本懐へ
私は海にのまれていたい
波の音 鳥の声 だけでいい
イヤホンで聴くサンプリングされたものじゃない
耳管を埋め尽くすほどの音とともに
髪のスタイルが意味をなくすほどの風を浴びて
ただ時間を溶かしていたい
お金も 生活も 会話も
なにもなくていい
押し寄せる波がすべてを掻っ攫ってくれればいい
少し高い波が押し寄せて 後ろに下がり
潮がひいて 瀬戸際に進んで
背後で陽の落ちる途中の朱色が残った空を
ぼんやりと写し出す砂浜を眺めて消えたい
スクリーンはいつのまにか消えていた
でも泡が残っていて音もせずに
じゅわぁって数を減らして跡だけ残る
時間の経過は気にならない
でも写真を撮って時のISO感度が上がっていき
雲を優しく照らす色は青の絵の具を混ぜたようになり
現実が視界の片隅に現れて
必死に見ないように 見えないフリを
ひんやりとした
足元が海の領域になっていた
帰れ なのか 来い なのか
巨大な腕が海底から伸びてきて
ひきづり込まれて別にいいんだけど
振り返れば地平線上の橙は最後足掻きを見せていた
この先を進めば 生きる が待っている
街灯やヘッドライトが文明を主張して
ここがお前の居場所だとのたまっている
思考の中がうるさくなって波のざわめきが聞こえづらい
いやだけど ほんとにいやだけど
海にのまれて還るのはまたいつか
連れ去っておくれ
って勝手な約束を取り付けて
天上が蒼黒に染まる前にと
仕方なく しょうがなく 明るい方へ歩を進めた
憂いを書き留めるスマホで道を照らしながら
小高い峠を越えたあたりで顔をあげれば
まだ微かに灯る紅が小さな爆炎に見え
ふと 気づいた
まだ波の音が聞こえることに
鈴虫が鳴き始めたことに
崩れやすい砂場でも足を動かす勇気をもらった
おやすみ 今日のささやかな自殺願望よ
作品データ
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作成日時 2024-11-18
コメント日時 2024-11-18
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) |
叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
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2024/11/21 20時41分48秒現在
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