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春の便り
私は今、水路沿いのベンチに座り、先ほど買ったパンを味わいながら一本のコーヒーボトルを嗜んでいる。 周りの土にも緑が見え始め、暖かな太陽の光と青空で着色された水面と、透けた向こうの底を眺めていると、緩やかに時が流れていくようである。 時折流れてくる、ひとひらの花弁が春の便りを水路沿いの人々に届けて回っている。 この辺りではないどこかで既に春が咲いているのだろう。 暖かい。 しばらく時が経てば、あたりには人が増え、またしばらく経てば、また1人になる。 鴨の羽ばたきに心動かされる少年や井戸端会議に勤しむ老婆を見ていると、幾分か孤独が紛れるかと思えば、意外にも先ほどまで感じていた心地よさが離れていくのである。 これほど暖かい孤独というものは他には無いかもしれない。 しかし、彼らを心の底から疎ましいと思う事もない。この独り占めの時間の心地よさは彼らがもたらしてくれるのだから。 食事を終えた私は、次の春の便りを見届けてから再び歩み出そうと思う。
春の便り ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 403.8
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-03-03
コメント日時 2024-03-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
叙述の形式を取りながら、比喩的表現によって詩に近づこうという試みはとても素晴らしいと思う。 >鴨の羽ばたきに心動かされる少年 >暖かい孤独 といった詩的発見をうまく組み合わせている点、そしてそれを損なわない文体で構成されている点はこの作品の見るべき美点であろう しかし散文的(すなわち一般性に依拠しすぎ)な点は、どうしても瑕疵として感じられてしまう。 あるいは、いっそ「量」を増やすことで「小説」としてまとめられた方が、この作品にとっては良いのかもしれない 繊細に環境を観察する目をお持ちでいらっしゃると思うので、その目線を自らにも注いだ作品を期待したい
0文章の中にゆっくりと流れていく時間があって、それを見ているようでした。エッセイに近いのかもしれません。こういった文章を書き慣れていらっしゃるというか、間の取り方や話の展開も辻褄が合っていて、読んでいて心地が良かったです。普通に上手だと感じました。
0穏やかな孤独ですね。お名前、エッセエビ、さんっておもしろくて吹き出してしまいました!
0細かいところではありますが、「嗜んでいる」のはコーヒーではなくコーヒーボトル。 コーヒーを飲むことによって他と同じでなくなった(そして価値も失われつつある)コーヒーボトルの謂わば「引き算の孤独」と、「私」にとっての「暖かい孤独」を対比しているのかもしれないと感じる。美しい情景。
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