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Dreams
朝焼けをみくびった 瞳に ふるえた文字が映る あなたと愛を交わした 見習い天使は 崖から 落ちて 死にました R.I.P そうか 死んだか あの脆弱な翼では飛べやしない 不思議な声で唄う 天使であった 共に唄った旋律(メロディー)を口ずさむ かつては連星(スピカ)だった二人 唄とともに双眸から熱いものがこみあげる わたしが殺したようなものだ 変わってゆく自分が嫌いで 変わらない天使(かのじょ)を遠ざけた みくびった朝焼けは 孤独の 炎色反応 大気圏内で燃え尽きる 届かない 祈り 小綺麗な体育館にわたしはいる 胸に「光盛」と名の入った体操服を着て(何と読むかは分からぬ) 館内では無数の影が走り回り バスケットボールをしているらしい音だけが聞こえる 不可視のゲームに参加できず 茫然と立ち尽くしていると 嘲りの声がする 「異母兄妹で作った子ぉやから」 反響する悪意 充満する敵意 散らばっていた影が一ヶ所に集い 巨大な闇と化して口角を上げる わたしは拳を固め 闇を睨む 握りしめたのは 闇を こわす 闇 わたしは わたしの兵隊を探さなければならない 屋上でのサボタージュ 貯水タンクにもたれて 鞄から取り出したのは青いリンゴ 「未来の庭」と名付けた屋上で リンゴは地球にすりかわる 掌(てのひら)の地球をかじりながら 下界を見下ろす 背の低い町は絵本のような青空に侵食され 消毒されたつもりだから呑気なものだ わたしはこの町を捨てる 否 この町がわたしを捨てるのだ この町は わたしの本質に一片の興味もないのだから ミスタイプの奇跡で神様が病んで 黒い雨が降ったらヤだな 掌の地軸をなか空へ放り投げる くるり くらり 惑う 星よ 春の微風 物語の始まりと終わりを吹き抜け わたしは看護学校錬金科を卒業した パラケルススの誓い 結んで 卒業制作のホムンクルスは 「三日月工場」で透明な存在にされたのち 廃棄されるらしい 大量生産できる命は安値(やす)い スーパーに行けば一目瞭然 だが あの子の目に宿った光には 正体も続編もあった その章は永遠に閉じられたのだ 歩道橋の階段をかけ下りる 登る少年とすれ違うと ラムネの香りがして 不意に泣きたくなる 胸に咲いた感傷用の花 これもきっと安値い 針槐 マメ科ハリエンジュ属の落葉高木 別名ニセアカシア コピーした作り笑いとモザイクのかかった本音 都会で生きる術を身につけたわたしは 月に一度は植物園に足を運び 針槐の木の下から空を見上げる 奇数羽状複葉 丸みを帯びた葉の隙間から見る青空はどこかやさしく こゝろを浄化する ましてやこの季節は 甘い香のする白い花弁 絶え間なく降り注ぎ わたしは 恍惚のなか腕を広げ 呪文のように唱える 雪 雪 告解の雪 右手(めて)を清めよ 左手(ゆんで)を清めよ 記憶を 存在を 穢れた血を キよめて きヨめて きよメて きよめテ きヨメテ キよメテ キヨめテ キヨメて アゝ ワタシノ兵隊ハ 蜃気楼 ノヨウ 二 現レ 少女 メイタ 微笑 ミ 浮カベ さーべる ヲ 抜キ ワタシ ノ 眼球 ヲ 抉 ッタ 動脈 静脈 濁った朝(あした) 粘膜 網膜 微かな痛み (この痛みはやがて羽化して 悲哀の蝶になるだろう) わたしはベッドで目を醒ました カーテンの隙間からもれる光は 夢の傷痕 癒える間もなく傷は増え こゝろはかさぶただらけだ いつしか敵となった時を一瞥し 階下のキッチンへ向かう 慣れた手つきでコーヒーを淹れる (甘く 甘く) リビングで新聞を開くと 小さな紙切れ ヒラヒラ 舞い落ちる 拾って読むと あなたと愛を交わした 見習い天使は 崖から 落ちて 死にました R.I.P 気づけば 部屋は 義眼だらけだ まだ夢のなか フカク (フカク) 本当のわたし 沈んで しずんで シズンデeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
Dreams ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2241.6
お気に入り数: 3
投票数 : 0
ポイント数 : 16
作成日時 2018-04-12
コメント日時 2018-05-16
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 4 | 0 |
可読性 | 4 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 4 | 0 |
総合ポイント | 16 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 4 | 4 |
可読性 | 4 | 4 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 4 | 4 |
総合 | 16 | 16 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
すみません。 異母兄妹=きょうだい とお読み下さい。 あと最後、「シズンデ」のデのあとにeを3行ほど並べたかったのですが、改行されて出来ませんでした。(スマホだからかな?横書きだからかな?)
0投稿有難う御座います。 eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
0試しにPCからeを打ってみました。3行打ってみましたが残念な結果です。今後の参考にします。 eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee ↑念の為にPCから40字で改行してみました。
0三浦様 試してくださりありがとうございました。
0他の作品と何が違うのか自分でもわからないのですが、この詩の世界にぐっと入り込んで、体に重さを感じました。良い作品だと思います。 しかし、錬金科が看護学校にあるというのが面白いですね。ホムンクルスに看護の手伝いをしてもらうのでしょうか。
0豊かな物語性を感じさせる作品ですね。 くり返されるなぞの書きつけ 「あなたと愛を交わした 見習い天使は 崖から 落ちて 死にました R.I.P」 まるで一心同体であるような少年少女、あるいは、少女どうしをイメージしつつ・・・一人の肉体の中に二人の人格がいる、そういったドッペルゲンガー的な双子、のイメージもありました。 辛い現実(社会的な非難、学校と言う場での疎外)のゆえに、片方を死ぬがままに任せてしまった語り手。肉体、裸眼を思わせる瞳で始まり、義眼で終わる(現実、真実を見ない、という拒否の表現と取りたい)展開、異界的なエピソードの挿入など、構成に工夫が凝らされた、物語性、寓話性の強い作品だと思いました。 現実世界ではあり得ない看護学科(ハリーポッターが入学した魔法学校のような)場所に、むしろ逃避して、現実界のもう一人の「わたし」を見捨てた語り手、と読むことも出来そうです。 「わたしの兵隊」とは、何者か。辛い現実世界を見せないようにするための、自己抑制のための威力か。真実を知るために、片方の目を失う、というようなエピソードがしばしば神話に描かれますが、ここでは両目を失う設定ですね。 とするなら、現実を薄れさせ、人を幻想の中に閉じ込める、夢をもたらす存在が、兵士、ということになるのか・・・ もう少し散文的要素を増やして、物語的な展開を強調しても良いかもしれない、という読後感もありました。
0IHクッキングヒーター様 まずはレスが1カ月以上も遅れて申し訳ない。 この詩の世界をのぞいてくださり、何かを感じてもらえてとても嬉しいです。 ホムンクルスの作り方は澁澤龍彦のエッセイで読みました。(たしか童貞の精液と処女の経水と水銀etc. を馬の体温で温める、とか・・・絶対できないですよね)でもできたら面白いと思います。 好意的な感想本当にありがとうございました。
0まりも様 まずはレスが遅れてすみません。 この作品は空想的な短編小説(ショートショート)を6連の詩という形式で詩表現をまじえつつ物語ってみよう、というコンセプトで書きはじめました。 すぐに読み終えられる作品ですが、いろんなギミックが仕込まれており、多様な解釈ができるようになっています。 一例は「わたしの兵隊」で、これは「わたしの夢を終わらせる装置、というのはフェイクで、耐えがたい現実からわたしの心を守るための装置である(だから目を抉るときも少女のように微笑むのだ)」という解釈もできますし、「夢から醒めようとしていた語り手を、再び夢の中に閉じ込めた黒幕で、彼を倒さないかぎり現実には帰れない」という解釈も成り立つし、他にも色々な可能性が考えられます。(天使=兵隊説もあるかも) 他にも多様な解釈ができるワードがいっぱい隠れているので、それぞれの感性でこの物語を読みといてくだされば、それに勝る幸せはありません。 大賞候補にしていただいたのは望外の喜びです。(全然コメントないと思っていたので正直驚きました) これを励みに精進したいと思います。 本当にありがとうございました。
0ご指摘のとおり厳密には一貫した物語ではないですね。 「この作品を」と訂正します。 すみません。
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