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健康増進法
神様が人間の事を気にかけているとすれば、その理由は 人間が自分の肉体を健康に保とうと気にするのと同じだ 信仰のない蛇は神の肉にはならない 蛇が神様を信じないのは蛇には神が見えるからだ そこに見えるものをそこにいるとわざわざ信じ込む必要はない おれもときどき神様とは友だちだったような気がする 普段は熱力学の法則と呼ばれるのを好むように思える神様も たまにはおれとも個人的に親睦を深めようとする おれもたまにはジョギングでもしてみようかしらと思うのは 肉体を苦しめたいと思うからだった 肉体が苦しめば精神は喜ぶ 肉体が嫌がる様は心をおおいに満足させる 支配しているのはどちらか、思い知らせることができる 苦痛をみずから求めることでしか、肉の欲に打ち克つことはできない おれはジョギングするのをやめる おれは走るためだけに走ったりはしない おれはいじけた精神に味方して身体を虐めたりはしない そういうときに神様は出張先の盛り場の路地裏でおれを暴行する 2軒目探されてますか? おひとりですか? だったら女の子と相席どうです? いいスーツを着てますね…あ? いま、なんつった、こら おれは若者に小突き回される、必死に身をよじる 神にじゃれつかれておれは歓喜の舞を踊る すぐに年上の男が来て若者を制す すみませんね、行ってください、と小さく頭を下げた年上の男の頬をおれは殴りつける こいつは神様じゃない 男は表情を変えることもなく手際よくおれを制圧し、交番に突き出す 事情聴取を受けたおれは男と示談し、治療費と慰謝料を払って解放される おれを構成するひとつひとつの細胞がおれの意志を知らないとしたら、 おれが構成する世界の意志をおれがどうやって知ることができるというのか おれはホテルに戻るタクシーの車内でタバコに火をつけ、 運転手に暴言を吐く タクシーは進路を変えて 交番へと向かう おれは罪を告白し、赦しを乞うのだ
健康増進法 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 542.0
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-02-10
コメント日時 2024-02-12
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ゼッケンさんの詩、好きです 直近の「プレゼント」や「埋設」しかまだ当たれてないですが、テーマの提示の仕方が上手すぎる気がします。 良いところを具体的に、分析して自分なりに落とし込もうと思いますが、 第一連、「おれ」の世界の捉え方から始まりますが、なんとも賛否両論ありそうな偏見が含まれている気がしますね。たとえばこの詩の考えに沿うと、神様は人間を「信仰」の面で制御しますが、肉体の細胞には「信仰」の機能はない。代わりに条件反射による発熱などの「反応」しか持たない(もし細胞にも「信仰」があるとするならば、無神論者はがん細胞のようなものだろうか?)。神-人間と人間-肉体の対比はあたかも当然のように書かれるが、少し歪曲しているようにも思える。しかし、その思想の強引さがこの詩の魅力で、惹き付けられる。 後半、面白いですね。神がまるで猫じゃらし、いや、罪じゃらしで「おれ」とじゃれている感じですね。罪という意識を通して、神様と遊んでいる。罪悪感の向こうに神がいる。一見滑稽に見える「おれ」の行動、その罪を犯す行動が、逆に「おれ」の信仰につながっている。 この逆説の主張はちょっとため息が出ますね…素晴らしい詩だと思いました。
0>この逆説の主張はちょっとため息が出ますね… もう、この褒め上手。ゼッケン殺すにゃ刃物はいらぬ ものの三度も褒めりゃいい。4度目も褒めて。ゼッケンです。ミハイさん、こんにちは。「役者殺すにゃ刃物はいらぬ/ものの三度もほめりゃいい」って褒められると慢心して芸がダメになってしまうことへの戒めらしいですけど、安心して褒めてください、褒められない時には読者が分かっていないとか言います。芸を磨くにはどっちがいいんでしょうね? 最近は褒めて伸ばす式が推奨されてるようですけど、ミハイさんみたいにどこがいいのかをきちんと説明するのがとっても大事なんだと思います。ダメ出しのときも同じ。けっきょく、褒め言葉でも罵倒でも、きちんと見てますよというシグナルが愛につながるんでしょうね。じゃ。
1実話ならいいなって思ったんですけど慰謝料のくだりでたぶん創作だろうなって思いました 笑 なんの話だってかんじですが 笑 無頼派の文豪たちはこんな感じで生きてたのかなと思いました…
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