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みかん風呂
窓際できゅうりを叩く母の背と 夕日が溶けて交じる時 鼻から下を隠しつつ 体操座りでじっと待つ ポタポタ滴る天井の 汗を気にせずじっと待つ 熱い湯は 我慢してれば 慣れてくる。 目の前の水面に浮かぶ赤い網 ゆらゆら揺らす浅い波 近づかないとわからない ほの香に酸っぱい夏みかん とっぷんと上から抑えて沈めても すぐに顔出す不沈艦 熱い湯を 我慢できずに 負けただけ。 負けないぞ。お風呂上がりの6時半 冷凍みかんが待っている。 晩飯前に少しだけ お腹一杯にならぬよに あと100ちょうど数えたら その楽しみが待っている。 あと40、あと33、あと12 あと1で、ご飯できたと母の声 津波で揺れる不沈艦 団扇を振りつつ冷凍庫の 奥から取り出す夏みかん 指で触れると瞬間に 氷の膜が溶けていく サワッ シュクッ ホロッ ジューン しみる歯の 隙間を香る 酸い甘さ 背中に汗がたまるのを よそに、もひとつああしみる 熱い湯を 我慢したから 分かる味。
みかん風呂 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 986.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-08-21
コメント日時 2018-08-23
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この作品、前作より飛躍していると思います。柿原さんのモチーフとして、一つのスタイルとして、詩情を喚起する一つの方法として、ガマンや忍耐のあとに見られるその後の喜び、あるいはそれそのものが素晴らしい経験だ、とのスタンスがあると見受けますが、何かいい意味で愚直な印象があり、詩中の人物のあと押しをしたくなります。ただ僕は未熟で粗削りながら、「たった一度の勝利」を描き、それでも「振り」続ける筆者を投影した前作の方が、伸びしろがあったかなと思いました。では。
0stereotype2085さん>確かに我慢や忍耐は僕自身の人生の中で大きな部分を占めていて、詩情もそうですがそれを含むあらゆる感情が我慢を中心に生まれてきているのかもしれません。伸びしろ、難しいですね。次は違った僕(の詩)を表現できたらと思います。がんばります。
0単純に「準備」をしただけでは駄目で、冷凍庫で凍るのを待つ、という「時間」が必要なのだ、ということ・・・そして、熱さを耐えたからこそ、その「時間」も、予想した美味しさ、期待した美味しさを楽しむことが出来る、ということ・・・そのための「準備」が生きる、ということ、などについて、考えました。こうした考え方は、詩の素材(自分が感動したきっかけ)を大事に寝かしておいて、言葉になるのをジリジリ焦がれながら待つ、そんな状態にも通じるかもしれません。 言葉の語調というのか、調子を整えようとし過ぎて、全体が流れているような気もします。詩論的な含みというのか、二重性も持ち得る、という寓意の力を意識してみてはいかがでしょうか。
0まりもさん>ありがとうございます。詩って難しいですねぇ。自分の浅さが見られてるような気がしてお恥ずかしいです。深みをもたせる努力をもっとしてみようと思います!
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