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怪郷
雷様が率いる にわか雨のパレードが行ってしまった後 取られなかったおへそを抱えて お腹いっぱい熱気を吸う かつての八月 道端でへばった龍の汗が蒸発した湿気の中で 幽霊は昼も夜もなく暗闇を探していた 百物語がしたくても ろうそくも友達100人もないから 五人で集まって 知ってる話を語っては 持ち寄った懐中電灯を消した十歳と 夢の海で座礁して 億劫さを抱えた十七歳最終日が そよ風で繋がる あの時も今も結局 お化けを目の前に呼べないでいる 昔はおばけだらけだった 祭囃子もしない都会で ビルもない田舎 それが僕の原風景でも 一夏の冒険なんて アニメか児童書の世界だって なんとなくわかってた 普通に普通な幼少期でも お化けは確かにそこらへんにいた こわいと楽しいが同じ色で 不思議と当たり前が同義だった お化けは夜に出るだなんて俗説で 公園の木陰に天狗が隠れていたりしたもんだ 近づくと消えてしまうんだけど 喋らず話しかけてきた 空を見上げると坊主頭が微笑んでいそうで むしろそれは下を向いている限りわかってて 一二の三で上を向けば今度は下に何かいた 夜更かしは寝苦しいってだけじゃなかった 早起きはラジオ体操のためじゃなかった それも今は昔と同じ箱の中だ 今は昔を積み上げて今の今を生きる 母の語る昔話の綺麗さが退屈で 恐ろしい今は昔を 怪しい今は昔を求めていた昔 今は昔は今も確かに血の中にあるのに 僕は不思議においていかれてしまった 現実に置いてけぼりだ 不思議は勝手に絶好して来た 科学と妖怪が絶交したみたいに 昔は友達だったのに 僕は彼等を説明できない 怒らせてしまったのなら 一人ぼっちにさせてしまったのは僕が先だというなら 謝りたい 久しぶりに自転車を走らせて 不思議なものを探している 妖しいや怪しいを探している だって夏はお化けの季節だし 蝉が読経みたいに鳴いて 入道雲は雲入道かもしれない 結局何とも会えないで ジュンク堂で本を買って帰る もう太陽が金になる時間 青空は静かで 風も涼しくなっている 案外そこらへんにいるかもよ 一瞬何かが見えた気がする ただの寝不足かもしれないけど
怪郷 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1002.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-08-22
コメント日時 2018-09-05
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「昔」と「今」を対比させて、不思議がいつの間にか解明されたり、科学的に反証されてしまうことを、とても詩情あふれる筆致で描き切っています。初めは冒頭が素晴らしいな、と思っていたのですが、随所に目を引く、惹きつけられる表現が散りばめられており、最後まで一気読みしてしまいました。しかもこれほど特有な単語と単語のつながりが数多い作品を、意味がしっかりと入ってくるという形で。素晴らしいですね。「不思議は勝手に絶好して来た」とか「龍の汗が蒸発した湿気の中で」などの表現が特に好きです。全体として十代前半から後半の男の子の語り口のように柔らかく、時にそっけないのですが、奥に潜められた意味合いは十代のそれではないように感じました。
0コメントありがとうございます。 個人的な不満点もありますが自分にとって最重要な要素の一部である不思議や懐古をできる限り表現しようとしたものなので、そう言っていただけると嬉しいです。
0〈百物語がしたくても~お化けを目の前に呼べないでいる〉この連が面白かったです。 言葉にも勢いがあって、なめらかに一気に言い切るような、ここで気持ちが盛り上がって、一旦おさまるような感じで、脳内再生してみました。 その後の連を、もう少し刈り込むことができるような気もしますが・・・暗闇が消えてしまった時間的な経過と共に、心の中で想像を膨らませる余地が枯れてしまったような感覚、そこに着目したことが、とても大切だと思いました。
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