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ミラージュ
半世紀ぶりに訪れた海辺の白い街。幕間の眠りから不意に起こされた死者のように、 私は身を震わせながらひび割れた城門をくぐり抜ける。夏の丈高い草を踏み、ザクロ石 の回廊をたどり、荒々しい潮風にもう一度耳を傾ける。 それにしても私はいったい誰を追いかけてきたのか。誰に追われていたのか。ひりつ く肺の疼きを抑え、琥珀の迷宮を歩き続ける。ときに歌い、ときに嘆き、手当たり次第 に扉を叩く。焼け焦げた百合の紋章。弓なりに反った青銅の橋。そして、あの胎児の顔 のような石畳。 扉を開けるたびに私は記憶に打ちのめされた。牙をむく間もなく、無力な虎のように 幾度も打ち倒された。だが千年と千年が過ぎ、電子仕掛けの暦が束の間白紙に返るとき、 太古の庭の中心で、石化したトネリコがすべての葉をふるい落とす。その一瞬、最後の 扉が眩く蒸発する。 壁の向こうは東風が吹き抜ける砂原。兵士たちの叫びもなく、熟れた花も墓碑もない 多島海の蒼い夜明け。やがて震える地平線の上で、精妙な宇宙卵に一筋亀裂が走るとき、 新しい物語が軋みながら回り始める。
ミラージュ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1078.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2019-02-16
コメント日時 2019-02-28
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
すべてがパンチライン カフカのような?SFのような?感じとしか言えない もっとコメントがついてほしい
0言葉と言葉の連なり、単語と単語の連なりから起きるミラクルが素晴らしい。ただ自己韜晦の印象も若干あり、詩の全容を掴むことは出来なかった。しかし一目見て構築された美を感じるのもたしか。
0コメントありがとうございます。分かりにくくてごめんなさい。これはだいぶ前に書いた詩の焼き直しで、最初のタイトルは「ミレニアム亅でした。千年紀の日付変更線に立った心象風景を、自分なりに視覚化したものです。
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