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憧憬を振り返る
辛口のカレーを食べている。額の汗を拭いながら。 分厚い本を読んでいる。漢字辞典は閉じたまま。 暗い夜道を帰っている。手を引く人はいないまま。 電車に一人揺られている。当然切符は一枚だけ。 揺れるに合わせて窓を見る。遠くに灯る窓の光。これから帰る私の家には未だ灯らぬ帰路の迎え火。 いつからか、それをつけるのは私になった。誰もいない家の中。別にそれは苦痛じゃないし、小さな暗闇は私の城だ。光を灯せば私だけの世界。 ただいま、と、呼ぶ声に変える言葉はなくたって。 晩御飯は私の好きなものだけ。 本棚には私が好きな本だけ。 夜道を遠回りするのは私の気分次第で、電車を降りてからは誰も私を急かさない。 自由の匂いをめいっぱい吸い込んで、夜を小走りにかき分ける。 今日は随分久しぶりに、甘口のカレーを作るのだ。
憧憬を振り返る ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 451.0
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-02-13
コメント日時 2024-02-14
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
二人が一人になるお話、そこにある自由について、本とカレーの記述からそんな連想が浮かびました。ただ確証は持てなくて、過去ではなく憧憬にされたところが少し引っ掛かっていて、それは作中のわたしが思い描いた単なる絵空事なのかもしれませんし、憧れていたけど現実は違ったみたいなことなのかもしれなくて、でも仮にこの、自由とは? みたいな部分を主題に据えると、一般的な感覚に反するようなどこか晴れやかな終わり方が、作品全体の明度を高くしていて、電球色に似た暖かい光に包まれていくような読後の感覚がありました。作者の方が明示された自由は、その選択の色そのものだと思いました。
0初連にあるのは今はもういないひとに重ねた自宅の己でしょうか。 >これから帰る私の家には未だ灯らぬ帰路の迎え火。 という繊細な言葉の選び方から推測して、甘口のカレーが私の小さな頃を、示すのだとすれば、命日かな。とtitleの〝憧憬を振り返る〟から、推測してみました。〝私〟についてすっと心に入ってきます。素敵な詩です。(誤読でしたらすいません)
0メッセージはストレートに感じられます。カレー好きなので、甘口と辛口のところをもう少し丁寧に表現いただけたらさらに深く入り込めたと思います。カレー好きの前提なのでそうでなければ気にしないでください。
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