じました。 こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました。
0コメントありがとうございます。 独創的な解釈に驚きました。そんな風に読み取っていただけるとは、、! 何より、方向性は違えど、お風呂場の特別な感覚が、原型を見事にアレンジしながら描かれていて、なんというか、悔しいなぁ、と思います。 私も、自分の作風をもっと強烈に出していきたいです。 良作とお褒めいただきありがとうございました。
0コメントありがとうございます。 ずん太への読み込みと想像をしていただいて、嬉しいです。 ずん太という存在が、私の意図していた以上に詩に影響を及ぼしているなと思い、面白い一方で力不足も感じました。
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