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自然にソッとくちづけよう
カタツムリの心臓をあたためた日 あなたは手のなかのぬめりの奥の とおき記憶をいつか忘れてしまうのでしょう 淡い色をしたわたしの胸の乾いた血だまりで 息をころしてジッとしていたこと 青い サンタクロースの群れが きえていった林の奥の秘境まで 一緒に出かけてプレゼントの山に からだを埋めて抱きあったこと リボンをわたしの肌において ソッと結んでくれた こと そしてあなたはいったよね 「 解いていいのかな 」 って わたしは 「 おもう存分ゆきましょうよ 」 そう答えて 裸のまま青鼻のトナカイにまたがって 南国のホテルまでともに帰ってゆくことができた あなたのこと言葉で抱きしめることだって 充分できたはずだわ だけど ふたつに割れたままの カラダの境界線のやけに湿度の たかい部分があなたの白い背すじのような 敏感なたかさを求めてしまうから いつでもわたしはことば以上の アヤマチで 恋よりも深く愛に恋してしまったの 「 果物かごください 果物はうちにありますから 」 あなたのこと 信頼してもいいのね 家のなかでふたつに絡まる ( 意味と意味 ) わたしたちは 意味という実感を もってこそあらたな蕾を宿すべきなのよ そうでないと蕾は硬くなったまま 動いてさえくれないこと だろうから あなたはいう 「 ねぇ秋はやけに喉がかわくね 」 あなたはいう 「 ねぇ冬はやけに歌をうたうね 」 あなたはいう 「 ねぇ春はやけに胸がさわぐね 」 + わたしたちに恋の殺しかたを どうかおしえてください + わたしたちに愛の愛しかたを どうかおしえてください + ( それからです ) ほんとうの気持ちよさで 愛に恋してしまえるのは あなたがわたしの胸に頬をよせる 「 ちがうよ 」 わたしがいうとあわてて わたしのおなかに耳をあてたあなた 蕾はまだぐっすりと眠っている やわらかなわたしたちの 永遠にちかいほうの 永遠 ( それが ) おなかのなかの 蕾の名前よ
自然にソッとくちづけよう ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 974.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-03
コメント日時 2017-06-20
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この詩を読んで、なぜかあのダヴィンチの名画モナリザを思い出しました。あの画には諸説あって、ダヴィンチの自画像であるとか、ダヴィンチコードにもありましたが、肉としてのキリストの子供を身籠ったマグダラのマリアであるとか、とても謎めいているわけですが、この詩にもコードのように解読しないと読めない感じがあると思います。 「意味」「永遠」「蕾」。永遠を宿したのか不敵な笑みを浮かべて構えるように座るモナリザが詩の奥に見えてくるんですよね。
0立ち上がりが斬新。潰してしまったカタツムリ、それを「わたしの胸の乾いた血だまり」に納めて慈しんでいるようにも読めるのですが・・・潰してしまったのは、実は私の幼心、魂なのではないか?という気がしてきます。 「青い/サンタクロースの群れ」赤いサンタさんではなく、なぜか青い・・・反転したサンタクロース。甘い語感と裏腹の、謎めいたイメージの森へといざなわれる、少し大人になった二人。自分を「プレゼント」として差し出す、そんなイメージでしょうか。処女喪失の(記念日というのも変ですが)その日を美しく回想しているようにも思われます。 「って わたしは」 こうした間の取り方は、少し冗長な印象を与えるものですが、ここでは二人の間の沈黙の時間や、流れていた時間を掬い取ろうとしているように思われました。 「ふたつに割れたままの カラダの境界線のやけに湿度の たかい部分があなたの白い背すじのような 敏感なたかさを求めてしまうから」 女陰が求めるもの・・・が、肉体的なものというより、より精神的なものであることを示唆しているような一節。 果物、の暗示する実り。 2人の肉体の性愛のイメージが、2人の精神性の婚姻のイメージと重なり・・・肉体の内に、蕾を宿す。「あなたのこと/信頼してもいいのね」以降の部分が、若干間延びしているようにも思うのですが・・・蕾が花開くとき、永遠、の意味が開示されるのか。あるいは、蕾であり続ける事、胚胎し続ける事、それが2人の間に宿る「永遠」なのか・・・ 題名とあわせ、心と自然との婚姻、そこから生まれ出る言葉(詩)をイメージしました。
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