さらさらと、枯れ落ちた葉が
校庭を這う風に追われ
やがて空へと逃げてゆく放課後
音楽室のピアノはショパンを奏で
窓からのかよわい陽射しと
僕を汚す、黒板のひどい落書き
鞄を逆さにすれば、
たちまち机のまわりに
落ちた画鋲が散らばる
誰もいない教室に
君は影のようにやって来て言った、
「こんにちわ
逢うのはじめてね、
私、もうすぐ転校するの
今度逢えるのは、
ずっと先。未来だわ――
少しばかり気取った店の
奥まった場所に眼をやると
大理石のカウンターテーブルの隅に
豪華に飾られたフラワーアレンジメント
その傍らに
洒落たパーティードレスを着た
大人の君がいた
「ジンフィズを飲んでいたの
それで私のこと、どうして判ったの?
「たまらなく寂しかったから
君を探していたんだ、あてどなく
「きっとそのうちにまた逢えるわ
「今度逢えるのは、いつ?
「――十年後かしら
十年というのは、
あっという間に過ぎて
まだ少女の君が、
終電を待ってベンチに座る
「もしかして君はリコ?
いや、おじさん酔っ払っるから
声をかけるのが、やっとだった
それでも少女は、あの日・・・・
教室で別れたときのままだった
「ええ。永かったわね、あれから
つもる話を堪えて訊くと、
彼女は今、塾の帰りだという
「あっ、そういえばその服。
君の学校は‥‥
「――わかる?
彼女は悪戯げに笑う。
「わかるさ、娘とおなじ服だもの
「彼女は一学年下のクラスよ
「なんだって。そう、そうなのか
あ、ええと。今度は、いつ?
「そうね。きっと、十年後
あれから十年。
長旅の途中、
窓の外は闇‥‥
本を読むが、落ち着かない
親切なフライトアテンダントは
もしかするとリコかもしれなかった
そういえば、
胃を患って入院したときの
やさしい看護婦さんも
リコだと錯覚した
彼女とつぎに逢う日を――
僕は、どんなに待ちわびていることか
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 744.6
お気に入り数: 0
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作成日時 2024-03-01
コメント日時 2024-03-08
#現代詩
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:744.6
2024/12/04 02時15分30秒現在
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ほんとうに、十年はあっという間に過ぎますね。
0何とも不思議な空間だと思います。 リコと主人公のやり取りが絶妙ですね。 素敵な作品です。
0過去から未来へ、そしていま。ここに描かれた空間の往復書簡は終わりの連段が佳いので白昼夢のような追想も読めてしまいますね。この辺りは作者の巧みさだ。
0夢十夜の第一夜を思い出した タイトルで損をしているなと思った 行替詩でありながら、散文的な叙述を行うことにより、情報としては散文的に伝達しつつも、叙情を韻律によって継続させることに成功していると思う 最初は逢うことを求めていた訳ではないのに、 「 たまらなく寂しかったから 「君」を探すことになった 寂しさは、どこからやってくるのか、その一つの可能性として時間を示唆している作品として読んだ 寂しさを癒すのも時間であるなら、寂しさが沈澱し蓄積していくのも、また時間なのだ 時間という本来線上であるべきものが、四次元であることを条件に歪むとき、認識体である「僕」の肉体は点状に存在することを止める 「待ち侘びる」ことが、しみじみと胸に迫ってくる
0コメントをありがとうございます。 十年はあっという間ですが、 今日という日は 美しい少年、 そして少女のように 格別に愛おしいものです。
0コメントをありがとうございます。 ついさっき、レタス炒飯を食べました。 レタスさんの足元には及びませんが、 ボクも立派なレタス人になりたいです。 ちなみに叔母が埼玉に住んでいます。 いつも「そこらへんの草天丼」とか食べてるようです。 なので錦松梅を贈ったらとても喜んでくれました、、
0コメントをありがとうございます。 ボクは詩人としては駄目なんですが、 痴人としては【ストーリーテラー】です。 蟻の門渡りをハイピッチでチュパチュパしたり、 ベローチェ、トゥルン・ペロチェッタとかは得意技です、、
0コメントをありがとうございます。 リコは人によって「見え方」が違うみたいです。 ある人にとっては白い鞠を持った金髪の白いワンピースを着た少女だったりします。 ――私の悪魔は可愛い少女なんだ。(「悪魔の首飾り」劇中のセリフより) 映画「世にも怪奇な物語」-第三話「悪魔の首飾り」 https://youtu.be/_aGswZAQKU4?si=VhpYOKVqt4HhRGz6
0atsuchan69さん、埼玉といっても東京勤めが多くてベッドタウンになっているのです。 確かに大阪や東京とは違いますけれども… (^^; それにつけてもatsuchan69さんはグルメですね。感嘆します!
0関東は山が見えななくて、どこまでもだだっ広いですね。東京都内でもあきる野市とかは山がありますが。 ボクは美味しい食べ物が好きですが、朝は目玉焼きとか鰯の丸干しや糠漬けです。じゃこ天エッグとかも好きです。朝御飯は毎日、参鶏湯ばかりだったり、卵サンドだったり、キャンプ用のクッカーで炊いた卵かけ御飯だったりと、同じパターンがしばらく続きます。オートミールにハマった時期もあります。レタスさんの影響で「シーザーサラダ期」も短いながらありました。現在は「和食期」で、ご飯とお味噌汁、目玉焼きと糠漬けといったメニューです。中華粥も好きなのですが、これには塩昆布の胡麻油和えが仲良しです。あ、「オイルサーディン期」にはトーストとポタージュとオイルサーディンばっかしを食べていましたが、これにはコールスローサラダがよく合うんです。それからしばらくすると、今度は「エッグマフィン期」になってマフィンに合う10秒ビシソワーズとかをトマトジュースと牛乳で作ったりします。こーゆー毎日をボクはエックスで呟いていますが、つくづく変なオジサンです。
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