おそらく無限への追求という幻想が本格的に輝きを失う時代の中で私達は生きている。彼女は強い口調で言った。例の終わらない日常を生きる早朝のことだったはずだ。頭上で彼女に問いかける者がいる。それを例えばここでは頭上の者とでも呼ぼうではないか。では生き延びるくらいしか手段は残っていないではないか。そう問いかけた。彼女はもちろん頷いた。手段は目的の端女ではないんだよ。肉の付いていない顎だった。目はぎょろりとしており手首は細かった。私達は厳密な意味でたかだか有限の揺り籠の中で生きる以上は幻想を抜きにしたときに無限を求めることは出来ないはずだ、という言葉は確かに理論家の言だった。しかし誰もが知っていることがある。理論家の言はいつも何も伝えない。割合は99パーセント。諦めたわけではないのよ。二人で歩く道の上で彼女はリーブアフットプリントだ。むしろその逆と常に語る。ともあれ私達は乗っている。例えば無限のテクニック追求や無限の芸術性追求や無限の新規性追求を賛美ないしは無批判に受け止めながらにして舌の根もしくは他の根の乾かぬうちに資本主義の無限の利潤追求を批判するのはなんていうかどうなんすかねと感じている。まさしく君が、だ。あまりにも長い静岡県が追い抜いていくのを感じているはずだ。そしてこれこそが昔日に語られた終わりなき日常なのだろうなどと叫ぶ日の直前にとても速く走る新幹線のグリーン車に乗っていた。
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1109.2
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作成日時 2023-11-27
コメント日時 2023-12-11
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時33分50秒現在
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無限なるものへの信仰が潰えた現代では、己の欲望(金銭、名誉、創作など)に無限を求めるのかもしれません。 末尾に出てきた新幹線もまた、速さや正確さ、無事故などについての無限への追求(それが次世代へのリニア新幹線に受け継がれている)のような気がします。 また、中程にある 「理論家の言はいつも何も伝えない。」 という言葉が印象的でした。 分析的な思考は物事を細かく分けてゆくけれども、それだけでは新たなものは生まれない、そんなことを以前聞いたことがあります。それを思い出しました。 無限なるもの(価値?)を失った現代に生きる我々は、己の無限なる欲望に従って、ただ生き延びるしかないのかもしれません。 面白い作品だと思います。 ただ、全体としてロジック主体であるのに、最後の方に出てきた 「あまりにも長い静岡県が追い抜いていくのを感じているはずだ。」 という感覚的な表現が、やや唐突で浮いているような感じがしました。
0わたしはここの部分の難しいことがわからないけど、二人が新幹線に乗っていて、論を交わしているのかなといった体裁。理解するより、この詩のスピードに呑まれたほうが良さそう。そのほうがどこかしら引っかかったりせずにこの詩全体で受け止められる。 >例えば無限のテクニック追求や無限の芸術性追求や無限の新規性追求を賛美ないしは無批判に受け止めながらにして舌の根もしくは他の根の乾かぬうちに資本主義の無限の利潤追求を批判するのはなんていうかどうなんすかねと感じている。まさしく君が、だ。 このふたりとは多分作者さんの頭の中で、向き合ってること。titleの強い口調というのも。多分その姿なのかなと、勝手な推測で読みました。意味不なコメントでスイマセン
0終わりなき日常 死ぬまでね。
0終わりなき日常 死ぬまでね。
0「例の終わらない日常を生きる早朝」というのだから、90年代の終わり頃、いまから30年ぐらい前、それぐらい昔に聞いた彼女の口調の強さをふと思い出したときの感傷的な気分。昔日の友情の光景が理屈っぽい文章の中で語られるツンデレな構造。あれから「とても速く走る新幹線のグリーン車に乗っていた」かのようにあっという間に数十年立った。せつなーい! 硬質なふうを装ったやわらかな抒情。「目的」を追って過ぎた日々と「手段」によって懸命に生きている今、その間に失って得たもの、「無限の利潤追求を批判するのはなんていうかどうなんすかね」と感じている大人の感傷が詰まっていて好きだな、ゼッケンです。ロイヨさん、こんにちは。オトナは理想と現実の間で戦い続けている。
0自論が展開されていくようでありながら、でもそれは誰かの思想や受け売りの海の中で泳いでいるのに過ぎないのだと思いました。
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