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スグルくん
スグルくんは幼馴染で、家が近くで、お母さんがスグルくんのお母さんと仲いいから、よく家に遊びに来た。でもあたしは、スグルくんはいつも鼻をたらしてるし、なんか貧乏くさくって好きじゃなかった。 あたしもスグルくんも幼稚園のとき、いつものようにスグルくんが家に遊びに来た。あたしはスグルくんの家には行ったことがない。スグルくんみたく貧乏臭いから行きたいって思わなかった。 家に来たスグルくんはあたしのぬりえを見つけると、自分のものみたく勝手に塗り始めた。スグルくんはあたしの家に来ると、いつもあたしを無視して勝手に何かする。あたしはそんなスグルくんは不器用なんだって思って、スグルくんは好きじゃなかったけどつまんなかったし、いつもあたしから話し掛けてた。その時もちょっとしてからぬりえを覗いてみた。ぬりえはテレビのと全然違く塗られてた。目とかも片っぽずつ違う色だった。あたしが「そんな色じゃない」って言うと、スグルくんは「別にちゃんと塗らなきゃいけない決まりはないでしょ」って平然な顔で答えた。あたしは、塗り絵はちゃんとした色で塗るものだと思っていたし、ちゃんと塗れるとうれしかったから、そんなことを言うスグルくんが変だって思った。 でも、なんでか、ずっとそのことがどこかに引っかかっていた。 スグルくんとは小学生になってクラスも違かったから、そのまま自然と遊ばなくなったけど、5年生のときに同じクラスになった。もう鼻はたらしてなかったけど、なんかひげとかちょっと生えてて、なんかおじさんぽかった。 スグルくんはクラスで特に目立つって感じじゃなかったし、なんかあたしとは違う感じだったし、話すことはなかった。 6年生のお別れ会のときにスグルくんと同じグループになった。そのころ流行りの曲をみんなで歌うことになった。あたしはピアノを弾く役だった。 そのとき珍しくスグルくんが提案した。それは、その歌の「迷い込む」だか「迷路」がどうのってとこで迷路を行ったり来たりさせるオブジェを作ってみたらどうか、っていうのだった。みんな面白そうだって思った。あたしもぬりえのスグルくんを思い出して、やっぱりこの人は他の人とは違うすごい発想をするんだなって思ったりした。 けど練習のときにスグルくんが持ってきたのは、あたしたちの想像してたのとは違かった。それは、画用紙を迷路みたくくり抜いて、そのくり抜いたとこを豆電球で行ったり来たりさせるっていうのだった。画用紙に書かれた手書きの迷路はへたくそだったし、明るい教室で豆電球は光ってるんだかいないんだかわからなかった。それになんかすごい貧乏臭かったし、画用紙の裏から豆電球を行ったり来たりさせてるスグルくんは見てて恥ずかしかった。 結局あたしたちの出し物はぜんぜんウケなかった。 中学になってスグルくんとは同じクラスになったこともなかったし、高校も違かったから、それ以来スグルくんとは会ってない。 でも、なんかそれ以来あたしは貧乏臭い男はどこか信用できないし好きになれない。
スグルくん ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1072.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2019-02-13
コメント日時 2019-02-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これはとても僕好みの詩情の汲みかたです。文体もほどよい感じにあえて拙さを出せていると思いますし。ただ少々惜しまれるは、ゼロ距離のリアリティを重視しすぎたがために、その代償として、詩作品としての文学的飛躍を手放してしまったのではないかと見受けられるところがあり、それはちょっともったいないかなと。けっきょく額のうちに入れるのなら、詩的表現のためだけに多少は異世界を覗かせてしまっても良いのではないかと僕は思うのです。いや、すみません。なんかめっちゃ言っちゃって、でも本気で次の作品も楽しみにしております。
0ありそうでなさそうな絶妙な日常感にゲシュタルト崩壊ギリギリの「スグルくん」の数。テンポも良いしこれは良い詩だと思う。
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