別枠表示
選評
推薦作 なし 読んでよかったなと思われるものはいくつかありました。たとえば瞳子さん「三月」は、できごとを観察するのではなく、観察することでまだ起きていないできごとを現象させようとする一篇。切り詰められた四行のなかで三行目のみをひときわ立たせることで、視点におさまる世界を描き出そうとする姿勢には、削る行為のなかにこそ芸術はあると考えている私にとって、信じるに値する立ち方でした。また、るるりらさん「ときには 名もない おっぱいのように 」は、男女双方から神話化・問題化されやすい乳房という比喩を、そうしたイメージから切り離しながら、ただ生命を育む力(または三月の陽光)を描くために使っており、そのようなシンプルな詩的営為は文化のなかにこれほどむやみに性の神話があふれている今の時代にはますます必要だと感じました。クヮン・アイ・ユウさん「「、」も「。」も打てずにいるのに」は生きていくこと自体に内在する逡巡や切実さをすっと入ってくる言葉で思い出させてくれました。Rさん「魔法のふた」はラストの「ふた//貸したげる。/今は、そーゆー気分だから//まあ長くても/、/五分、//ね。//まだ夜じゃないし、」という絶妙な殺し文句だけで私のこころをわしづかみにしてくれました。survofさん「はな、うてと」は優劣を述べるのにはふさわしくありませんが、未完の試行として挑戦の意欲を感じました。いかいかさん「あまりにも、長く 」は、書き手自身が意識しているかどうかはともかくこれまでにもたびたび扱ってきた「自分には誰よりも尊敬すべき稀有な人がいるのにその人は報われていない」という主題のバリエーションから開始されていて、その主題への変わらないこだわりを私に感慨深く思い起こさせました。 が、月に一度、それもひとつしか推薦できないのに、その一作とするにはどの作も他の作を上回る説得力を持ちませんでした。ひとつひとつは以上のように見るべきところがあっても、これは十年経ってもずっと覚えているだろうといえるほど抜きん出ている作はありませんでした。私は実際にたとえば十五年前にインターネットで読んだ詩をいくつも輝かしく思い出せるのですが、それほど優れたものの新たな登場を今後のこの場に強く期待しています。
選評 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1031.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-04-05
コメント日時 2018-04-06
原口さん 選評ありがとうございます。一読して、やられたっという感があります。「該当無し」大丈夫です。むしろ、嬉しいです。 既存の詩界隈にある固定されてしまった感がある選評の概念がぶっ壊れてしまって欲しいというのが、三浦個人の裏テーマとしてあります。 感謝致します。これからも三浦を見捨てないでください!
0読んで良かった作品の ひとつに、わたしの詩を 挙げていただき ありがとうございます。とても、はげみになります。
0言及して頂きありがとうございます。私はアレに酷評を期待していたので、まさか良い意味で取り上げて頂けるなんて! ちょっと複雑な気持ちですが、やっぱり嬉しいです。 『削る行為のなかにこそ芸術はある』とのこと。私もどちらかといえば、『削る』ことを重視しています。ただ実践するとなると難しく、たまに反動なのか、ゴテゴテに盛りたくなりますが……。
0