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朝、大聖堂の素描を持って。
たとえばバングラデシュの女学生が焼死した話をしたとして君は咥えた花の蜜を吸うハチドリのことを気にするだろう。Kindleのタッチパネルを淡々とたんたんと暗澹たるダルメシアンのような面構えで叩く僕のことなんか本当にどうでもいいように緩慢な半とろけの時間のなかで。「どうでもよくなんかないわよ」さくっと柘榴の実を割って君はなんだって千里眼て顔をしてくりくりとつぶらな複眼で僕を胎臓界曼陀羅じみた万華鏡の遍在へと視界する。「そんな顔してたし」眉間に皺寄せ見るニュースによるとどうもノートルダム大聖堂が案外となんとかなりそうな気配に安心し新デザインの公募に君を模した聖母子像を意匠したいと思いつつ言葉にはけして出さない。もうdancyuに夢中で僕なんか眼中にないって風な意識の寒中水泳めいた風情の視線で瞑想風読書に耽る君だってこんなことお見通しなんだもん。メリーアメンラーチキンラーメンだーとなんか今しがた思い付いたエジプト風インスタントラーメンの架空のコマーシャル・ソングをホーミーの複声で歌いながら僕は聖堂の素描を手帖に描く。バラ窓に燃え盛るステンドグラスの君の口にそっと花を挿してみる。ガーゴイルは恋をするのか? 僕にそれはわからないが少なくとも僕は君のガーゴイルだ。「あ」君のはっとした「あ」の発音が撥音で張り詰めた世界がぱんっと割れて裂け目が出来たテーブルから発酵した菌糸様の世界線が伸びる。するとするっとするするっと僕と君の分身をひとつずつひとつずつありとあるあらゆる世界の朝に導く。じゃあまたねと僕はあらゆる世界の可能態の大聖堂の素描のノートをあらゆる形で分有したまま記憶の底に沈み沈んで今迎えてるこの朝。
朝、大聖堂の素描を持って。 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2586.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 13
作成日時 2019-04-19
コメント日時 2019-05-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 3 |
前衛性 | 3 | 2 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 13 | 9 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 0.5 | 0.5 |
可読性 | 0.2 | 0 |
エンタメ | 0.5 | 0.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.2 | 1.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
はじめまして。 違っていたらごめんなさい。 普段はあまり言葉遊びを使った作品は書かれない方でしょうか? 上手なのだけど、ハラハラしました。遊んでいるはずなのにたのしそうでない感じ。胃がキュッとなりました。 単に、なゆたさんのリズムと私のリズムが合わないだけなのかもしれないけれど。 なんだかそれだけな気もしてきました。失礼しました。
0こうだたけみさんへ コメントありがとうございます。 こういう散文詩がいちばん素の言語感覚でやりやすいんですが、一応現代詩っぽい書法を身に付けるためさいきんまで封印してました。ただ、言葉遊びのための言葉遊びというか、「たーのしー!」というような詩はどのみち書けないというか、自分自身ただの言葉遊びだとあんまり楽しめないクチです。今回はわりとダウナーなだるさと厭世感のようなものに結び付くような言葉の流れを意識しました。過剰な長さがそれだと思います。 一応、根底にあるのはまあまあシリアスなものなんで、そこは伝わったのかなと思いました。お読みいただき、ありがとございます。
0> ただ、言葉遊びのための言葉遊びというか、「たーのしー!」というような詩はどのみち書けないというか、自分自身ただの言葉遊びだとあんまり楽しめないクチです。 違いはここだ。根本的に違う。笑。すみません、私は「たーのしー!」って書くタイプです。 もう一作とずいぶん違うので不思議だったのですが、謎が解けました。ありがとうございました。
0そういう立場の差異はどうしても出てきますよね。それが詩の多様性を生み出すものでもあると思うので、違いそのものは尊ぶべきものかもしれません。 ありがとございます。
0先日、即興ゴルコンダ(仮)というサイトのお題に書いた短歌を思い出しました。 「きみはそう、わたしはこうでそれぞれにちがっていい」は壁にならない 違いを認めることは互いを尊重することだと思っています。お話しできてよかったです。
0『区切り』が少ないわけですが、音読する感じで読むと、自然と息継ぎするような感じで、自分なりのリズムが生まれてきたりもしますね。 逆に頭の中でそのままスピーディに読むことも出来たり、受け手によりかなり印象が違うんでしょうかね? 勝手にそんなこと考えながら『ふむふむ』と思ったりしながら読ませていただきました。
0tOiLeTさんへ はじめまして。この作品はかなり自分の言語の身体性に乗せて書いたものなのですが、この「一文がやたら長いくせにやけに読める感」には一応配慮してます。もちろん散文詩に限っても全然普通の書法は出来るんですが、素の持ち味を活かすならこのスタイルかなーと。自分自身で好きかはともかく。 「人によって印象が変わる」との指摘には意外な想いがしました。かなり自分の濃度が高い書法だけに、かなりリズムや流れが読み手のそれを食わないだろうかという懸念があったので、ここにも多様性が生まれる余地があるなら嬉しいなと感じたしだいです。 ありがとうございます。
0"僕"は万華鏡のような脳内であちこち記憶を引っ張り出しては戻したりして世界について考えているのだけど、"君"は世界が色々なことで出来ていることや誰かの頭の中にぐるぐる渦巻いている言葉になんて興味が無いのでしょうね。同じ空気を吸っている2人なのにばらばらな感じ、ばらばらなのだけど繋がっている感じ、むずむずしそうなものだけどリズムが良くて気持ちよかったです。
0一行目は素晴らしい。ただ、この屹立した言葉を持続して欲しかった? 次作に期待してます。
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