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No Title(Peter Spier's Rain )
おしみない雨音につつまれて、静かな空間のいちばん中央にとっぷりとした雨傘をしるせば、ものがたりに、縦への静かなみずみずしい弦楽がひたよせ、やがて絵本のめくられていくほうへ。右手を、やわらかな余白が藍をふくんでゆく項にそえ、音がただ気管支のほうへ降りつづく。あめとあめをつないで、栗色のうしろがみから落ちてゆく先に、ひかりではないようなものがながれ、絵の輪郭線と同じやわらかな筆致で、ひとしきり手紙を書こうとしては、やまない雨に水没してゆく。雨の日の猫のにおいをしらないだろうわたくしが、髪を束ねて、すぎゆこうとして去りゆけないまま、ときどき、意味もなく、この中にすんでいる誰かとなって、階段をのぼり、扉をあけて帰ってゆくための、便箋。遍在する、きらきらとこぼれる悪意に取り囲まれて、ふと向き合った、わたしと物語との湿度の似た圏域に、よけいな言葉一つなく静かに満ちはじめる、相似的な真昼の時間。
No Title(Peter Spier's Rain ) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1240.4
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2019-10-19
コメント日時 2019-10-20
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
流れるような文章の美しさ。意味を超えて浮遊する言葉。身体から切り離された意識。止まったような時間。すごい好み。 ただし、もう少し明度や彩度、つまり色彩の変化が欲しくなる。もっと揺らぎが欲しくなる。作品があまりに綺麗な球体だと、読者を簡単に素通りしてしまうものだ。
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