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僕の顔
コンタクトつけたまま寝たりしてたら、目に傷がつきまくったらしくて眼科の先生にコンタクトを禁止されたけど、眼鏡は嫌いでいつも裸眼で過ごすことにしたから、ド近眼の僕の視界はひどくぼんやりしてる。好きなあの子のことをずっと見つめていられるのは相手の顔がよく見えなくて、相手の表情が全然分からないから。だから、目が合ったって分からないし、ずっとあの子のことばかり考えながらずっとあの子のことを見つめていたから、クラス中の人に僕が誰のことが好きか知られてしまったし、相手にもバレてしまったけど、そんなことはなんか全然どうでもよくて、その子に話しかけられたときもどういうわけか鋭く睨み返してしまった。 そういえば「この間の文化祭の時に友達が君のこと盗撮してたよ」って友達の子にいわれたけど、僕はいつも堂々と好きな子のことをぼんやり見つめているのだから、その友達の友達の子も目を悪くしてずっと僕のこと見つめていればお互い気兼ねせずに好きな人を好きなだけ見つめていられるのになって思ったけど、あ、そうか他校の子かって変に納得してなんかそのこともどうでもよくなって、僕はこの間怒鳴り合っていた父親と母親の喧嘩の内容について考えていた。 眼科のせいで酷く遅刻して午後に登校したらまだ授業中で教室のほうを見たら同じクラスの子が笑いながら手を振ってくれたので手を振り返した。そういえば下校するときもバス停の前で何人かの子がいつも僕の名前を呼んで手を振りながらバイバイしてくれるけど目が悪いから誰だかよく分からない。教室の中のその子は時々宿題のこととかを聞いてくるからその子のために結構丁寧にノートは書くようにしてたし、今思えばとても綺麗な子だったと思うけど、何か二人で宿題以外の会話したことってあったっけな、あまり覚えていない。 卒業した後に時々その子が夢にでてきたのは意外だったし、なんでなのかよく分からないけど、でも結局卒業した後にも連絡くれたのは、告白してきたどこかの知らない人と、あとは僕が好きだった子の友達の子だけで、そのときはカラオケに誘ってくれたけどなんか面倒くさくて断った。僕の好きな子もいるから来ればいいのにっていわれて、そういえばこの子たち、前にも遊びに誘ってくれたのに僕は一度も遊びに行ったことないのを思い出したけど、僕の頭はぼうっとしていてそんなことはもうどうでもよくて、それからちょっと自分の顔のことが気になって、適当に笑って相槌をうってバイバイしたら少し耳鳴りがして耳を塞いだ。 卒業する少し前から僕は体調を壊すことが多くなって、ひどく痩せていってポッキーみたいになっておまけに顔がとても不細工になって友達の男子に「お前不細工になったな」っていわれたときはちょっとショックだったし、中学のときに仲の良かった子にしばらくぶりに会ったときにも「なんか可愛くなくなったね」っていわれて、どうしてだかとても傷ついて、その頃から僕は以前にも増して鏡を見つめていることが多くなって、家に帰ったらイヤホンで音楽聴きながら深夜までずっと鏡を見つめて自分の顔がもう可愛くなくなってしまったことと居間から聞こえてくる両親の喧嘩のことだけを考えていた。 もともとぼうっとしていた視界はもっとぼうっとしてきて、最近はいろいろなことがどうでもいい。昼まで寝て深夜のバイトしながらだらだらと暮らして、グデグデしながらどうしたら僕の顔はもとに戻るんだろうってずっと鏡ばかり見つめて、気づいたらもう女の子は誰も声をかけてくれなくなって、誰も手を振ってくれなくなって、僕はどんどんぼうっとして、部屋には空のペットボトルと読み終わった漫画が散乱して、僕の顔はどんどん醜くなっていって、これだけは全然どうでもよくなくて、部屋から空を見上げたらコンクリートみたいな灰色で、気付いたら夕立になった。近くでカラスが鳴いているのが聞こえて黒い電線の束がぶらんぶらんと揺れているのが見えた。
僕の顔 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1963.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 3
作成日時 2018-02-06
コメント日時 2018-02-24
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
文をフツーにだらだらと連ねる文体の作品って、なかなかだらだら書けないですよね。本当にだらだら書くと後で見返したときにどこかに出すのをやめようかなと思うほど作品としてまとまりがなくなるし、かと言って計算づくで作り込むとせっかくのだらだら感が失われてしまって逆にちょっとフツーがフトゥになっちゃうというか、だからそこはやっぱりちょうどいいところをうろうろするしかないんですけど、まあこの作品はまさにだらだらしゃべりながら時系列も性別も超えてうろうろしっぱなしというか、実際、他人の顔がよく見えないので自分の顔にもしばらく頓着しなかったけれどあるとき友達になんか言われて気づいたら思春期くぐって顔が変わっていくのがたまらなくなったというそのまわりをぐるぐる回ってる感じですね。そうかこんなふうにうろつけばいいんだな。本題を話してしまったのでこの文終わり。
0原口昇平さん 自分が意識しているものも、していないものも含めて的確にコメントくださりとても嬉しいです。なんだか作品にとってとても良い読み手に良いタイミングで出会えている気がしてとても嬉しく感じました。特に「まさにだらだらしゃべりながら時系列も性別も超えてうろうろしっぱなし」というご指摘とても嬉しい感想です。ありがとうございます!
0花緒さん おそらく今回は「だらだら書いていたら次第にコンセプトが浮かび上がることになった」のほうが正解だと思います。それから花緒さんのご指摘もとても的を得て射たもので嬉しく思いました。「外界からの視線への意識」の変化は特に意識して書いた点だったように思いますし、それがとても「内省的」であるというのは鋭いご指摘だな、と感じました。過去の自分を色濃く投影した部分も多々あり、だらだらと書いた割にはかなり思い入れの強い作品でもあります。私の作品のなかではだいぶ「意味」を含ませた作品なのではないかと。。とてもうれしいコメントでした。ありがとうございました!
0こんばんは。 面白かったです。 私は普段からあまり長い読み物を読めないのですが、この『僕の顔』なぜか最後まで読めました(「は・が・の・を・に」が正しく使われているからでしょうかね。 ……『僕』が、勉強したという記述が無いですね。ですが人が好いところがあって、それが技術ではなくてこの文章に惹かれる所以でしょうか。 などと思いました
0渚鳥 さん 確かに勉強した記述があまりないですね...いわれて初めて気づきました、笑。作中の「僕」は確かに人がいいところがありますが、裏を返せば、自分以外どうでもいいという極度に自己中なところもあるのかもしれませんね(想像ですけど)。逆にそういうタイプの人って人を差別したりせずにものすごく人あたりもよく、接し方もフラットだし基本親切だったりして不思議だな、と思うことがあります。
0survofさん、こんにちは。 そうか、この書き方は「だらだら書く」と捉えられるのか、と、他の方のコメントを読んで思いました。 こういう書き方は好きで私もよく使うのですが、書いている側としては、思考を一定の間途切らさずに書く、とか、一定時間息継ぎしないで書く、といった意識だったので、読み手側との認識のずれにちょっとばかり驚きました。 ごくごく私的な感想を述べますと、顔ってそんなに大事かなあ、です。私は常にノーメイクなのですが、鏡を見なければどんな顔しているか自分ではわからないし、他人からどう見えているかなんてどうでもいい、と思っていて、そういう意味では共感する部分はないように思います。 それなのになぜコメントを書いたかというと、この書き方が好きだと表明したかったからです。うん、なんかうまく伝わるか自信がないけれど。
0こうだたけみさん こめんとありがとうございます!いや、嬉しいです!この書き方、自分でもかなり気に入っているので。書いている側の意識としては私としても「思考を一定の間途切らさずに書く、とか、一定時間息継ぎしないで書く」のほうが感覚として近いです。が、「だらだら」という感覚にもかなり近いんです。息継ぎしないで書いているのに、実際はものすごく無駄な動作をだらだらと延々と続けている文章ではないかな、、と自分でも思います。内容的にも。 顔に関しては「他人からどう見えているかなんてどうでもいい」と思えているうちはブサイクだろうが何だろうが全然いいんだと思うんですよ。でも人って結構外見で人の扱いを変えてしまう生き物なんだと思います。残酷なくらい正直に扱いを変えてしまうと自分でも自分ことをそう思います。大きな容姿の変化を人生で度々経験してもなお「顔なんてどうでもいい」、そう言えるのであればその人はよっぽど強い人だと思います。人間について語るとき顔だけを取り出していい悪いをいうものではない、という意味では顔はそれほど大切ではない。「外見は内面の一番外側」という言葉には結構同意するところがあるものの「外見の印象でその人の何が分かるのか?」という気持ちもあり、そう意味では「顔はそれほど大切ではないな」と思います。でも、人は人を特に最初は外見でしか判断できない。そういう意味では「顔はとても大事だな」と思います。なんか、長くなってしまいました。とてもいいコメントいただいたので嬉しくなってつい色々書いてしまいました、笑。
0蔀 県 さん コメントありがとうございます!「思考はまとまりなく動いていて、それは言い換えればいろんなことに知覚が及んでいるということで、つまり皮膚感覚が鋭い」というご感想、おそらくいままでビーレビでいただいた感想のなかで一番嬉しいです!まさにその感覚こそが自分がいろいろな形で表現しようとしてきたもの一つなのですが、それをこのように直接感想でご指摘いただけるのは非常に嬉しく思いました。
0昔の印象深い出来事がマシンガンの弾みたいに次々と自分にぶつかってきて、詩を読み進めるほどにダメージが重なってく様が綺麗に形になっているように感じました。思い出し始めたら、思い出がとめどなく溢れてきてるところも、自制が効かない現状を暗に表現しているのかなぁ、と思います。 初見では単に長いなあと思うだけだったのですが、素朴な語り口だからかするすると読めました。 面白かったです!
0こんばんは。ご気分を害されなかったようでよかったです。 顔に関して。そうですねえ、「人は人を特に最初は外見でしか判断できない」のはおっしゃる通りだと思います。でも、外見=顔なのかしら? その人全体が醸し出す雰囲気、清潔かどうか、どんな表情をしているかなど、パッと見て得られた情報を総合的に見て判断するのであって、顔の造作は、その中の一要素でしかない、というのが私の意見ですかね。 不細工だってどうしても魅力的な人はいるし、綺麗な顔をしていたって好きになれない人はいるし。やっぱり、私は顔なんてどうでもいいなあと思うので、このテーマで書くことはたぶんないのだろうなと思います。 P.S.安部公房の「他人の顔」という小説があるけれど、あの主人公のように事故などで原型をとどめないほど顔が変わってしまったとしたら、私も顔について少しは考えるかもしれません。
0社町 迅さん 楽しんでいただけて嬉しいです。「詩を読み進めるほどにダメージが重なってく様」、実は結構意識したので嬉しいです!自分の思考は連想に歯止めが効かないタイプなのでいろいろと鋭いご指摘だなと思いました。ありがとうございます!
0こうだたけみさん ああ、なるほど。外見というか人の魅力に関するこうだたけみさんの意見にはまったく同感です!とはいえ、この作品のベースになっている私の思春期にはそんなゆとりなどまったくありませんでしたね。。他の人の顔が羨ましくて仕方なかったです。
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