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アソート Ⅰ
「青」 風船に乗って月へ行く。 見下ろせば 弧光灯の海月が 住処へと帰るところだった。 着なれた制服を脱いで 水面に放り込むと 優しさが 世界に満ちて ぶく ぶくと 彷徨い始めた。 それはそれは綺麗な放物線が 波と夜の隙間に浮かんでいる *** 「えびせん」 弓形にしなった背が 海をおんぶして そっと抓った肌が 赤みを帯びる。 君は、恥ずかしそうに サンダルを脱いだ 滲んだ太陽は 塩辛そうで なんだかぱりっ、と していた。 ** 「▼」 その日、たくさんの▼が降った 人々はとても喜んで 枕やらまな板やら 調味料なんかにして使った なんでも▼は縁起がいいらしい 街で有名なヤブ医者が ▼を使った手術をしたところ 無事成功し、▼を使った治療法が 一躍ブームになったという 数日後、たくさんの▲が降った 人々はがっかりしたように 家に引きこもってしまった 私だけが外に出て ▲達と鬼ごっこしている 拾った▲は 本の栞にしてみた * 「寝坊助」 どこまでも どこまでも 草を食む 羊の群れが 地平線へと滑って 虹のカケラになるのを あの画家は 数百年描き続けたという どこまでも どこまでも 美しい裏切りが 地下水になって流れている のを 君はリナリアみたいね、って 笑っていたけど どこまでも どこまでも 羊の群れは とくとく沈んでって ひたすら柔弱のまま 光の中に溶けてくってこと それはまだ君が 眠いだけ、ってこと ** 「雨」 晴れた日に 綺麗な種を蒔いたら むくむく育って 空を覆ってしまった 植物の先に 笑顔のオッサンが咲いて そいつらが 酷く泣くので 地上は 水浸しで困った 川が溢れたら 太平洋へ行こう ピーナツの船に乗って 滅亡したあいつらはほっといて *** 「ギフト」 虹の麓に 宝箱を見つけた 中身はかなり しょーもなかった しょーもなかったので 四つ葉のクローバーを添えて 思いきりなげた 引っかかったのは蜘蛛の巣だった 蜘蛛は やわっこいため息をついた後 みるみるうちに 上昇して 空の彼方に行ってしまった。
アソート Ⅰ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1159.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-10-01
コメント日時 2018-10-14
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
皆様、おはようございます☀ 今月は雑感お休みします。とりあえず、投稿できて良かったです。 違うスタイルを模索中です。下手ですが、見守っていただけると幸いですm(_ _)m
0アソート、色々な美味しさの詰め合わせをどうぞ、ということでしょうか。 最初の「青」、幻想的なムードの中で〈着なれた制服を脱いで/水面に放り込むと/優しさが 世界に満ちて〉という一節が光っていると思いました。住処へ帰る=本来の場所に戻る。魂が夜の夢想の狭間で、自由な素の姿に戻るのを、静かに見守っている書き手の意識を感じました。 ▼ も面白いですね。なんだかわからんもの、でも、天から恵与される、という方向性を含んでいるような視覚効果があります。 人々が▲の方向性を意識したとき、世界は(心は)貧しくなるのかもしれない。だからこそ、一緒に戯れる。栞にして記憶のひっかかりにしておく。そんな向き合いかたがよいのかもしれませんね。 〈どこまでも どこまでも 美しい裏切りが 地下水になって流れている のを〉のフレーズや、雨の冒頭の設定の面白さも印象に強く残りました。
0拝見しました。 「アソート」の名の通り、様々なテーマの詩が盛り合わせられていて、そのどれもが違った方向の詩でもあって面白く感じました。 内容はひょっとして繋がっているのでしょうか?▲▼のパートが特に良いですね。実際何なのかはよく分かりませんが、異世界の出来事を見ているような気分になりました。
0まりも様 コメントありがとうございます。 この文体は、作者の巧拙が顕著に現れやすい(自論です)ので、緊張しておりました。 初の試みです!こんなの1回書いてみたかったんです。誰もコメントしてくださらないだろうな、と思っていましたので、楽しんでいただけて幸いです。 実は、最近、とある方の詩と出会い、この方のような作品が書きたい、と思ったのです(*´v`)遠く及びませんが……。本当にありがとうございました!! すいません、ふじりゅう様、少しコメント遅れますが、ありがとうございます!また後ほど丁寧に返させていただきます。
0ふじりゅう様 おはようございます☀ 楽しんでいただけて幸いです。これから色んな事に挑戦していけたら、と思います。▼は私も好きです。晴れときどきミートボールとか、好きなんで、なんか降ってこないかなぁ、って思いながら書きました。ありがとうございましたm(_ _)m
0いつまでも僕自身でさえ明文化出来ていない「なつめさんらしさ」というものを期待するのも野暮なのですが、「えびせん」や「▼」になつめさんらしい遊び心が散見出来るような気がしました。一転、明らかに書き具合の違うのが冒頭の「青」であり、これは筆者様に芽生えた、技巧主義的な詩作品への関心から生まれたものなのかと、興味をとてもそそられました。もし筆者様により高いレベルを求めるなら、今の時点では「青」は頭に心と体がついていっていないとの印象を持ちました。俗に言う心技体が一体化した次のステージの「なつめ」さんも拝見したいです。失礼のあるコメかもしれませんが期待ゆえということで。
0stereotype2085様 コメントありがとうございますm(_ _)m 「▼」と「えびせん」は特に楽しんで書いたようなきがします。「▼」は友達にも家族にも好評でした。 「青」は、そうです、一番凝りました(笑)でもやっぱり勢いで書いたものの方が自然なように思います。もっとたくさん書いて、いつか理想の詩がかけたらいいなと思います(✿︎´ ꒳ ` ) ありがとうございました(*¨*)
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