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背伸びした"27"(短編小説・エッセイ)
背筋が異様に伸びている彼。 いつも黒いTシャツに黒のスキニーをお気に入りで着て、くたびれた古着の黒いキャップをかぶっている。 ラインは細くて、スラッと伸びる首。 佇まいは、アンニュイそのものだった。 私たちには同じ共通点がある。 私たちの敬愛なるNirvanaのカートコバーンは27歳に自ら命を断ち亡くなった。 考えてみれば、ジョニス・ジョップリンも、ジミヘンドリックもドアーズのジムモリソンもそうだ。 そしてなぜか27歳で死ぬんじゃないかって私たちも怯えていたこと。 そのことに気付いたのは彼の家にいる時ふとNirvanaの曲が流れた瞬間だ 「あ!この曲!」 「え?なに、聴くの?意外だね。」 「私カートコバーン大好きなんだ!」 「そうなんだ、俺もだよ。かっこいいよなぁ。」 私たちが夢中になるカートコバーン。 何かに取り憑かれたように血をたぎらせながら叫ぶような声。 ライブパフォーマンスはさらにギターをぶちのめし圧巻だった。 彼の心の闇を歌う魂は、当時の熱狂的なファンの代弁ともなった。 彼は本当にかっこよくて、私たちの憧れで憧れすぎた私たちは何を勘違いしたのか彼が亡くなった"27歳"自分達も死ぬんじゃないかと変なジレンマを抱いていた。 だいたいとてつもなく健全で、ミュージシャンでもない私たち。都市部に住んでる、誰がどう見ても平凡な二人だ。2人は勘違いも肌はだしい、中二病のような考えに爆笑した。 「はー…おっかし。気づいたら越えてたな。」 「あたりまえなんだけどね。」 笑った後、スーパーに行こうってなり彼はカートもよく着た古着のセーターを着てお気に入りのくたびれたキャップを被る。 わたしも古着のもう穴の空いたアランニットカーディガンを来てスニーカーを履く。 2人はひんやりした外に出て並んで歩いた。 どうも彼は恥ずかしがり屋らしい。 手はポケットに入れて、いつものかなり姿勢の良い姿で首を長くして歩いている。 前、友達に猫背になってることを指摘され気にしているらしかった。 私もよく注意されるから、気をつけているつもりだかすぐに猫背になってしまう。そのため、背筋がいつも異様に伸びている彼を見るたびすごいなぁと感心した。 すると、 「背筋ってさ、伸びてた方が服カッコ良く見えるよなぁ。」 と彼がボソリと言った。 確かに… 「でもさ、たまに猫背になってないとなんか似合わない人もいるよね。なんだろ、猫背だからこそ雰囲気がある人っているなぁって。」 …。 彼は黙り込んだ。あれ?なんか変なこと言ったかな? 「ごめん、なんか変なこといったかな?」 「あ、や、なんか寛容というか、分け隔てない考えするよね。なんていうかなんでも受け入れてくれるよね、考え的に。」 …果たしてそうなのだろうか?言われたことがなかったからびっくりした。彼的には共感して欲しかったのだろうか。 ただ大人な考えを言われた気がする。 私がさっきなぜ否定的なことを言ったかというと、ある知り合いの古着屋の店員さんを思い出して言ったのだった。 彼はいつの日か会った道端で、ヒョロ長い身体にイヤホンをつけて、猫背の姿勢でどこかノリノリで横断歩道を渡っていたことがあった。 イヤホンを付けていて自分の世界に浸っていたため、私には気づかなかったが、かなりその猫背具合と古着がマッチしていて異様にアンニュイな雰囲気が出て、まさしくカッコいい様であった。 それから私は猫背である自分に少しだけ肯定的だったが、私の服や身長ではただのおばあちゃんみたいだなと自笑せざるおえなくなった。 シャイで気にしいな彼は古着のくたびれた黒のキャップを被り直し、更に背筋を綺麗に伸ばし歩き出す。 置いてかれないように、ついて行くとセーターに穴が空いていた。 そんな穴でも愛おしい、気づかれないように後ろから手を繋ぎまた背筋を伸ばすのだ。
背伸びした"27"(短編小説・エッセイ) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 291.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-02
コメント日時 2024-07-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
猫背がグランジのルーズ感を際立たせていますね。 インターネットが急速に普及し始める90年代、シアトル発祥のグランジムーブメントが世界を席巻しました。 やがて、椎名林檎が「だってカートみたいだから私がコートニーじゃない」と厭世観たっぷりに歌い、X世代の絶対的アイコンとなったカート・コバーン。思春期真っ盛りだった当時の私も「クラブ27」には憧れを抱いたものでした。 27という数字は若気の至りのピーク値、ある種の沸点を数値化したものという認識です。振り返ると勢いで死んじゃわなくてよかったって場面が平均して27歳頃に多いのかなと
028歳が西洋文学でよく、子どもと大人の分岐点として書かれてあります。
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