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無題
もやがかかった視界の先に 面倒なものが沢山落ちていて 近付いて 見ようともしないで 蹴飛ばして進むことしか出来ない 「誰もが病にかかっているのだろう」 彼はそう言っていた 「私は正気 貴方とは違う」 彼女はそう言っていた とてつもなく大きな山に見えるものが 折り重なる人間の死体だったとしても 蹴飛ばしながら進むことに変わりなく もやは一向に晴れることはないだろう 「誰もが気付いて欲しいと思っている」 彼はそう言っていた 「私は一人 気付かれずにいたい」 彼女はそう言っていた 彼も彼女も もう存在していないが 病は相変わらず 何処にでも存在している 蹴飛ばした靴に穴が空いてしまっても 視界の悪さに安心する日々は続いた 「誰もが美しい過去を思い返している」 彼はそう言っていた 「私は現在 過去でも未来でもない」 彼女はそう言っていた もやがより濃くなっていき その色が瞳に張り付いている気がした 彼と彼女が話したことも忘れてゆき 最後には足を止め 進むことはなかった
無題 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 921.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-08-13
コメント日時 2018-08-21
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
彼はそう言っていた 彼女はそう言っていた このフレーズが、リズムというのか、この詩の呼吸を作り出していると思いました。 バラッド(民謡詩、物語詩)にしばしば見られる、懐かしい枠組みが、リアルに実体化された暗喩を繰り返し読者の前に(イメージとして)提示していく。
0まりもさん、コメントありがとうございます。 呼吸を作り出している、というのは嬉しい感想です。今回投稿させていただいた詩は、あまり肩を張らずに書いたものです。 その中にも呼吸を作り出せたのは、良かったです。 枠組みを作ることで、詩に出来た文だとも思います。 イメージ先行の詩が得意なので、もう少しレパートリーが増やせるように書き続けます。
0作品から受けるイメージははっきりしていて、情景描写の強度がある文体だと思いました。構造のみを表現し、中身は読者に委ねられた風にも読めました。手法的には好みです。また、過去に投稿されていらっしゃった作品とは文体を変えられており、先に述べた受け方が本作のコンセプト通りであれば完成度があるかと思いました。しかし自己投影する読みが私には第一義としてありまして、どうしても作品が他人ごとに思えてしまう。描かれている彼と彼女が読んでいる私事として入ってこない。それは当たり前といえば当たり前なことなんですが。余白の部分、構造の中にある世界観まで、移入出来なかった感が残りました。
0僕は一時期フランス映画を集中的に観ていたのですが、この詩で描かれる男女間の間合い、空気感は文芸的フランス映画のそれに近いかな、と思いました。記憶があやふやでタイトル名等は具体的にあげませんが。一読した限り、この男女は密接な関係にあるはずなのに、不穏な空気が全体を覆い、不安感がそこはかとなく漂っている。詩は余白を読むものであると知ってはいても、もっと詳細を見たいと思う詩でした。この男女。気になります。
0三浦さん、コメントありがとうございます! この詩をどういうことを感じながら書いたかと言うと、「特に何も」でした。 きっと、移入出来なかった理由が、そこにあるのだと思います。 以前投稿していた作品は、結構コンセプトを持っていたと思うのですが、この詩はとても悩みながら書きました。 ただ、彼と彼女の正体、また、書いている本人という登場人物が、はっきりしない肖像のようなものにしたかったのです。 あまり良いイメージでないかもしれないですが、虚無感が無意識的に詩に込められています。
0stereotype2085さん、コメントありがとうございます。 僕はフランス映画は「禁じられた遊び」しか見たことがなく、フランス文学(フランス文学?)ではジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」くらいしか読んだことがありませんが、言われてみると、そういった部分もあると感じました。 噛み合わないというか、結局離れ離れになってしまったりというか。そんな印象があります。 こういう男女関係がとても好きです。 それを主題にして、また別の詩を書きたいなと思いました。
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