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四月選評
大賞候補 「わたしは春虫」 地( )球 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1659 仙骨に意識をおいて脱力したひとを、力ずくで捕まえようとすると、そのひとが体をぶらんぶらんさせただけで転ばされるばかりか、掴んでいるのに掴んでいる手応えが全く返ってこなくて、とても「気持ち悪い」んです。なに!?コレ!!と驚くくらい奇妙で不思議な感じ。その不思議の秘密を知りたくなる。この作品の(魅)力について言うと以上のようになります。ヘンテコリンでたまらない、そして、もう一回やってみて、という具合に何度も読み返してしまう。四月の作品すべてのなかで群を抜いてそう感じた作品でした。 優良 「笹竹」 黒髪 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1667 語りが内部でどんどん深まっていくかと思いきや最後の「だろうか」で遠くへーー手の中の鳥を空に返すとか、空き壜を海に投じるかのように、手放した感覚がありました。投げられた先を追う気持ちに強く駆られました。 「手枷ー『幸』字解」 二条千河(NIJO Cenka) http://breview.main.jp/keijiban/?id=1635 スーパーマーケットやアーケードで親子を見たら、温かい目で見てあげられる気がしました。困らせもしたけれど私もそういう子どもであっただろうと思います。そんなふうに、多くの大人の記憶に届く、そしてこれからの秘密の鞭撻の手だてにもなるように思います。 「骨の魚」 (桐ヶ谷忍) この作品と「黒塗りの幸せ」はちょっと似ているなあ、というのが率直な感想です。この作品では、人間と「骨の魚」、後者では「私」と「先生」。どちらとも明確な距離があり、それは厳然と、または冷然と、とでも言いたくなります。下界のありようをよそに、「魚」は、《手の届かない空で/優美に身をひるがえ》します。人の憧れなどどこ吹く風か。そして、「魚」によって、人間の浅ましさというか「ごうつくばり」な面が露わになっている。ここが、この作品を選んだ理由です。 推薦 「『ふたたび殺戮の時代』のためのスケッチ」 (原口良平) http://breview.main.jp/keijiban/?id=1582 政治性、社会性をもった言葉をここまで取り込んで、現実よりも響くフィクショナルな言葉の場を築く手腕の見事さときたら! 「流木」(静かな視界) http://breview.main.jp/keijiban/?id=1621 言葉による関係のダイナミズム。 「HOME」 (R) 行き交うものも人も皆旅人。
四月選評 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 967.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-05-16
コメント日時 2018-05-26
すいません! 原口良平ではなく、昇平です! 原口昇平さん、すいません!
0ご講評、ありがとうございました。 気づくのが遅くなり、申し訳ありません。 日常的な風景の見え方が、何か少し変わるきっかけになったのであれば、この上ない「幸い」に存じます。
0地( )球さま コメントありがとうございます。私は選評では「ヘンテコリン」と書きましたが、詩の言葉がヘンテコリンであることは、全くヘンテコリンなことではないと思っています。といって、ヘンテコリン推奨というわけではありませんし、ヘンテコリンなものが詩であると断定してもいません。笑 詩を書こうとするとヘンテコリンにならざるをえない場合が往々にしてあるということです。けれどもそれを書く「核」までもヘンテコリンではなく、むしろ、かっかと燃えているんじゃないか。 詩の側から見たら、日常文法に則って規則正しく並んでいる言葉こそ、強引に繋がれた歪な姿であるかもしれないですね。
0二条千河(NIJO Cenka)さま コメント、ありがとうございます。詩の旨味のひとつは、気づかなかったことに気づかせてくれるところにあると思います。わかりきっていると思いこんでいることでも、改めて焦点をあてられると、ああ、たしかにそうだった、と思ってしまう。いや、異なった角度から光をあてられると、といったほうがいいのかもしれません。それくらい、日常の見方考え方というのは、同じ角度から光をあてるように習慣づいている。 だからこそ気づけなかったことに気づかされるのは驚きです。作品の言葉が驚きに出会わせる。現代は以前にまして刺激の強いものが増えていく様相を見せていますが、そのためにかえって驚くことは少なくなっている。にもかかわらず、詩の言葉がしばしば読み手を驚きに出会わさせてくれるのは失われていない。これは嬉しいことです。 ありがたいお説教ではなかなか驚かないし、染みたりしないんですけどね笑 語る詩によるカタルシス、のなせる技ですね。 コメント、改めて感謝します。
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