いつか教会のあった場所を、
一歩踏み出したその向こう、
かもめが遠く飛び去っていく草原には、
墓標がいくつか点在していて、
生前、悲しくも大切にはされなかった、
死者を弔う息吹に満ちている。
彼は東京の街の賑わいを知らないし、
ロンドンの街灯の美しさも知らないし、
上海の朱家角に足を踏み入れたこともない。
ただ、煙草を吸わないのに、
ここに煙草の一本でもあれば、
充分、様になると思える感受があった。
オレンジを割ったような太陽が沈みかけて、
青かった空が悪い夢でも見るように、
灰色にくすんでいく時にも、
彼には絞り出す声があった。
テーマパークの彼女の想い出も、
小さな団地の父母の面影も、
E・サティと眠る兄の亡きがらも、
写真フォルダと一緒に燃えていく。
真昼の眩しさが本物だとしても、
背中を向けて死してなお、
喉から声をあげると、
墓碑の上でほたるが光を、
光を発している。
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 305.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
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作成日時 2024-11-04
コメント日時 2024-11-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 20時55分58秒現在
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寂しさや弔いを思わせますが、対照的な光あふれている描写がとても良いですね。
0最初の二文から惹きつけられました 更に、どこをとっても、良さを味わえます ありがとうございました!
0羽田さん、コメントありがとうございます。光溢れる描写、とても嬉しいです。この詩は去り行くもの、死していくものへの鎮魂、と同時にその先にも光はともるという意図で作りました。とても苦労した詩作品でしたが、書いてよかったと思っています。
0小銭好きさん、コメントありがとうございます。最初の二文だけで、というのは嬉しいですね。僕もこの詩は慣性で書かなかった、僕が使いがちな表現を使わなかったので、惹きつける要素あったのでしょう。個人的には「煙草を吸わないのに…」や「上海の朱家角にも足を…」などが気に入っています。いい表現だな、と。
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