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春の幽霊
幽霊たるわたくしは 澄みきった春の青空に透明です しかし口先はしぶきしているのですが それは天空の嵐の涙とおもわれます 幽霊たるわたくしは 澄みきった春の波音に純朴なまま このまま山の鐘鳴るあの山の 夏までいきたいと思うけれども足がない 武装をといて休んでみれば 武装自体がわたしのそのまんまで だからわたしに実体がない それからです じぶんをさがしあてどなく しかし幽体自体がわたくしであって 相談所に ふるえる腕で電話するしかない いや 電話をしない 只世のひと事の泣き笑いの度 ワイシャツのじんわりするのみです なぞなぞ──椿、葉が落ちて露となる、それはなにぞ? わたくしは答えず、ただ先一年をおもうばかり その一年もあそこらの雲より軽い 幽霊たるわたくしは 澄みきった春の青空に透明です しかし口先はしぶきしているのですが それは天空の嵐の涙とおもわれます せわしいせわしい幽霊です ガス灯にも劣る存在 なんぞと書いて 安心している幽霊です
春の幽霊 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 590.2
お気に入り数: 3
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-02-13
コメント日時 2024-02-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
読み終えた後の感情が宙に浮いているような、不思議な感覚を心に灯す作品だと思いました。洗練された作品というよりも、この作品自体が、不完全さが見せる雪のような謎々だと思いました。
1その本質、そっと現される今っぽい相談所のくだりで妙な納得させられてしまう筆力です。幾何反射でしょうか、それとも雪でしょうか。涙かもしれませんね。とてもきれいに書かれています。うまい!
1幽霊と自嘲する語りの物悲しさがいいなと思いました。
1最初の二行で、ああ、良いなと染みてきた詩でした。 幽霊という透明な存在になることは、決して悪いことばかりでなく、その透明な身体は春の青空や、春の澄み切った波音をそのまま通していくフィルターとなる。 最近、「あなた」や「君」を詩に使う人が多い中で(多少うんざりしていたのてすが)、この詩は説明口調で直接こちらに語りかけているようにも思えます。だからこそ、不思議とこの幽霊の孤独感というのがない。それは読み手がこの幽霊に寄り添えられる、ように書かれているからだと感じました。
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